飛行機が減った。生産が止まった。車が減った。人間が家にこもった。空が晴れた。

 

コロンビア大学の研究チームによると、市内の交通量は前年同期比35%減、乗用車やトラックが主な排出源となる一酸化炭素の量は数日間で50%減。二酸化炭素量は5~10%減。メタンも大きく減ったとアメリカのCNNニュースが報じた。インド北部のパンジャブ州では数十年ぶりにヒマラヤ山脈を見ることができたそうだ。日本でも青い空に澄んだ空気を感じる日々が増えた。人間が生みだす汚染物質の排出量が減ることで、地球環境が元気になっていくことを私たちはいまやっと、この体で感じられている。

 

便利さの代償に私たちは地球の健康と自らの健康を脅かしてきた。大気汚染が引き起こす心疾患や呼吸器系疾患、化学繊維による皮膚疾患。必要以上の便利を求めた結果が健康を害した。自粛により人々の行動は最小限になり、物資や食料供給が変わった。生活が変わることで必要なもの、必要なかったものに気づく。いまこそ「便利さを手放すこと」「足るを知ること」が必要なのだ。

 

自分の足で歩くこと。自分の手で食事をつくること。そんな当たり前で単純なことにだって多くの人が喜びを感じている。社会の動きが大きく止まったからこそ、気づけたことがたくさんある。技術の進歩により便利になった世の中は本当の意味で優しい世界とはいえない。一度手にした便利さを手放すことは容易ではないかもしれないが、いまこそ見直すとき。この機会に、自分の中の「手放せる便利さ」と「足る」を見つけていこうと思った。

 

まずは楽しいことからはじめよう。いま料理が喜びなら、太陽を浴びた旬の食材を使おう。旬ではない食材を供給しようとするから非自然的な力が働く。食材は季節のものが栄養価が高いのだから、よくばらずに季節を楽しめばいい。無農薬野菜ならふだん捨てている部分を使って調理を。野菜の芯や皮も栄養満点で美味しい。味付けも素材の味を活かして無調味料料理に挑戦。運動量が減っているなら塩分量も減らしていい。電気や火を使わないレパートリーを増やしていくことも意外と頭を使うし、達成感がある。こんな些細なことも地球と自分に優しいことになる。小さな変化はやがて大きな変化に。

 

終息したらまた普段の生活を取り戻そう? それでは何も変わらない。それどころか次は地球の死が待っている。いま私たちが身をもって経験していることを無駄にしてはいけない。便利さを手放すこと。足るを知ること。地球の健康を考えることがみんなの健康寿命にもつながっている。澄んだこの空を目に焼きつけよう。

 

sakin