鈴 side
『い、いいますね』
少し声が震える
この事は冬夜ちゃん、愛華ちゃん、柚子季ちゃんしか知らない
他と言えば、関係がある人ぐらい
思い出すたびに吐き気がする
私はあんな人生を歩んでしまったって思ってしまう
どうして原田さんに話そうと思ったか
それは分からない
この人は、表面上優しくて面倒見がいい人だと思った
でも裏があるかもしれない
そんな危険があるというのにどうしてなのだろうか
『私は、15歳の頃に皆と出会いました。その時はある場所から逃げていたんです。』
「……」
『そこは出会い茶屋でした』
「……」
『そこで数人の男達に毎夜襲われて…い…て』
「……」
『それ、で』
声が先ほどより震える
『あの三人方は私が泣いて逃げているので心配をしてくれてたんです。
そして私を連れて行くと冬夜ちゃんが言ってくれました。』
「……」
『愛華ちゃんに柚子季ちゃんはそれに反対をせずに私を連れて行ってくれました。』
「……」
『でも、男達に襲われて…て、いつの間にか人間不信へとなっていたのです。』
「……」
『愛華ちゃんは私が人間不信だと感じ取ったのかは分かりませんが私にこう聞いてきたのです。
【何かあったのか?】…と。』
「……」
『その時、私の中に何か緊張や不安で出来た一本の紐が切れた様に皆の前で泣いてしまったんです。』
「……」
『その時に全てを話したのです。あの三人だけ、話したり出来るのはこれが理由です。』
「……」
『こんな汚れた体、嫌ですよね…』
何も喋らない原田さんが怖い
あの口から何を言われるか…怖い
今さら後悔しても遅いとは思っている
口からだした言葉は戻って来ない
「鈴。」
原田さんの小さな呟きにもビクッと体を震わせる
これからいやな目で見られるのか
そう思うと目尻に何かが溜まる
「俺は…、」
『はぃ』と消えそうな返事をする
「頼りなかったか?」
『え?』
「俺はお前が汚い体とか思ったことねぇ」
『それは先ほどの話を聞いていなかった…と?』
「そういう意味意じゃねぇ。」
原田さんは首を左右に振る
『では、意味が分からないと?』
「違う。」
『ではどういう意味ですか?』
「そのまんまの意味だ」
『…意味が分かりません』
「お前は好きでもねぇ男に犯されたから、自分の体は汚れてるって思ってる。」
『…そうですが?』
「そこから間違ってる。」
『何がですか?好んでもいない人に抱かれた体が、汚れていない体だ、とでも?』
「なら…好んでいる奴に抱かれたら……?」
『…え?』
原田さんがそう呟いた後、私は押し倒された
上には原田さんが右手で畳を付きながら私を見下ろす
『は、原田さん?』
「悪ぃ、鈴。」
そして原田さんに接吻をされた
初めは、触れるだけの接吻だったけど、いつの間にか原田さんの舌が私の口内を犯す
『は…らだ、さん』
「……」
原田さんは無言のまま接吻を続ける
息が続かず、意識が朦朧としてきた時に原田さんの唇が離れた
酸素を求めるように、大きく息を吸う
そして上にいる原田さんと目があった
『は、原田さん?』
「どうした?」
普通に返事を返してくる原田さんに、何やら苛立ちがしてくる
『な、何するんですか!?いきなり接吻など…。私の話を聞いてましたか!?』
「なんでそこで怒鳴るんだよ…。」
『ふ、ふざけないで下さい!』
「俺は本気だ。」
『何がですか!?』
「お前にだ。」
『…へ?』
そういう原田さんの頬は少し赤みがかかっていた
『おちょくるのは辞めてください…。』
先ほどの言葉が信じれなく、目をそらす
「こっち向け。」
『どうしてですか。』
「目を合わせろ。」
『いいです。』そう呟くと
「照れてんのか?」
少し余裕が入った声で言う
『べ、別に照れてません。』
「それじゃこっち向いてくれ。」
何もいう事がないのでゆっくりと向く
目が合い、視線が重なり合う
原田さんの目は余裕に満ちていて・・・それが私を狂わせた
『・・・どうして。』
「え?」
『どうしてそんなに余裕でいられるんですか?
私は怖くて仕方ないのに・・・。まだ恐怖で一杯なのに・・・。
どうしてそんなに余裕な目で私を見るんですか?』
最後の一言は情けない声だった
でも・・・嫌だった
余裕に満ちたその目、その口元、その表情
『お願いです。今後一切・・・私に関わらないで下さい。』
