今日は12月24日,クリスマス・イブですね。皆さん,素敵なイブを過ごされていますでしょうか。

 

 

 

 

クリスマスとサンタクロースのお話である『34丁目の奇跡』という作品をご存じでしょうか。第二次世界大戦が終わって間もない1947年のアメリカで,映画化と同時に本も出版された作品です。本の著者であるヴァレンタイン・デイヴィスは,映画版の脚本原案者でもあるのです。

 

 

 

 

物語の舞台はニューヨーク。マンハッタン34丁目にあるメイシー百貨店に,ある老人が「サンタクロース役」として雇われます。ところが,その老人は自分自身を本物の「サンタクロース」だと名乗るのです。はたしてその老人の話は本当なのでしょうか?。

 

 

 

 

物語では,「老人は本当にサンタクロースなのか」が大きな事件となり,とうとう裁判が開かれることになるのです。超満員の傍聴席。老人を弁護する若き青年弁護士。老人が本当にサンタクロースなのかどうかについて,科学者による証人尋問も行われます。はたして判決はいかに?。

 

 

 

 

実は,私がこの物語を拝読してとても印象的だったのは,自分はサンタクロースであると述べる老人を弁護する仕事を引き受けた青年弁護士が,裁判前に婚約者と交わした会話なのです。次の会話です(『34丁目の奇跡』(あすなろ書房,2002年)118頁)。

 

 

 

 

「実は,ドリス(婚約者)はフレッド(青年弁護士)に結婚を申し込まれ,喜んで承知したばかりだった。それというのも,彼を愛し,尊敬するようになっていたからである。

 

 

 

 

『でも,こんなことになるんだったら・・。あなたってしっかりした人だと思っていたわ。甘っちょろいロマンチストなんかじゃないって・・。』

 

 

 

 

『たぶん,ぼくはロマンチストなんだ。けど,優秀な弁護士でもある。どっちのいいところも,持ち合わせてるつもりさ。うまくやってみせるよ』

 

 

 

 

ドリスには,そうは思えなかった。

 

 

 

 

『つまり,ぼくを信じられないってことだね?』

 

 

 

 

『信じてるわよ!。だけど。』

 

 

 

 

『ねえ,ドリス。なにを恐れてる?。なぜクリス(サンタクロースを名乗る老人)のような人を信じる気になれない?。

 

 

 

 

この世には,目には見えない善いものがいっぱいある。愛とか,喜びとか,幸せとか。

 

 

 

 

そういうものを,もっと信じようじゃないか!。』」

 

 

 

 

サンタクロースを名乗る老人の裁判で,その老人がサンタクロースであることの証明を法廷で行わなければならない弁護人を引き受けた青年弁護士は,反対する婚約者に上のように述べたのです。「何を恐れている?。なぜ信じる気になれない?。この世には,目には見えない善いものがいっぱいあるじゃないか。愛,喜び,幸せ。それらのものを信じようじゃないか。」と。

 

 

 

 

裁判の結果がどうなったか,物語の結論がどうなったかにつきましては,ぜひ御本を手にとってお読みいただきたいと思います。私は,この作品をヴァレンタイン・デイヴィスさんが思いつき,本と映画にして社会に伝えたいと思ったメッセージが,この2人の会話に込められているように感じたのです。「なぜ,目に見えるものだけを信じようとするのか。目には見えないものを信じようじゃないか。それこそがきっと,私達の社会を善い姿に変える存在なのだから。」と。

 

 

 

 

物語で青年弁護士は,次のような言葉も述べています。

 

 

 

 

「クリスマスは,カレンダーの日付とは別のものです。クリスマスは『心』ですよ。」

 

 

 

 

サンタクロースも,きっと「心」の中にいるのです。サンタクロースは,きっと誰の「心」の中にもいるのです。そして私達は,その「心」の中にいるサンタクロースの温かい心を,誰に対しても,与えることができるのだと思います。

 

 

 

 

決して目には見ることができない,思いやりや善意,そして人を信じる気持ちが,私達の社会を支えている。サンタクロースが世界中の人々にプレゼントを配るように,私達も心の中の温かい心を与え合うだけで,きっと社会は変わるのです。

 

 

 

 

物語『34丁目の奇跡』は,誕生して50年以上経つ21世紀の現在においても,いえ,21世紀の今だからこそ,私達に大切なメッセージを送り続けてくれているように感じました。皆さんが,サンタクロースの温かい心を感じることができるクリスマス・イブを過ごされることを,お祈りしています。メリー・クリスマス。