生島、歌を口ずさむ(揺れる花が 飛んでゆくのは 夢の中・・)

       成美が入ってくる


成美   生島先生。


生島   ああ、成美先生。


成美   また居眠りですか?あの子。


生島   ええ。どうやら姉の道具を使っているみたいですよ。


成美   お姉さんの?


生島   未来の姉は特別取締警察です。


成美   夢の中の・・


生島   そう。夢の中の犯罪を取り締まる特殊な警察。つまり、私達にとって

は邪魔な・・・


成美   ・・・


生島   ・・いや、彼らが取り締まるのは犯罪・・・


成美   そうですよね・・私達がやろうとしていることは希望・・・法に触れる

ことはない。


生島   ・・・子供達のためだ・・・


成美   ・・はい。


       金城が入ってくる


金城   おや、お二人で何をしているのですか?


成美   い、いえ、何も・・


生島   最近居眠りをする生徒が多くて、それで私に相談を。


金城   ああ、そうなんですか。でも成美先生「何も」って・・


成美   相談です!


金城   ・・そんなにムキにならなくても。


成美   何か勘違いされると困るので。


金城   ・・・


生島   で、金城先生は何かご用ですか?


成美   そうですよ。どうして保健の先生が教室に?


金城   来ちゃいけませんか?


成美   そんなことは・・ありませんけど・・


金城   いやね、さっき生島先生が言った事に関係があるのですが。


生島   私が言ったことですか?


金城   居眠りをする生徒が多いということ。


生島   ああ。


金城   保健室でも同じなんです。何時間経っても、身体を強く揺すっても

起きない子がやたらと多くて。


生島   保健室でも・・


金城   まるで夢の中で何か起きているみたいに・・・


成美   ・・・


金城   どうかしましたか?


成美   ・・・


生島   金城先生。新しい街のことを知っていますか?


金城   新しい街?


生島   ええ。今、夢の中に新しい街を作るという大きなプロジェクトが

進行しているという噂です。


金城   ほう・・・


生島   悲しいですね。文明はどんどん進化しているというのに、当の人間

は退化している。


金城   どういうことですか?


生島   夢がビッグビジネスになるなんて・・現実社会で心と心の繋がりが

薄くなっている証拠です。


金城   なるほど。言葉や感情を与えられた人間が、それを生身の自分で使う

ことができなくなっている・・確かに悲しい社会現象だ。精神的な問

題だけではなく、リアルに言語障害や筋力の低下、つまり身体の退化

を引き起こす可能性はありえますね。


生島   運命なんですよ。


金城   運命?


生島   進化したものは、やがて退化する。


金城   ・・・


生島   その繰り返しです。グルグル、グルグル回って、いつまで経っても

抜け出すことができない。

人間はそんな世界に嫌気がさしたのでしょう。


金城   ・・生島先生・・もしかして、何か良からぬことを考えていません?


生島   は?


金城   冗談ですよ。ほら、最近子供達の事件が増えているじゃないですか?

暴力団と繋がっていたり、過激派の宗教に入り浸ったり、集団行方

不明になっていたり。


生島   ・・・


金城   多くの子供達をまとめあげ、唆すことができるのは私達教師であれば

簡単なことですからね。


成美   ちょっと、嫌なこと言わないでください。


生島   確かに・・


成美   先生・・


       生島、ため息をした後、重い空気の流れを変えるように


生島   おそらく金城先生の推測の通りだと思いますよ。


金城   何が?


生島   居眠りの生徒が多いのは・・夢の中で何かが起きているから・・


金城   ・・・


生島   教師は生徒を守る義務がある。私達には。



       生島、金城に頭を下げて出て行く




               ⑨へ続く