タロットの解説も大詰めですね。
今回は第20のアルカナ,「審判」の紹介です。
早速カードの意味からご紹介しましょう。
【正位置】
・ 復活,結果,改善,覚醒,発展,敗者復活
【逆位置】
・ 悔恨,行き詰まり,悪い報せ,再起不能
このカードのモチーフは,新約聖書『ヨハネの黙示録』に記されている「最後の審判」です。
キリスト教美術における『最後の審判』では,ラッパを吹き鳴らす天使が舞い,選ばれしキリスト教徒は天国へ,そうでない異教徒たちは地獄へ堕ちる様子が描かれています。
【ヴィスコンティ版の最後の審判】
ヴィスコンティ版の上部には,左手に宝珠,右手に剣を持つ神が描かれています。
その両脇にはトランペットを吹く2人の天使が描かれています。
カード下部には棺から蘇った老人と若者2人が手を合わせて神を見上げています。
おそらく,老人は先代のミラノ公フィリッポ・マリアで,若者2人は現職のミラノ公フランチェスコとビアンカ夫妻と考えられています。
フランチェスコとビアンカの息子,ルドヴィゴ・イル・モーロの時代。
お妃のベアトリーチェが息子を生んだものの,産後の肥立ちが悪く死んでしまいます。
そこでルドヴィゴは,ベアトリーチェをスフォルツァ家の霊廟となっている聖マリア感謝教会に葬りました。
この教会の一室に,ルドヴィゴの命を受けたレオナルド・ダ・ヴィンチが「最後の晩餐」を描いています。
スフォルツァ家は,レオナルド・ダ・ヴィンチのパトロンだったんですね。
【マルセイユ版の最後の審判】
マルセイユ版の「審判」では,十字架の描かれた旗をたなびかせたトランペットを天使が吹き,下部で2人の男女とその子供らしき人物が復活を遂げる様子が描かれています。
この子供は,頭頂部を剃髪し,そして体の色も空色で両性具有といった,一般的な人間から少し離れた存在のように見受けられます。
この最後の審判での復活は,ただ生前の姿にそのまま戻るというよりは,霊的に一段高みに登った存在として復活する,といったことが暗示されているのでしょう。
【ウェイト版の最後の審判】
天使のラッパにある,白地に赤い十字架は,キリスト教画ではイエスの復活時にセットで描かれる「勝利の旗」です。
ただ,蘇った人々は,みな石の棺と同じ灰色の体をしております。
これは,肉体的に蘇るものではなく,精神が肉体や物質社会から開放されることを意味しています。
タロットの「塔」のところで述べましたが,石は現世利益・物質社会を象徴するものです。
そういったものから離れ魂を開放することが,現代における死の意義だということを述べているものと考えます。