レオナルド・ダビンチの「最後の晩餐」は,イタリアのミラノにあるサンタ・マリア・デッレ・グランツィエ修道院の壁画として描かれた作品です。420㎝×910㎝という巨大な作品としても知られています。レオナルド・ダビンチは1495年に製作に着手し,1498年に完成させました。

 

 

 

      

 

 

 

作品は,キリスト教の聖書に登場する,イエス・キリストの最後の晩餐の情景を描いたものです。ヨハネによる福音書13章21節より,12人の弟子の中の1人が私を裏切る,とキリストが預言した瞬間を描いたものです。

 

 

 

このレオナルド・ダビンチが描いた「最後の晩餐」は,同じテーマを描いたそれまでの作品群とは異なる描き方をしたことで知られています。例えば,それまでの作品では通常,裏切り者とされたユダを,外の人々と離れた場所に描くことが通常であったのに対して,レオナルド・ダビンチは,ユダも同じテーブルの同じ一列の中で描いています。

 

 

 

そのような特徴から,レオナルド・ダビンチが「最後の晩餐」に何かそれまでの作品群とは異なるメッセージを込めたのではないか,と言われ,作品を鑑賞した人々は,それぞれの謎解きを行ってきました。そしてそれは,現代に至るまで続いています。2006年に公開された映画の『ダビンチ・コード』でも,「最後の晩餐」の謎解きがストーリーの中心になっていたことは記憶に新しいところです。

 

 

 

そんな謎めいたレオナルド・ダビンチの「最後の晩餐」について,近時また新しい解釈が提言されている,という話が,いつも楽しみに拝見しているTV番組『美の巨人』で取り上げられていました。

 

 

 

その新しい解釈は,レオナルド・ダビンチの「最後の晩餐」には,音楽が描かれている,という立場です。作品の手とパンの位置が,音符を表しており,五線譜を絵の上に引くと,そこに1つの音楽作品が浮き上がる,というのです。

 

 

 

レオナルド・ダビンチは,楽器のリュートが上手で,よく弾き語りをして,皆を楽しませた,というエピソードが残されています。さらに申すと,レオナルド・ダビンチは得意とする数学と天文学によりいち早く地動説を唱えた方であります。彼は,惑星の動きに音楽を感じていた可能性もあるのです。

 

 

 

元々音楽は,数学と天文学と並び,神が創ったとされたこの世の調和の美しさを表現するために生まれた学問です。ひょっとするとレオナルド・ダビンチは,幾何学的な美しさを有する絵画「最後の晩餐」に音楽をも描き込むことで,「永遠に調和が存在すること」の尊さを,この世に残したいと思ったのかもしれません。

 

 

 

絵画の美しさは永遠であり,そこにどのような意味を与えるかは自由です。その活動は永遠に続くこと。レオナルド・ダビンチは,後世を生きる私達に,永遠の宿題を残したのかもしれませんね。