久々に会った友人がホームパーティにウクレレを持参した。自宅でできる趣味として最近購入したという。いままで楽器をやったこともなかった友人が簡単そうにポロンポロンとウクレレを弾いてみせた。簡単な歌やハワイアンミュージックなど、馴染みのある曲を弾くと自然とみんなが歌を口ずさみ、その場がぱっと明るくなった。

 

ちょうど次の日に誕生日を迎える別の友人のために、私たちはウクレレの演奏にのせて歌の動画を送った。お金をかけないプレゼントは久しぶりな気がした。なんとも素朴でかわいらしい。懐かしい気持ちになった。友人から簡単なコードを教わり、ものの数分で私もウクレレを鳴らせるように。3つのコードをマスターしたころにはもうウクレレの購入を決意していた。

 

マイウクレレを手にしてから毎日ウクレレ三昧。60年代のモノクロ映画、オードリー・ヘプバーン主演の『ティファニーで朝食を』のテーマ曲『Moon River』を弾くのが日課に。バルコニーでギターを片手に歌うオードリーの姿に憧れ、いつかギターで弾けるようになりたいと思っていた曲だった。


ピアノや管楽器と違ってギターやウクレレの楽譜はA/F/B♭などのコード表記。音符が必要ないのは、なんか面白いな。アレグロ、レガート、フォルテといったテンポや表現、強弱を示す言葉はほぼなく、曲ごとに弾き方の指定もないようだ。ヨーロッパがルーツの音楽にはドイツ語の音楽記号が書かれている。ドレミももちろんA・B・C(アー・べー・ツェー)読み。吹奏楽部に入ったときには、まずドイツ語で音階を教わったものだ。ウクレレは、そんなルールをすべてすっ飛ばして自由に弾きなさい。と、言われているように思えた。


ギターを多く用いるジプシー音楽やジャズでは譜面にない音を奏でることはあたりまえ。そもそも譜面がない、なんてこともある。そうやって民族特有のリズムが活かされ発展と変化を遂げた音楽だ。ヨーロッパ音楽の素晴らしさとはまた違った魅力をもっている。自由に弾くことは簡単なようで難しい。その時の気分やコンデションで表現は変わる。だからこそ面白い。

 

もとより基本がなくして自由な音楽を奏でることはなかなか難しいこと。天才モーツアルトは自由な弾き方や独創的な音符使いが有名だが、モーツアルトの楽曲には基本となるシンプルな音階や指使いがたくさん組み込まれている。基本を身に着けてこそ、裾野が広がっていくことを知る。ウクレレも簡単に弾けるがまずは基本が大事とみた。説明書を読まないタイプの私だが、いまはしばし基本のコード覚えとストローク練習を地道にやりながら頑張ってみよう。


ウクレレの先生は主にYouTube。海外の動画をみながら毎日練習。弾き方も教え方も人それぞれ違うので、好きなところをつまんで練習している。今では「はやくウクレレ会しよう」が友人との口癖に。今度友人に会ったときにはジョンデンバーの『Take Me Home, Country Roads』とカミラ・カベロの『HAVANA』を合わせる予定だ。


sakin.