今回は,第19のアルカナ,太陽を取り上げましょう。
早速,カードの意味からご紹介します。
【正位置】
・ 成功,誕生,祝福,約束された将来。
【逆位置】
・ 不調,落胆,衰退,堕胎・流産
古代エジプトでは,国王が太陽神ラーとみなされました。
ギリシアでは全能神のアポロン(もっと遡ればヘリオス)が太陽神として崇められていました。
太陽神ヘリオスのアトリビュートは4頭立ての馬車で,これで天界を駆け巡る姿がよく絵画に描かれています。
この馬車が太陽を表し,毎日規則正しく東から昇り,西に沈むのはヘリオスがうまく馬車を制御しているからだと考えられたのです。
ある日,ヘリオスの息子パエトンが勝手にこの馬車に乗って天界に旅立ちますが,相当の暴れ馬なので制御できず地上に墜落しそうになります。地上を守るため,ゼウスが馬車を天界の川に墜落させ,地上への激突を回避しました。
【ヴィスコンティ版の太陽】
ヴィスコンティ版の太陽は,裸体の子供が両手で擬人化された太陽を掲げる構図を取っています。
裸体の子供はパエトンをイメージしているのでしょう。
首には赤い玉の連なるロザリオが見えます。
ロザリオは「聖母マリアの薔薇園」を意味し,祈祷の回数を確かめる信者の持ち物です。
【マルセイユ版の太陽】
マルセイユ版では,さんさんと輝く太陽の下に2人の子供が塀に囲まれた園で互いに触れ合っている,そんな構図になっています。
この2人の子供は少年・少女で,少年の手は少女の心臓に,少女の手は少年の首筋に触れ,互いに言葉を必要としない程の高い意識で交流していることが示唆されています。
また,触っている箇所は胸ではなくみぞおちであり,これはギルドの親方から弟子への技術伝承を意味するカードであるとする解釈もあります。
タロットカードの「星」の解説で触れましたが,石工の親方は腹で石の置き場所を把握できるよう,鋭敏な感覚を身につける必要がありました。ギルドの世界では,職人的感覚が備わる場所はみぞおちらへんだと考えられているのでしょう。
【ウェイト版の太陽】
ウェイト版の太陽は,馬にまたがった幼児という構図で,これもギリシア神話のアポロン・ヘリオスのエピソードを踏まえたものでしょう。
タロットの順番としては,星→月→太陽とつながるため,これは夜明けの太陽をイメージしています。
したがって,その若々しい純真無垢な精神性として幼児が,野生を象徴する馬と渾然一体となり走る様として,太陽のエネルギーを描いています。