週明けのNYMEX WTI原油相場は、金曜引け後の水準から変わらず$76/bbl台前半での推移です。
中国6月の原油輸入増加 の話は今のところ、市場のサポート要因になっているようですね。


さて、日本で参院選挙が終わり、政治の不安定化で日本の景気見通しは悪くなっているようです。
世間では多くの人が政権の安定化を望み、海外からの評価もそうなのですが、本当に日本には安定政権は必要なのでしょうか?
試しに昭和30年代以降の総理大臣の在任期間の長さと期間中の経済成長率を大雑把に比較してみましたが、どうも有意な相関関係は見出せません。(成長率は単純比較すると高度成長期と平成不況期では格差が大きすぎるので、1956-73年、1974-91年、1992年-を分けてそれぞれ平均値を出し、平均値での格差を修正して比較しています)
油を売る日々-Seiji

思うに日本の議員内閣制というのは、議会が内閣の連帯保証人のようなものなので、大統領と議会が別々に選出されて常に対立しうる米国の制度などと違い、総理大臣がその気になれば独裁者になりうるシステムなのではないでしょうか。
小泉首相の郵政選挙の時などのように、対立軸を鮮明にして解散総選挙に出て議員の多数を自分のシンパに変えてしまえば、議会と政府の力関係は圧倒的に政府が強くなります。
また、与党が一丸となって庇えば、鳩山首相の脱税のような明白な違法行為も咎める手段がありません。
もし強力な指導力を持った首相が議会を掌握し、人事制度を利用して行政や司法にも一定の方針で長期介入すれば、三権分立の危機です。

そうならないように、閣僚を含む国会議員の主な仕事は利権の調整となってきたのではないでしょうか?
利権の調整だと必ず利害関係に基づくグループに分かれて離合集散し、一人の強力なリーダーが全部をまとめることはできません。
しかし、今は議員の選別の際に政党の力が強くなりすぎ、利害団体と個々の議員の結びつきが弱くなっているので、昔に比べて政党の党首=首相候補の力が相対的に上がっています。

様々な外部要因や選挙対策、政局などを理由に総理大臣がころころ変わるのは、独裁者が登場して三権分立や民主主義が危機に陥ることを回避するための合理的行動なのではないかと推察しています。
昨年の衆院戦で民主党が勝ったのも、今回の参院戦で負けたのも、国民が無意識のうちにあえて政権を不安定にするように行動しているわけですね。
民度の低い社会では強いリーダーによる指導が社会の安定に不可欠ですが、民度の高い社会では長期安定する政治権力はむしろリスクとみなされるのではないでしょうか。