私が弁護士の1人として担当をさせていただく「子の連れ去り違憲訴訟」を,2月8日付朝日新聞デジタルで紹介していただきました。「子の連れ去り違憲訴訟」とは,配偶者に無断で子を連れ去られる被害に遭った方14名が原告となり,日本が子の連れ去りを禁止したハーグ条約の批准国であることなどから,国会(国会議員)は子の連れ去りを防ぐ法律を制定する立法義務があるにも拘わらず,それを怠ったことを違憲・違法であることを主張した,憲法裁判です。

 

 

 

 

朝日新聞デジタル/子の連れ去り規制,「国は未整備」 当事者ら集団提訴へ

 

 

 

 

 

ヤフーニュース/子の連れ去り規制,「国は未整備」 当事者ら集団提訴へ

 

 

 

 

 

(朝日デジタルの記事を引用させていただきます)

 

 

 

 

子の連れ去り規制,「国は未整備」 当事者ら集団提訴へ(大貫聡子,2020年2月8日20時00分)


 

 

 

国は子の連れ去りを規制する法を整備せず,立法義務を怠っている――。配偶者らに子を連れ去られたと訴える男女14人が近く,国に国家賠償を求める集団訴訟を東京地裁に起こす。国境を越えた連れ去りについて定めたハーグ条約に加盟しているのに,国内の連れ去りを「放置」しているのは違憲・違法だとし,国の責任を問うという。

 

 

 

 

ハーグ条約の定めでは,片方の親が一方的に16歳未満の子を国外に連れ去った場合,残された親の求めに応じ,原則として元の居住国へ引き渡す。ただ,国内の連れ去りについては条約の対象ではない。

 

 

 

 

原告は配偶者との間に未成年の子がいる日本籍や外国籍の14人。配偶者に子を連れ去られ,親権や監護権が侵害されていると主張。国内での一方的な連れ去りを禁止する法規定がなく,「子を産み育てる幸福追求権を保障した憲法13条に違反し,連れ去られた子の人権も侵害している」として、原告1人あたり11万円の支払いを求める。

 

 

 

 

原告側代理人の作花(さっか)知志(ともし)弁護士(岡山弁護士会)は「国内と国外で,子の連れ去りをめぐる基準が違うのはダブルスタンダードだ。国内の連れ去りについて,救済措置を講じてこなかった国の責任を問いたい」と話している。

 

 

 

 

棚村政行・早稲田大教授(家族法)の話 国境を越えた子の連れ去りについては手厚い法的保護や国際協力の枠組みがある。国内でも不均衡を解消し,適切な措置がなされるべきだ。ただ,DVから逃れるための緊急避難的な別居や子が拒んでいるケースもある。親ではなく子の視点から制度や施策を考えることが重要だ。子の幸せを実現するため、父母の協働をどう支援するかも議論すべきだ。

 

 

 

 

 

(朝日新聞デジタルの記事は以上です)

 

 

 

 

「子の連れ去り違憲訴訟」の提訴は,令和2年2月26日に東京地裁で行うことを予定しています。提訴後の記者会見は,同日午後3時から東京地裁内の記者クラブで行われる予定です。また,提訴前の午後1時からは,海外特派員協会での記者会見もさせていただく予定です。

 

 

 

弁護士をしていますと,配偶者の一方が子を無断で連れ去る案件が多発していることを感じます。それは,子を連れ去られた親の人権侵害であると同時に,連れ去られる子の人権侵害でもあるはずです。また,日本で親による子の連れ去りが違法とされていないことは,特にハーグ条約の締約国からの大きな非難が続いています。そのような「子が親に連れ去られる」事態が1日も早く終わること,子の連れ去りを違法とした国内法が制定されることを目的とした訴訟です。

 

 

 

 

訴訟における原告側の法律上の主張の内容,訴訟の経緯,被告である国の反論などにつきましては,このブログでも少しずつお話をさせていただく予定です。また,訴訟のHP,ツイッター,フェイスブック,インスタグラムも立ち上がる予定です。

 

 

 

 

私としましては,上で引用させていただいた朝日デジタルの記事で,日本がハーグ条約を批准するに際した政府会議にも参加されていた棚村教授が,①国境を越えた子の連れ去りについては手厚い法的保護や国際協力の枠組みがある,国内でも不均衡を解消し,適切な措置がなされるべきだ,②親ではなく子の視点から制度や施策を考えることが重要だ,子の幸せを実現するため,父母の協働をどう支援するかも議論すべきだ,というコメントをしてくださったことに,大きな勇気をいただきました。

 

 

 

 

なぜならば,棚村教授がお話くださった①と②は,まさに訴訟における原告側の主張の内容そのものだからです。人が人として生まれて当然に有する人権に対する感覚,正義と公平の感覚。それらの感覚は,確実に,子の人格を尊重し,親の子に対する人権の享受が平等になるための法律制度の構築を求めているはずだと思います。