吐竜の滝とオタカラコウ
車を停めて、なだらかな山道を少し入ったところ。
渓流のまぎわに出れます。
そしてそこから仰ぎ見ることができるのが
吐竜の滝(とりゅうのたき)。
八ヶ岳南麓にある、よく知られた滝です。
気軽に見に行けるという点では、軽井沢の白糸の滝の次くらいかもしれません。
高低差、スケール感、そういったことより、
ここの滝は特に優美さを感じる滝です。
幾筋もの滝が、階段状に落ちていき、
その合間を埋めるように木々や苔の緑が眩しく映えます。
8月でしたら、
とても大きな黄色い花穂が見てとれます。
それは本当に滝に花を添えるように、
何十という数が滝頭から滝壺まで点在して咲いています。
これがオタカラコウという花。
キク科というだけあって、ちょっとフキに似た葉を持ちます。
そして出た花もツワブキっぽい。
しかし人の背を越えるような花茎にびっしりとつける花は壮観の一語に尽きます。
高山植物なので、うちのほうの里山には無いなあと思うと少しがっかりします。
古今のいかなる山水画も移しきれないであろうこの景色。
それはとても人智では作れない美しさ。
その中でオタカラコウは足場の無い屹立した崖地で、こちらを見ています。
激しい滝の音さえ、いつまでも聞いていたくなる、そんな夏の絵巻です。