いまから八年と四か月前。本紙第一二九号(二〇一二年三月号)の冒頭に、こんなふうに書いています。
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 (前略)『そよかぜ』第一号から数えて三代目の担当者となります。先人の足跡を大切にしながら、より読みやすく、より親しみやすい紙面を目指します。フレッシュな『そよかぜ』をどうぞお楽しみください。
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 今月、本紙を預かってから一〇〇号の節目を迎えることができました。とはいえ、何かを成し遂げた気分はまったくありません。かえって、このまちのことを何も知らない自分に気づかされるばかりです。
 このまちの足元には多くの人の喜びや悲しみ、夢や希望、無念や後悔が埋まっています。けれど、そのほとんどは歳月とともに忘れられてしまう。人は二度死ぬといいます。肉体が滅びたとき。そして人々がその存在を忘れ去ったとき――。
 『そよかぜ』はこれからも、このまちの暮らしの記録と記憶をていねいに集めて、書き残しておこうと思います。いつか誰かが、かつてこのまちに暮らしていた人たちに思いを馳せることができるように。忘れられてしまわないように。
 八年と四か月。わたし自身も三〇代の壮年から四〇代の中年へと、正確に歳を重ねました。本紙の器たる書き手はすでにフレッシュではないかもしれませんが、器の中身(記事)のほうはいつもフレッシュであり続けたいと願っています。
 これからも日々の暮らしのお供として、『そよかぜ』をどうぞお楽しみください。

(『そよかぜ』2020年6月号/ひとやすみ)