1つの映画を2人の男性と観た。

 

 

1人は、シングルファザーの川崎さん。

 

もう1人は、はらぺこくん。

 

同じ映画を観ても

相手が違うと、けっこう違うものなのだな。

 

 

観たのは

「パーフェクト・デイズ」。

 

ヴィム・ベンダース監督

役所広司主演の作品。

 

 

 

川崎さんとは、公開されてすぐに

観に行った。

川崎さんが、観たいと誘ってくれて。

 

その時も、川崎さんとはらぺこくんを

考察していた!

 

 

 

川崎さんとは、1,2か月に1度

映画を観に行っている。

わたしも彼も、映画そのものが好きで

わりと幅広い作品を楽しめるので、

映画友達として、ちょうどいい。

 

「パーフェクト・デイズ」を

見終わってすぐ、

 

「すっごくよかったですね!」

 

「ええ」

って、顔を見合わせた。

 

わたしは、川崎さんの審美眼を

とても信頼している。

 

作品を鑑賞する力、と言うのかな。

(我ながら、えらそうな口のききかただけど💦)

 

作品の主題や監督の感性を

深くまで読み取るし

言語化されていない、隠喩とか

曖昧なものも、キャッチする。

 

なにより彼は

わたしのように、極端にならない。

 

わたしは

「すっごくいい!」と心酔したり

「めっちゃ駄作!」と嫌ったりするのだけど

川崎さんは、

1つ1つの作品の、いいところ、悪いところを

個別に見ていて、

特定の作品に心酔したり、嫌悪したりしない。

淡々と、ただ観る。

 

そういうフラットな「壁」みたいなとこが

とってもいい。

こっちが何を感じてもいいんだなーって

自由になれるから。

 

「パーフェクト・デイズ」を観た後も

軽く飲みながらいろいろおしゃべりしたけど

川崎さんとは、同じ深さで話せるので

満足感がある。

いわゆる「共通言語」というのかな。

同じ、文学部仲間でよかったー!

って、思ったりする。

 

そして

わたしが川崎さんの1番気に入っている点は

聞かれるまで、なにも語らないところ!

ペラペラ語る、批評家気取りの男性とか、

ほんとに苦手💦💦

いろんなことがわかっているのに

その1割も口にしない。

川崎さんはそんな人。

 

**********

 

さて

「パーフェクト・デイズ」を

川崎さんと観ながら

わたしは、はらぺこくんを思い出していた。

 

「この映画は、はらぺこくんっぽい」

って、感じたから。

 

五感が豊かに描き出されているところ、かな?

はらぺこくんが好きな、

ロバの爪を切る動画とか

うなぎをさばく動画とか

そういうものに通じる良さがあると感じた。

 

「はらぺこくんが好きそうな映画を観たよ」

と、その時はなした。

 

はらぺこくんも、どこかでその評判を見て

ちょっと見てみたいと思った、

と言っていた。

 

でも、はらぺこくんは、

あんまり映画を観る趣味がないので

そのままになっていた。

 

 

ある日、ふいに

映画デートをすることになった。

 

次のデート、どうする?って話してて

「映画でも観に行く?」

って、はらぺこくんが提案した。

 

はらぺこくんは、なんと

去年の夏に、わたしと一緒に

「トップガン・マーヴェリック」を観て以来の

映画だという。

 

なにを観に行こう~?

ワクワクして、検索してたら

なんとまだ「パーフェクト・デイズ」が

ロングランでやっているではないか。

 

これだ!!!

はらぺこくんに、観せてあげたい!

 

「まだやってたの?

 観たかったんだ~

 でも、かっぱさん、2回目なんて悪い💦」

と、謙虚なはらぺこくん。

 

「はらぺこくんと観たかったんだ。

 これ好きだから、2回観てもぜんぜんいいよ」

 

というわけで、

はらぺこくんとは、2回目の映画鑑賞となった。

 

***************

 

観終わってみると

 

「意外と、川崎さんといっしょのほうが疲れない」

と、思った自分にびっくりした。

 

なんでだ?

 

川崎さんと、何本も見慣れているから?

 

いや

はらぺこくんのほうが、好きだからかも?

 

好きな人と観ると

相手の存在を意識してしまうよね。

 

思うのだけど

映画を誰かと観る時って

おのずと、その人のフィルターも

少し、かかるのかもしれない。

 

あるシーンを観ながらも

「あ、今、どう思ってるかな?」

とか

「きっと、こういうセリフ

 好きじゃなさそうだな」

とか

相手の目線でも、観てしまう。

 

もっと集中しなよっ😊

って、自分に言いたいけども

 

そういう客観性を持っているのも

まあ、自分ってことで。

 

はらぺこくんのほうが

川崎さんより

ずっと感情が揺れる人。

だと、わたしは思っている。

好き・嫌いが、けっこうあるし。

 

だから、はらぺこくんと観ると

川崎さんより、疲れるんだろう。

わたしが勝手に想像して、疲れてるだけだけど。

 

たとえば・・・

 

「パーフェクト・デイズ」のラストシーン。

 

役所広司のドアップで、長まわしのカットがある。

とても複雑な表情演技で

この映画の主題とも言えるシーンだと思う。

 

はらぺこくんと観てるとき

「あ、はらぺこくん

 ちょっとこれ、苦手かもしれない」

って、わたしは感じてた。

 

うまく言えない。

 

わたしの感覚では

ヴィム・ベンダースは

ロマンチストでオプティミストなのです。

理想家、でもある。

 

「パリ・テキサス」や「ベルリン天使の詩」

を観た時から、そう感じてた。

 

はらぺこくんは、一見、温かそうでありながら

「熱い」ものを恥ずかしがるところがある。

理想主義に懐疑的。

ロマンチックなものも、かゆくなるタイプ。

 

だから、「過剰」のぎりぎりラインである、

ラストシーンは

はらぺこくんには、どうかなー?って

思ったんだった。

 

観終わってすぐ、

はらぺこくんは

「うーん・・わからないことだらけだった!」

って笑った。

 

あは!そうかぁ。

 

川崎さんとは

「すごくよかったですね」

のひとことで、通じたんだけどな。

 

でも、はらぺこくんは

色んなことが気になったみたいで

その後、クリームあんみつを食べながら

映画について

たくさんおしゃべりした。

 

早速、スマホをいじって

他の人の感想を読むはらぺこ。

 

「”平山のささやかな日常は

 生の豊さにあふれ、

 寡黙さと相反して

 人生の美しさを雄弁に語るのである”

 だって。

 んーーー

 なんか、みんなわかったようなこと

 言ってるなぁ。

 ”素晴らしい映画”って言われてると

 なんかそういうこと、

 言わなきゃいけないような💦」

 

実にはらぺこくんらしい、リアクションである😊

 

川崎さんは、「パーフェクト・デイズ」を

観た後、ヴィム・ベンダースのインタビューの

動画を送ってくれた。

作者に興味があっても、

世間がどう言うか?には

あんまり興味がないのが、川崎さんなのだ。

 

「あ、こんなのあった。★2つ。

 ”同じような映像の繰り返し。

 途中ではさまれる、夢のような白黒映像は

 何を映したいのかもよくわからず

 不満が残った”

 あはは!

 いいね、押しとこっかな~」

 

 

そんなはらぺこくんを、

微笑ましく思ってしまうわたしは

やっぱり「恋は盲目」ってヤツなのだろうか😊

 

ふふふ!って笑って観ていると

様子をうかがうように

はらぺこくんが、

わたしに感想を求めてくる。

 

すぐ語り過ぎちゃうから、黙っていたのにな。

はらぺこくんに、自由に感じてほしいから。

 

でも、わたしが考えていることなんて

はらぺこくんには、多分ぜんぶ伝わっちゃうんだ。

 

こうやって、わたしは

川崎さんと、はらぺこくんの

受け取り方を考察してるんだもん。

 

「考察されてる」と、彼は感じ取ったんだろう。

 

わたしが、

「こう思った!」って感想を言うと

 

「へえーーー すごいな~!!」

って、

感心されてしまった。

 

こんな時、川崎さんだったら

淡々と、でもガッツリかみあった

返事が返ってくるんだけど。

 

 

おそらく、

わたしと川崎さんは、

「価値観」が近いんだろう。

 

人生を共にするのなら

そういう人のほうがいいのかもしれない。

 

生活をする上では

価値観って、大きいから。

 

 

でも、不思議なんだよな。

 

はらぺこくんとは

別に深い話がそんなにできなくても

ただ、

彼の発言や感性が面白い。

 

はらぺこくんの言うことが

面白い、というよりも

 

はらぺこくんの言うことなら

なんでも興味深い、

ということかもしれない。

 

それが「好き」ってことなのかも。

 

「好き」じゃなくなったら

はらぺこくんの発言には

たちまち興味が失せるのかもしれない。

 

かたや、

川崎さんの発言には

「好き」フィルターがかかってないから

彼のことを好きになろうが、嫌いになろうが

自分の価値観と近い、ラクチンさを

ずっと感じ続けるのかもしれない。

 

 

ところで、

映画を観た夜のこと。

 

はらぺこくんが

映画の中に出てきた歌、検索しちゃった。

 すごくかっこいいね。」

ってメッセージをくれた。

 

「あれから、なんか気になって

 いっぱい検索しちゃったよ。

 かっぱさんがさっき言ってた

 ”今に集中する”みたいなの

 なんて言うんだっけ?

 おせーて」

 

まあ、はらぺこくん

「わからないことだらけだった💦」

って言いながらも

興味を持ってくれたんだーー

 

「今に集中するのは

 ”マインドフルネス”だよ

 

「マインドフルネスね。

 ありがと。」

 

心理学とか、

およそ興味のないはらぺこくんなのに😊

 

もしかすると

わたしが、はらぺこくんの感性が

面白いように

彼も、わたしの感性に興味があるのかもしれない。

 

 

すごく感性や価値観がちがうのに

いっしょにいることができる・・・

 

それって

やっぱり「恋」のすばらしいとこだと思う。

 

(おしまい)