私事でコロナ生活の投稿を続けていたので

前回の投稿からだいぶ日が経ってしまいました

 

前回までのおさらいは

こちら

(R3.1/14投稿 認知症診断基準の多様化~常に考えるべき「認知症ってなに?」)

をご覧ください

 

さっそく今回より

新しい認知症の定義に

触れていきたいと思います

 

近年

新たに認知症の定義に加わっているものが

①複雑性注意(の障害)

②視覚構成認知(の障害)

③社会的認知(の障害)

という部分です

 

今回は

①複雑性注意(の障害)

について解説していきます

 

これまで

複雑性注意(の障害)とは

主に高次脳機能障害の

基本的な認知機能障害として

捉えられてきました

 

複雑性注意(の障害)とは

 

複数の外的刺激がある中で

注意力が維持できなくなる事

知覚→運動の障害があると

以前からしている慣れた活動が困難になる

【認知症の定義と考え方(三京房 心理学辞典)より】

 

例を挙げると

 

周囲に気をつけられない

障害物や段差に気づかない

多数の人の中から目当ての人を探せない

 

といった例が挙げられています

 

 

複雑性注意(の障害)とは

こうした障害を指す訳ですが

 

ここで少し

ややこしくなってしまうなと思っています

 

そもそも認知症の方は

記憶障害

見当識障害

理解・判断力の低下

実行機能障害

これら中核症状を主症状とし

それに起因して

BPSD(周辺症状)を発症する事がある

といった特徴です

 

そういう意味では

 

周囲に気をつけられない

障害物や段差に気づかない

多数の人の中から目当ての人を探せない

 

などは

これまでも

認知症症状として該当しています

 

ただし

それだけをとって

認知症とは言い難く

生活上のさまざまな言動や様子から

総合的に

認知症が疑われる訳です

 

という事は

 

その方の症状や他の疾患

他の言動などを合わせて精査すると

 

それは認知症ではなく

他の疾患や原因がある場合もあり

もしかすると

高次脳機能障害に該当するかもしれません

 

場合によっては

認知症

 

場合によっては

高次脳機能障害

 

ご本人を見る時には

この差を

しっかりと見極める事が

必要になってきます

 

しかしながら

これはとても難しい事です

 

よほど臨床経験のある専門家であれば

その方の行動から

総合的に当たりをつける事もできるかもしれませんが

 

高次脳機能障害に精通した専門家が

認知症にも精通しているとは限りません

 

認知症に精通している専門家が

高次脳機能障害に精通しているとは

限らないのです

 

 

これは私の経験ですが

 

障がい者支援施設で働いていた頃は

認知症の事など

ほとんど知りませんでした

もちろん高齢の方もたくさんいましたが

その方の言動を

発達障がいの物差しで測るので

認知症では?と考えた事はありませんでした

 

その後

高齢者施設に身を移し

認知症の勉強を始めると

 

あれは認知症の症状だったのかも

あの時にCT検査を受けていたら

認知症の所見を確認できていたら

もしかしたら

その方のケアや支援に

違った発想があったかもしれません

 

逆に

 

高齢者領域を専門としている方は

高齢者に関わる疾病は知っていても

脳機能障がいの事を知らない人が圧倒的に多く

すべてをなにかと

認知症と結びつけてしまいます

 

高齢者の方が

高次脳機能障害のような脳機能障がいが疑われても

どうしても

先に認知症に結びつけられます

 

逆に

知的障がいや発達障がいの方が高齢になり

認知症のような症状が発症しても

あまり認知症とは診断されません

発達障がいのままです

 

障がい者支援施設利用者の高齢化なども

ときどき話題になりますし

個人的に心配事ではありますが

その事を

あまり大きく取り上げられる事がありません

 

私は

障がい者福祉から高齢者福祉に

転身した者ですが

高齢者福祉しか知らない

プライドの高い方には

障がい福祉の経験や知識を

煙たがれる事があります

 

私は

これは日本の

縦割り社会の弊害じゃないかと

考えています

 

日本では

障がい者領域と高齢者領域を

一緒に語られる事が少ないからです

 

社会福祉として括られた時には

福祉全般で一緒にされますが

 

そのケア方法や支援方法

マネジメントの事になると

なぜか別にされてしまいます

 

人との向き合い方は一緒なのに

 

狭義で見識を深める事は大切ですので

それを否定する訳ではありませんが

どこか

効率の悪さを感じています

 

共通するところや

認め合うべきところは認め

共有すればいいのに

と思います

 

 

話は反れてしまいましたが

 

この事からも

実は

アセスメント(見立て)には

 

誰がそのアセスメント(見立て)をしたか?

 

という事がポイントになってしまう

という事があります

 

その方の1つの行動を

 

障がい者領域の見識が深い人からは

何かしらの『障がい』という目で見られがちですし

認知症の見識が深い人であれば

認知症として見てしまいがちです

 

そうした心理に上塗りされた

アセスメント(見立て)は

本当のご本人を知る上で

弊害となります

 

そうなると

あまり障がいや認知症の知識のない人の方が

先入観なく

より純粋に

その人の今の姿を見る事ができる

と言えます

 

もちろん

ちゃんと知識がないと

そこからのケアや支援を

イメージできませんので

しっかりとした知識を

習得する事は大切です

 

どちらが良いか正しいかは

難しいところです

 

 

高次脳機能障害なのか

認知症なのか

 

複雑性注意(の障害)が

新しい認知症の定義になった事で

その境目が見えづらくなりました

 

ただし一方で

 

その境目を見る必要があるのか

という意見もあるだろうし

 

実際に見極める事のできる人が

世の中にどれぐらいいるんだろう

とも思います

 

 

アセスメント(見立て)は

 

決めつけない

正しくないかもしれない

 

という事を含みで考える事が

大切だと思います

 

複雑性注意(の障害)を始め

新しい認知症の定義は

そういった要素を

今まで以上に含む事になった

と思います

 

 

 

次回は

②視覚構成認知の障害

について解説します

 

こちらは

認知症の方には

世の中が

どのように見えているのか

というものです

 

個人的には

驚きの内容です

 

私自身

これを知って以来

視覚構成認知の障害を気にかける事で

認知症の方への

関わり方や

物事の伝え方が

少し変わりました

 

ぜひ

ご期待ください