京王多摩川駅と鶴川街道の真ん中あたりに稲荷橋交差点。その角を多摩川のほうへ少し歩けば自家製パンと焼き菓子の店「ルサック」の看板が見えてくる。
 店内はレンガ調の床に濃いピンクの壁、黒板にはフランス語。店の奥からはシャンソンが流れてすっかりパリ気分。ふと気がつけば、道路に面したガラス窓から陽の光が差し込んで時間が止まったような空気が一枚の絵になる。
 パンの販売は火、木、土の週三日。店を切り盛りする後藤知子さんいわく、「マイペースなのでちょうどいいかな(笑)。小麦の香りをしっかり味わえるパンをつくって、食べてもらって、おいしいと思ってもらえたらうれしい。品数も少しずつ増やしていきたいです」
 扉を開けてお客さんがまたひとり。スッと来て、パッと選んで、ちょっと話して、サッと帰っていく。ゆっくりしたいときは奥のテーブルへ。近所にあってうれしくなるパン屋さん、ぜひ。

(『そよかぜ』2020年2月号/ひとやすみ)