最近やたらと「自分の話ばかりする人」と出会うことが多い。以前だったらそこまで気にならなかったのに、一方的に話して質問を返してこない人との会話にストレスを感じるようになった。

 

そんなことを友だちに話したら、「みんなコロナで人と会えなくなったから、会えた時はここぞとばかりに話したくなるんだよ」と言われた。なるほど。みんな話し相手に飢えているのか。そしてそれは私も一緒だった。本当は私だって話を聞いてほしいから、一方的に話してくる人にかつてないほどストレスを感じているのかもしれない。

 

相手が質問を返してくれないことにストレスを感じる理由に、もうひとつ心当たりがある。それはライターという職業柄、取材をする機会が多いことだ。取材中は質問をすることがほとんどで、自分の話をすることなんてほとんどない。そういう仕事なので当たり前の話だが、仕事で質問ばかりしているから、プライベートでは質問されたいと無意識に思っている可能性がある。

 

とはいえ、質問をされたら返さなきゃいけないというルールもないし、相手になにかを求めたって仕方ない。問題は、私が相手との会話にストレスを感じてしまうことだ。どうしたら自分の話ばかりする人との会話も楽しめるようになるんだろう。そんなことを思ってアドバイスが書いてありそうな本を探していたら、ある本(※)にこんなことが書いてあった。

 

「聞くだけでも自分は表現できる。なぜなら、すでに質問の中に聞き手の視点がたくさん含まれているから」

 

目から鱗だった。私は自分のことを知ってもらうには、自分のことを話す必要があると思っていた。だから、質問をしてもらえないと「相手は自分に興味がないんだ」と思って落胆していたのだ。でも、どんな質問にも聞き手が生きてきた経験や物事の見方や考え方が反映されているし、それは隠そうと思って隠せるものではない。質問をしているだけでも、思った以上に自分という人間が相手に伝わっているのだと思ったら、ちょっと気が晴れた。

 

その一方で、聞いているだけで自分という人間が伝わってしまうからこそ、もっと質問力を高めなければと思う今日この頃である。

 

マリエ・アントワネット
 

※丘村奈央子『「話す」は1割、「聞く」は9割 どんな人とでも会話が途切れない究極の方法』大和出版