タロットの紹介も第16アルカナまで進んでまいりました。
今回は,もっとも不吉なカード,「塔」を取り上げます。
まずはカードの意味から。
【正位置】
・ 破壊,破滅,崩壊,災害,悲劇,悲惨,惨事,
惨劇,凄惨,戦意喪失,記憶喪失,被害妄想,
トラウマ,踏んだり蹴ったり,自己破壊,洗脳,
メンタルの破綻,風前の灯,意識過剰,
過剰な反応,アンチテーゼ,自傷行為
【逆位置】
・ 緊迫、突然のアクシデント,必要悪,誤解,
不幸,無念,屈辱,天変地異
不吉なワードの連想ゲームみたいですね(笑)。
これまでのカードであれば,正逆で反対の意味合いをもたせていましたが,塔については正逆どちらも同じような不吉な意味合いなんですね。
キリスト教社会で,「塔」といえばまず想起されるのが「バベルの塔」,旧約聖書に描かれた天罰のエピソードです。
人々が堅焼きレンガを積み上げ天まで届く塔を作ろうとした,つまり神と同等の存在になろうとしたことに怒った神が,建設にあたった人々に様々な異なる言語を与えコミュニケーションを取れなくしてしまいました。
やがて意思疎通できなくなった人々は,塔の建設を放棄し散り散りになってしまいます。
ユダヤ人がバビロン捕囚でバビロニアに連れて行かれた際に,バビロニアで様々な言語が話されていたことにショックを受け創作された話であると考えられています。
【ヴィスコンティ版の塔】
(画像はこちらのサイトから拝借)
上記画像は,2006年に公開された映画「ウィッカーマン」のパンフレットのようですが,古代ケルト文化には木の枝などを編み込んで作った人形の中に戦争捕虜などを閉じ込め,火を放ち焼き殺すということが行われていました。
ようは人身御供の風習で,古代文明においては割とどこでも行われていたイベントの一類型です。
高所に人々を閉じ込めて最終的に殺してしまう,というところに「塔」の本質があったのではないかと考えてしまいます。
日本においても,ヤマタノオロチの生贄にされた女性は櫓の上に置かれましたが,あれも高いところに生贄を追い詰め,はしごを外してしまえばそこから逃げられない,といったことを念頭においた人身御供の風習の存在をうかがわせます。
【マルセイユ版の塔】
マルセイユ版の塔も,似たような構図ですね。
ただし,ヴィスコンティ版とは,意味合いが全く異なります。
塔の上部に王冠が被せられていますが,それはこの塔が『神の家』を表すものだからです。
神の光を浴びた塔は神の家となりますが,そのエネルギーに耐えきれなかった人は地上に落下していく,そのような試練としてこのカードを捉えるべきだと当時のカードメーカーの解説書には記載されているようです。
【ウェイト版の塔】
ウェイト版の塔は,人間の知性(霊性)の崩壊を意味するものだと言われています。
ウェイト版の塔で特徴的なのは,塔が石造りであるということです。
石は,四大元素(火・風・水・地)の地に属し,物質・金品・肉体などの現実世界や俗世間の象徴でもあります。
ウェイト版の塔は,その土台が老朽化しており,つまり人間社会一般が価値をおいてきた物質社会が崩壊していくことを暗示するものになっているのです。