新型コロナウイルスの影響で人と会うのが難しくなったいま、仕事でもプライベートでもZoomで話すことが増えた。最近ではオンライン飲み会なるものも流行っており、私もそれなりに楽しんでいる。しかし、世の中にはオンライン飲み会をいまひとつ楽しめない人も多いようだ。原因はいくつかあるのだろうが、そのひとつに「その場の空気を共有できない」という理由があると思う。

 

対面での飲み会にはその場の空気やノリがある。そのため、大した話題がなかったり、隅っこのほうで黙っていたりしても、その場の空気を共有するだけで、それなりに楽しむことが可能だった。

 

しかし、オンライン飲み会だとそうもいかない。沈黙はただの気まずさを生むし、会話の質が飲み会の楽しさに直結するので、話題にはある程度のクオリティが求められる。また、オンライン飲み会に参加することは「発言する」こととイコールなので、何も発言しない人はその場にいないも同然の扱いになる。だからこそ、コミュニケーションに受け身な人にとって、オンライン飲み会はあまり楽しいものではないだろう。

 

一方、その場のノリや表面的な会話ではなく、深い会話を楽しみたい人にとって、オンライン飲み会はこのうえない娯楽だ。なぜなら、オンライン飲み会では互いの内面にふれざるをえないからだ。オンラインでは、一緒にゴルフをしたり、買い物に行ったりすることはできないので、なにかを媒介にして会話するのが難しい。そうなると、自分がふだん考えていることを話すしかなくなるので、自然と互いの本質にふれやすくなる。

 

緊急事態宣言は解除されたが、オンライン飲み会は今後ますます定着していくだろう。しかし、それは対面に価値がなくなったということではない。むしろ、これからますます対面の価値は増していくにちがいない。オンラインではどんなに会話を楽しむことができても、身体性を担保することは不可能だからだ。やはり人は、仲のいい人とは対面で会い、身体性をともなうコミュニケーションをとりたいと願うものだ。

 

オンラインで深い話をし、仲よくなったら対面でのコミュニケーションを楽しむ。アフターコロナ時代のコミュニケーションは、このかたちが主流になっていくのではないだろうか。
 

マリエ・アントワネット