パパ・メイアン | Souvenirs de la saison

パパ・メイアン

 

パパ メイアン【Papa Meilland】

1963年

アラン・メイアン作出

 

 

その「パパ」はなかなかに波乱万丈の人生でした。

今や知らぬ者の無いバラのナーセリー「メイアン社」創業者ながら、

そのスタートは一介の園芸会社の働き手からでした。

奥さんの実家から事業を引き継ぎ、大規模農場を得るまでに拡大したものの虫害で全滅、

その後事業をしっかりと立て直した後、息子フランシスに家督を譲ります。

しかしそのフランシスはあの「ピース」を作出したのち早世してしまいます。

アントワーヌ「パパ」メイアンは立志伝中の人物ながら、人生の辛酸を舐めた苦労人でもありました。

 

フランシスの妻、つまり義理の娘が経営を切り盛りしたのち、その仕事はパパの孫たち・・・

アラン・メイアンらによって引き継がれていきました。

アランが作出し、「ピース」に次ぐ名作の誉れ高いバラとなったこの「パパ・メイアン」は

もちろんおじいちゃんたるアントワーヌに捧げられたものだそう。

 

フランスではお父さんがパパ、おじいちゃんはパピなので、

ちょっと矛盾しているなと思います。

また、パパというとムーミンやらバカボンを想起してしまい、可笑しみさえ感じます。

しかしローマ教皇も「パパ」と呼ばれているのを見れば、

パパというのは威厳と慈愛、そして組織のガバナンスの象徴なのかもしれません。

またニックネームに「パパ」のつく著名人も多く、彼らはいずれも周りから慕われているのを見ると、

アントワーヌの人と成りが判ろうというものです。

 

 

 


 

この純然たるマットな赤色。

大輪にしてきっぱりと天を向く高芯剣咲き。

これをハイブリッド・ティーと言わずして何と言おうか。

良く薫るのはティーの香りですが、ダマスク香と表現する記述もよく見られます。

 

モダンローズ時代の100年を街に例えたら、大きな目立つランドマークはいくつかあります。
このパパメイアンは間違いなくそのうちのひとつになるでしょう。

2024年現在18種しかない「殿堂入りのバラ」には

フランシス作出の「ピース」、そして息子アランの「パパ・メイアン」、

両方が入っています。

 

パパ メイアン。この不滅の赤色は

波乱万丈の先に栄光のメインストリームを見出した、メイアン家の血の色そのものなのかもしれません。