北欧スウェーデンには、Fika『フィカ』と呼ばれる休息文化がある。仕事の合間のちょっとした休憩時間のことで、英語で言うところの、Coffee break(コーヒーブレイク)だ。スウェーデン人は、一日に数回フィカをとるのが当たり前。上司や友人、恋人と一緒にコーヒーやお茶を飲みながら、たわいない会話を楽しむのだ。同じく北欧のフィンランドでは『カハヴィタウコ』と呼ばれるコーヒーブレイクがあって、カハヴィタウコを労働条件に必ず設けるように法律で定められているほど、休息の時間を重要視している。

 

私の勤め先は、外国人が多数在籍しており、彼らはふだんから、ごく自然にコーヒーブレイクをとっている。コーヒーブレイクの定義を知らなかった私は、入社当初、オーストラリア人の先輩上司に、何気なく仕事の話をしたところ、すごく嫌な顔をされたことがあった。どうやら、彼のブレイクタイムの邪魔をしてしまったらしい。「君も、ちゃんとブレイクしたほうがいいよ」、なんて言われて、一瞬戸惑った。

休息にマニュアルなんてものは存在しないが、お昼休憩以外で、休息を取る習慣がないから、戸惑ったのだ。休む暇があったら、目の前の仕事をすぐにでも片付けたいのが本音だが、ここはひとまず休憩でもしましょうか。コーヒーブレイクとやらはコミュニケーションを目的としているそうだ。オフィスでは、マグカップ片手に会話を楽しんだり、ひとりで外の景色を眺めたりしながら、このひとときを満喫している。お昼休憩を除いた、残り7時間をぶっ続けでフル活動していたら、そりゃ疲れる。コーヒーブレイクは、サボりではなく、忙しい合間でも、きちんと心と身体をリフレッシュさせるものだ。

 

フィンランドは、3年連続で幸福度ランキングトップを獲得し、Fika『フィカ』文化のスウェーデンは、ここ30年間のGDP(国内総生産)が、右肩上がりに伸びている。一方、日本はどちらも良い結果と言えないのが現実だ。コーヒーブレイクは、働く環境に必要不可欠なものであり、ワークライフバランスにも大きく影響しているのではないだろうか。

ほっと一息ついたら、スイッチをオンにして、やるべきことをやればいい。そうやって、うまく、「忙しくない毎日」を過ごしていく。欲をいうならば、もう少しだけ会社のコーヒーがおいしくなればいいのに。

 

比屋根ひかり