先日突然、夫が知人から植物の鉢植えを4鉢譲り受けてきた。以前から家に緑がほしいと思っていたそうで、いずれは苗や種を買ってきて家庭菜園をつくりたいと言う。熱しやすく冷めやすい夫と、基本的に面倒くさがりの私は、水をやるのを忘れてそのうち哀れに枯らしてしまうんだろうな、と思っていた。ところが、物言わぬ植物たちと付き合ってみると、これがなかなかおもしろい。

 

カラマンシーという、スダチによく似た柑橘には、どこからともなくイモムシやらヤスデやらが寄ってきて、取り除くのに手がかかるが、花が咲いたり、実をつけたりする楽しみがある。カレーリーフはいつの間にか頭のてっぺんから淡い緑色の新しい葉っぱをのぞかせたり、バジルは取り付けたUVライトが気に入ったのか、みるみる縦横に生い茂ってきた。葉が増えることもなければ、萎れることもほとんどない安定のパンダンリーフ。毎日観察していると、植物たちは4者4様に育っていて、愛着が湧いてくる。

 

気を良くした私たちは、役場で無料の野菜の種がもらえるという話を聞きつけて、早速申し込んだ。ほどなくして、ナスと青菜の種が送られてきた。メタリックな緑の塗料が塗られた種は、見るからに怪しげで、本当に育つのかしらと疑わしかったが、とりあえずナスの栽培から挑戦することにした。

 

だが。添付の説明書きによると1週間ほどで芽が出るはずなのに、なかなか出てこない。日当たりの問題か? 買ってきた土が悪いのか? 試行錯誤の末、やっぱりタダで配っている種はダメなのかも――、と諦めかけていたとき、2週間遅れでようやく芽が出てきた。か細い茎を伸ばして重たい頭を持ち上げようとしている小さな若い緑は、何とも言えず可愛らしく、よくやった! と褒めてやった。

 

カンカン照りの日の夕方にはくたっとしなだれている。「がんばって美味しいナスになるんだよ」と言いながら水をやり、朝になってまたシャキッとなっているのを見てほっとする。植物の世話をして、半日後くらいに返ってくる反応が、手紙をやり取りしているようで楽しい。スローペースだが、着実に返事を返してくれる彼らを眺めていると、「まぁ、何とかなりますよ。焦らずのんびり生きましょう」と言われているようで、穏やかな気持ちになってくる。何かと気忙しい日々を送っている皆さん、緑のある暮らし、おすすめです。

 

サルマ