あんたたちー!!ヽ(*`Д´)ノ
元気しとんの?ちゃっかり前向きまくってんの?!
今までさ、私の学生時代の恋バナ3つ書いたじゃない?
数年来の読者様なら知ってるだろうけど、それ以外にも恋バナいくつかブログにアップしてたわけ。大人になってからのやつを。
そのひとつを書き直しております。季節もちょうど今頃のお話だしね。
もう自分の恋バナなんか書くかボケー!って思ってたけど、秋だから秋なのよ。あき竹城。まぁおセンチだしね。プ。
時系列的に言えばこの話
の後になります。
気楽に書くんで気楽~に読んでね!私の恋バナなんてどうでもいいだろうけどさ。プ。
ごめんね、タカちゃん
第二話 「ニューハーフという生き方・女という生き方」 (第一話はこちら )
「あの…これ、まるごと入ってるんですか?」
彼の静かなささやくような声。よく耳に入ってこなくて、自分に話しているんじゃないのかと思った。
「え……?」
それでも、彼は私の目を見ているので。反射的に聞き返した。
メガネの向こう側の彼の目は、いつもの業務然としていなく、ふわり緩んでいた。
「いや、このヨーグルト…僕も食べよう思うんですけど、本当に果物がまるごと入ってるんかな思って」
ガサガサ音を上げながら、彼は商品をビニール袋を入れ、私に手渡した。
「えと……まるごとっていうか、いちおう切って入ってます」
今になって思えばどうしてこんな訳のわからない答え方をしたのか理解に苦しむ。
ひとつわかることは、話しかけられた事にただただ肝を抜かれていたことだ。
「あ、そうですよね」
彼は顔をくしゃくしゃにして笑った。その笑顔が、いつものしかめ面に近いキッとした顔とは全く違って、ぱぁっと光るような何かが開くような気がした。
私も、なんとかヘラヘラ笑った。
何ヶ月も毎日のように会っていたのに、彼のそんな笑顔を見るのは初めてだった。
「あ……どうも…」
私は恥ずかしくて、気の利いた言葉も返せずに逃げるように店を後にした。
「あぁ…ちゃんと女の子らしい声出せてたかな。ニューハーフってばれてないかな……」
ぐんとした高揚感の次に来たのは、がくんとした脱力感だった。
あ~ぁ…
あ~ぁ…
ふらふら自転車を運転しながら、どんどん落ち込んでいった。
当時の私は、ニューハーフとして飲み屋で働く反面、プライベートではニューハーフであることがバレないよう細心の注意を払っていた。
一人の女として生きたかったのだ。
女。
女?
女の生き方って何なのだろう。
ニューハーフとして店で笑いを取りながら、女という生き方に固執する。
その矛盾と、過ぎていく毎日のジレンマ。
「ばれてないかな…ばれてたら…イヤやな…」
ペダルを踏む足に、力が入らなかった。
彼から手渡されたコンビニの袋が前カゴでカサカサ風になびいた。
それからしばらくの間、私は彼のコンビニに寄りつかなかった。
怖かった。
ニューハーフだとバレたんじゃないか。
そう考えると自然に足が遠のいてしまったのだ。
季節は本格的に、秋へと移り変わっていく。
彼に話しかけられた夜から、三週間ほど経った。
店からの帰り、私は意を決して、彼のコンビニへ向かった。
ニューハーフとかバレててもいいやん……単なる店員と客なんやし……。
そう自分に言い聞かせた。今思えば、やっぱり彼の顔が見たかったのかもしれない。
真夜中の静かな街は、ひやりとした空気の中沈黙している。
点滅信号を右に曲がる。心臓が逸る。
小さな公園の斜め向かい。私の視線の斜め向こう。
コンビニはいつものように知らん振りで、光るサイコロみたいにコロンと夜に転がっていた。
自転車を停め、歩み寄った自動扉のガラス越し。
彼がレジ内で腕組みをして立っているのが見えた。
戸惑う私に構わず、センサーが作動し、スーッと扉は開いた。
そして。
彼が、私を見た。
第三話へ続く