今回は,第17のアルカナ,「星」の紹介です。

 早速,カードの意味から入ります。

 

【正位置】

・ 希望,ひらめき,願いが叶う

 

【逆位置】

・ 失望,絶望,無気力,高望み,見損ない

 

 

 星や太陽,月などは,古来より信仰の対象になっており,いまでも西洋占星術や星座占いなどに残っていますね。

 日本においても陰陽道などに天文学的事象が織り込まれておりました。

 別記事で続日本紀の解説をしていますが,続日本紀にもしょっちゅう月蝕や日蝕,星座の並びにかかる記録が出てきます。

 

 

 ヨーロッパ社会では,一般的に,太陽は神・創世主・父権のシンボルであり,月は母性・陰のエネルギーとされてきました。

 太陽と月を父母とすれば,星々は子供,つまり私達一人ひとりを表すものと考えられてきました。

 

 

 また,この星はキリスト教の三対神徳の一つ,「望徳」を表すカードでもあります。

 三対神徳については,過去記事の『タロットの歴史 Part10』をご覧ください。

 

 

 

【ヴィスコンティ版の星】

 

 ヴィスコンティ版の星は,青色の布地に金色の糸で星野刺繍をしたドレスを身にまとった女性が,八本の光線を放つ星二手をのばす構図となっています。

 8は,西洋社会で八本足のタコやクモなどの不浄な生き物を想起させる不吉な数というイメージを持たれますが,一方では女性を表す2の倍数,7を上回る強い数という考え方もあり,無限を表すインフィニティの記号のもとになった数でもあります。

 

 日本では,八は末広がりのイメージがあり,一般的に縁起の良い数取して受け止められてますよね。

 

 

 

【マルセイユ版の星】

 

 マルセイユ版の星では,裸体の女性が水瓶を持つ構図となっており,空には大きな星1つと小さな星7つの合わせて8つの星が描かれているのが一般的ですね。

 星も一つ一つを見ると八芒星となっており,大きな星も八芒星を2つ重ねたデザインになっていますね。

 

 よく見ると女性のへそが「目」になっています。

 石工の親方は,石の使い方が腹でわかるようになると教え込まれます。磁石のように石と腹が引き合う/反発することで,どの石を建物のどこにおけばよいかわかると言われるように,修行の結果として鋭敏な感覚が備わることをしめしているのです。

 

 カードメーカーも職人ギルドの集まりであり,このタロットカードの星はそんな親方修行の始まりを告げる特別なカードでもあったのです。

 

 

 

【ウェイト版の星】

 

 ウェイト版の星も基本的な構図はマルセイユ版と変わりません。

 

 大きな星は北極星で,まわりの7つ星は北斗七星であると語られています。

 これらは季節が移り変わろうとも変わらず北を指し示す北極星は,航海の羅針盤であるとともに不死のシンボルにもなっています。

 

 後ろの樹に止まっている鳥はペリカンです。

 キリスト教美術の世界では,生命の樹にまとわりつく蛇を悪とし,その樹に降り立ち戦うペリカンを善と捉えます。

 ペリカンが胸から血を流し,それを雛に与えるといった構図が宗教画として描かれます。

 キリスト教世界において,ペリカンは自己犠牲・イエスの象徴になっているんですね。

 

【ペリカンのモザイク画@キッコス修道院・キプロス】

(画像はこちらのサイトから拝借)