上申書(事情説明書)の書き方(各論2・両親・兄弟姉妹の場合) | 【相続放棄体験記】自分で手続きをして初めてわかった重要なこと!

【相続放棄体験記】自分で手続きをして初めてわかった重要なこと!

このブログでは、父が死亡した際、母と姉と私の3人が相続放棄を決意し、書類作成から提出、相続放棄申述書の受理通知書を受け取るまでについて、手続き上の問題点や書類の記載内容、費用などの疑問点を調べ、解決した方法について体験記の形で綴っていきます。

前回の配偶者(故人の妻または夫)または子供の場合に続いて、故人の両親や兄弟姉妹が上申書を作成する場合について説明をしていきます。


 

 

 


今回の具体例は、素人でも作成できる場合、

つまり、

 

・故人の両親または兄弟姉妹が申し立てる
・熟慮期間の3か月を客観的に経過してしまった
・故人の死亡&相続人になったことを知った時から3か月以内である

 

…のケースです。


その他の場合は、参照する判例も多くなってきますので、自分でコンメンタールなどの専門書を読み進める自信の無い方は、少なくとも、一度は専門家に相談してみることをおススメします。


 

★具体例(故人の両親・兄弟姉妹の場合)

 

           上申書(事情説明書)

                         令和×年×月×日

               住所 〇〇都道府県〇〇市〇〇1-2-3

                   氏名           印

 この度,被相続人 〇〇 の相続にかかる相続放棄の申述につきまして,相続人となった私の「自己のために相続の開始があったことを知った時」について,以下に事情を説明いたします。

1・私は,被相続人 〇〇の(親・兄弟姉妹)です。

2・被相続人と妻××との間には,長女 △△,長男 □□がおります。

3・令和〇年〇月〇日,被相続人が死亡し,同日,私は,長男の□□ から,これを知らされました。

4・令和×年×月×日,私の自宅に,××市役所の課税課から「納税義務の継承について(お尋ね)」という書類(別紙参照)が届きました。そして,この書類の内容を確認し,私が〇〇(被相続人)の相続人となったことを初めて知りました。

5・このため,私にとって「自己のために相続の開始があったことを知った時」は,私が 〇〇(被相続人) の相続人となったことを知った時,すなわち,「4」において書類を確認した令和×年×月×日になります。

6・したがって,令和×年×月×日から未だ3か月が経過していないため,私は,被相続人 〇〇 の相続について相続放棄の申述をいたします。

 
                              以上

 

 

 

それでは、今回も、各項目の内容を中心に説明をしていきますね!

(1)まず、前回説明した「総論2・記載すべき事実と注意点」で説明した裁判所提出用の書式を作成します。


(2)次に、書式の中で具体例の文章をコピペします。

 

この時、申立人があなた自身の場合には、署名もワープロ作成で問題ありませんが、親族の代筆(作成代行)であれば、名義人本に署名をしてもらった方が無難であるというは、「各論1・配偶者・子供の場合」で説明したとおりです(最高裁昭和29年12月21日判決参照)。


(3)また、「この度,被相続人 〇〇 の相続にかかる相続放棄の申述につきまして,…以下に事情を説明いたします。」という部分については、コピペして、被相続人(故人)の氏名だけ変更してください。


(4)ですので、事実の内容ごとに大きく変更すべき項目は、上記の例でいうなら「1・」から「4・」のみです。
 

 

以下、それぞれの項目について、以下に説明していきますね!
 

★「1・」の項目について

まず、ここで故人と申立人との関係を記載します。

理由は、「故人の妻または夫または子供の場合」でも説明をしましたが、故人との関係によって、この文書の中で審査を担当する裁判官がチェックすべき項目がやや異なってくるためです。

 

 

 

★「2・」の項目について

ここでは、被相続人(故人)に子供(もしくは自らに優先する法定相続人)がいるか否かを記載しましょう。

なぜなら、被相続人(故人)の子供(もしくは自らに優先する法定相続人)の有無によって、その後、これを読む裁判官がチェックすべき事実が若干異なってくるためです。

(※「1・」から「2・」ついての詳細を知りたい場合は、「配偶者、子供の場合」を参照してください。)



そこで、

●申立人が被相続人(故人)の両親または兄弟姉妹であって、
●被相続人(故人)に子供がいる場合は、


上記の具体例のように
 

「2・被相続人と妻××との間には,長女 △△,長男 □□がおります。」

 

…と記載し、



●申立人が被相続人(故人)の兄弟姉妹であって、
●被相続人(故人)に子供がいない場合は、

 

「2・被相続人には,子供はおりませんが,母親の□□がおります。」


…というように、相続放棄の申立人に優先する法定相続人が存在することを記載します。


(※ 法定相続人の優先順位については、「法定相続人の範囲と相続人になる順番について!」を参照してください。)

 

 

 

★「3・」の項目について

ここでは、故人の死亡した日を記載していきます。

「死亡した」当日に「死亡したことを知った」場合、具体例のようにまとめてしまうのが良いでしょう。


そうでない場合には、前回の記事「配偶者(故人の妻または夫)・子供の場合」で示したように、
 

3・令和〇年〇月〇日,被相続人が死亡しました。
4・令和〇年〇月〇日,同人の死亡を知りました。


…と項目を分けて記載する方が分かりやすいでしょう。

 

 

 

★「4・」の項目について

 

(1)先順位の法定相続人が相続放棄をした場合

 

上記の具体例は子供全員が相続放棄をし、役所の書類で自分が相続人となったことを知ったという例です。

相続放棄をした子供から、子供全員が相続放棄をしたことを知らされた場合には、これを知った日を記載すれば良いです。


ここで重要なのは、「申立人に優先する法定相続人の全員が放棄したことを知った日」を記載するということです。

通常、役所や債権者からの通知によって知ることになるでしょうから、具体例のように、どういう書類が届き自分が相続人になったことを知ったのかを記載すれば足ります。

(※証拠の添付方法については、「故人の妻または夫・子供の場合」を参照してください。)


ただし、優先する法定相続人の相続放棄によって申立人自身が相続人となった場合客観的に相続放棄がなされた日についての記載は不要です。


本来なら、客観的に自分が相続人になった日も記載したいところですが、通常、申立人自身が自らに優先する法定相続人全員について、客観的に相続放棄が受理された日を知ることはほとんどないでしょう。

他方、相続放棄の認否は、必ず被相続人(故人)の死亡した住所地の家庭裁判所が行います(民法883条、938条参照)から、相続放棄の可否を判断する家庭裁判所は、いつ、誰が相続放棄をしたのかについて、容易に知ることができるためです。



(2)先順位の法定相続人が死亡した場合

他方、被相続人(故人)の子供や両親など、自分に優先する法定相続人の死亡によって、自分が相続人となった場合には、

 

・優先する法定相続人の死亡した日
・上記の法定相続人の死亡を知った日


…というように項目を別にして記載する方が良いでしょう。

 

 

 

★「5・」の項目について

この部分は、これまで主張した事実から、3か月の熟慮期間の起算点がいつであるかについて、主張していくことになります。

具体的には、
 

故人の死亡知った日
自分が相続人になったことを申立人が知った日


いずれか遅い日が起算点になるので、起算点となる事実が発生した日を記載していきます。

 

 

 

★「6・」の項目について

この項目は、基本的にコピペで足ります。

「5・」で記載した起算日と項目番号、被相続人(故人)の氏名を変更し、そのまま使って下さい。


 

★内容確認と推敲など

 

 

 

 

この部分については、「●必須の記載内容の確認」を除き、前回の記事と同じなので、「配偶者、子供の場合」もあわせて参照して下さい。


 

●必須の記載内容の確認

被相続人(故人)の両親・兄弟姉妹の場合に必須の記載内容は、以下のとおりです。

 

いつ、被相続人(故人)の死亡を知ったのか?

どのような経緯で、被相続人(故人)の死亡を知ったのか?

いつ、自分が相続人となったことを知ったのか?

どのような経緯で相続人となったことを知ったのか?

 

以上の項目が記載されているかについて、提出前にチェックしておきましょう。

 

 

 

●故人の死亡後、先順位の法定相続人が死亡していたことを知った場合


たとえば、故人の死亡後、子供がすでに死亡していたことをあなたが知った場合のように、申立人に優先する法定相続人が死亡していたことを故人の死亡後に知ったというレアケースの場合には、

 

3・故人の子供が死亡した日

4・被相続人(故人)が死亡した日

5・被相続人(故人)の死亡を知った日

6・被相続人(故人)の子供が既に亡くなっていたことを知った日


…のように、時系列順に書いた方が読み手にとって分かりやすいような気がします。一応、参考にしてみてください。




素人でも作成できる熟慮期間の3か月の起算点がずれるケースにおける上申書の書き方については、以上になります。