私が担当させていただいている遺族年金訴訟で,とても嬉しい展開がありました。遺族年金を支給しない処分の取消を求めて岡山地裁に提訴し,裁判で主張を積み重ねてきたところ,被告である国が方針を転換し,遺族年金が支給されることになったのです。

 

 

 

事件の概要をお話しますと,長年連れ添った御主人が認知症になった後,事情により離れて暮らしていた女性(私の依頼者であり,裁判の原告の方です)が,御主人が亡くなられた後で遺族年金の支給を求めたところ,法律上の「生計維持関係」が認められないなどの理由で,支給がされなかったのです。

 

 

 

専門的なお話になりますが,法律上の「生計維持関係」とは,亡くなられた方から生活費を受けたり,住民票上の住所が同じであったり,定期的な訪問がされていたりした場合に認められる,というのが国が出した通達の立場なのですが,原告の女性は「生計維持関係」がないとされ,支給がされなかったのです。

 

 

 

でも,御主人が認知症になった後は,事情により離れて暮らしていたとしても,その前に非常に長い夫婦としての実態があり,その間は御主人から生活費を受けるなどしていたわけですから,そのような生活の実態を考慮しないで,最終的な御主人が亡くなった瞬間だけを見て「生計維持関係」を否定するのでいいのか,ということは,多くの方が思われることではないか,と思います。

 

 

 

特に,現代では高齢化が進み,一方で医療技術も高度化しています。そのような事情がなかった時代に生み出された「生計維持」という法律の要件の解釈にも,そのような社会的事象の変化を考慮するべきではないか,と私は思いました。

 

 

 

そのような立場の下で裁判において主張と証拠を積み重ねたところ,被告である国がそれまでの立場を変えて,遺族年金の支給を認めることになったのです。大変嬉しい結末であると同時に,柔軟な対応をされた国の姿勢にも,敬意を表したいと思います。

 

 

 

この裁判は,原告の女性1人と代理人弁護士の私1人の二人三脚で訴訟活動を行ってきました。遺族年金の支給が認められたことを伝えた際の原告の女性の喜びを,私は決して忘れないと思います。

 

 

 

さらに申すと,原告の女性に後からお話を聞きましたところ,この嬉しいニュースを亡くなられた御主人の写真に報告したところ,何となくそれまでと違い,嬉しそうに笑っているように感じた,ということです。

 

 

 

御主人が亡くなり,原告の女性が遺族年金の支給を申請してから,もう数年が経ちます。今回認められた遺族年金の支給は,まるで天国にいらっしゃる御主人からの贈り物のように感じました。

 

 

 

 

そういえば,国が立場を変えて原告の女性に遺族年金が支給されることが分かった裁判期日が行われたのは,3月14日,つまりホワイト・デーでした。まるで,小説のハッピー・エンディングのようなこの裁判。私にとっても,3月14日はきっと忘れられない1日になることと思います。