いつもなら「春眠暁を覚えず」、と書きはじめて、ああ、去年も三月に同じことを書いたな、とわが身の成長のなさをかみしめるのに、今年の春ときたら、おそらく、いや十中八九は人間自身の行いがつくり出した見えない敵なるものにおびえて疑心暗鬼も極まれりで、ちょっとした振る舞いから互いに非難しあったり、しまいにはマスクの一枚二枚を争って殴り合ったり、まったく人間の心の中に棲んでいる鬼がうれしそうに顔を出しているのが見えていないのかと、周りを見渡しても虚しさが募るばかりで、どうにもやるかたなく、心がすっかり乾いてしまわないように杜甫の「春望」を冒頭だけでもそらんじてひと息つく。
国破山河在
城春草木深
イベントもお出かけも軒並み中止だ自粛だケシカラン。外を歩くのも人目をはばかって自由なし。出歩きません、勝つまでは。ああ、なんという、なんという。
国破れて山河あり。城春にして草木深し。ウイルスとの戦いに大騒ぎしている人間を横目に、季節はまもなく春です。
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そんなご時世にあって、外(自分ではコントロールできないこと)が騒がしいときは、内(自分ができること)を鍛えるべし。アタマ(読書)とカラダ(運動)どちらもしっかり。読者諸氏はアタマのほうは日々たっぷり鍛えていると信じて、手軽にできるオススメのトレーニングをご紹介。
ひとつめはプランク。イラストの姿勢を三〇秒間維持してみよう。目標は毎日三〇秒を三か月。もう少し動ける、という人には縄跳び。二〇秒飛んで一〇秒休む。これを三セット。こちらも三か月続けてみよう。
小さな努力も継続すれば大きな変化になる。成功体験もあるけれど、なによりカラダを動かすと気分転換になる。気負わずにぜひ。
(『そよかぜ』2020年3月号/ひとやすみ)