昼間 あたたかかったけど、家に帰る頃には風も冷たく とっても寒くなっていた。

 

  この頃都心の方にたまに通勤してるので、どかどかどかと 靴音だけが大きく響く 渋谷駅の通路を歩いて 長い長いエスカレーターを上り、ぎゅう詰めの電車に乗る。

 

  満員電車で仕事に行ったりするのは 何年かぶりなので ちょっと慣れてきたとは言え なかなかしんどい。

 

  人にぶつからないように歩こうとするだけでストレスだし、すごい速さでこっちに歩いてくる人が 若干怖い。

 

  うまく言えないけど 全員が 全員をただの雑踏として ある意味障害物として見ている空間というのは 殺伐として感じる。

 

  自分のことを知らない無数の人の間を歩いている という感覚。

 

  それは20代で東京に来たばかりの頃感じた感覚。

 

  慣れたようでいて 今でもやはりどこかで奇異に感じて たまに思う。 

 

  「あー この人ら全員僕を知らないし 僕はこの人らを誰も知らない」と。

 

  なぜか ちょっと呆然とした感覚になる。

  まあ 全員僕のこと知ってても それはそれでストレスだろう。変装して歩かなきゃならない。

 

  そんな風に雑踏に対して いつまでも意識的であるのは やっぱり比較的静かな町で育ったからなんだろうか。

 

  寒い中 家路を足早に歩いている人たちは なんだかいつも以上に互いに無関心に見える。

 

  そろそろ街路樹の葉もほとんど落ちかけてるし  日が沈むのも早い。   

  毎年今頃になると 落ち込みやすいので 冬至まであと何日・・・と指折り数えてしまう。

  

  人恋しくなり やめてたお酒も飲みたくなる。

 

  冬至を過ぎれば ちょっとづつだけど日が長くなる。

  本格的に季節が冬に向かうのはそれからだけど 僕にとっては 春の始まりに思える。

 

  寒い街中を歩きながら 『火』がみたいな と思った。

 

  以前インドに行ったとき ホーリーの火祭りを見た。

 

  街のあちらこちらで 天高く炎が燃えていた。

 

  あんな風に 激しく ぱちぱちと音を立てて夜空を焦がして燃えている 大きな炎を見たら元気が出そうな気がした。

 

  大きな炎の周りで 人々が 暖をとって 「あったかいね」と笑いあい あたたかい食べ物を椀に入れてふるまったりしてる・・・

 

  そんな光景が見たい。 

 

  ここにはないけど きっと世界のどこかでは今も燃えてるはずだ。    

 

  うちに帰って 野菜がたくさん入った あたたかい味噌汁でも 自分のために作ることにしよう。

 

  きっと今よりも 心があたたかくなるはずだ。