ビッグモーター事件で知るグリホサート製剤の威力 | Souvenirs de la saison
2023-08-03 00:00:16

ビッグモーター事件で知るグリホサート製剤の威力

テーマ:菜園エッセイ

 

 

保険金不正請求の一件から始まって、今はもうビッグモーター関連のニュースばかりです。

それにしても天下の公道の木々を枯らすとは、もう唖然としてしまいます。

それ以上に驚くのがネット民の力。

Googleストリートビューから、実際の作業風景が映っているところを見つけ出し、

そこから除草剤の商品名まで特定してしまいました。

 

さらにさらに恐ろしいのは、

「え?何?そんなに効く除草剤なんだ!!」

ということで、その商品が飛ぶように売れ始め、メーカーの株価も上がっているんだとか・・・

かなりの人が木々や緑を疎ましく思っていることに恐怖を覚えました・・・

 

 

右側が私が借りている畑、

左側が別の地主さんの果樹園。

果樹園はグリホサート系除草剤でキレイ&サッパリガーン

 

 

で、その除草剤がグリホサート系なのです。

グリホサート系はたいへん扱いやすい薬剤で、

茎や葉に掛ければドンドン浸透、根まで完璧に枯らします。

かと言って土に染みていくと土壌生物たちによって急速に分解されて無くなってしまいます。

従って「枯らしたいものだけを選択的に枯らす」ことができるのです。

だからこそ花の咲いている花壇などにも使用が可能な、夢のような除草剤なのです。

 

それなのに街路樹が枯れるとなれば、「環境整備のための除草作業からの過失」とは考えにくく、

確信犯であるということが言えます。

しかも相手は大きな木ですから、かなりの量の薬剤を直接かけ続けなくては枯れるものではありません。

効率的に枯らそうと思うなら、幹を削孔して薬剤を注入するなどの手段が必要になります。

多摩市のビッグモーターでは街路樹はツツジの植え込みの高さで折られていることから見ても、

道行く車にハッキリとお店の存在を知らしめるためには木が邪魔なため、

意図してやってきたこととしか考えられません。

 

 

消費者はほとんど影響を受けることの無いグリホサートだが

扱う生産者の立場は考えてみるべき。

 

 

グリホサートの特性から言って、自治体や警察が土壌を検査しても、グリホサートを検出するのは難しいと思われます。

なにせ土壌微生物により、それは1日で分解されてしまうのです。

もし2次生成物などで推定できるなら別ですが。

 

逆にグリホサートそのものが検出されたとなると、これはもっと大きな問題をはらんでいます。

 

なぜなら、グリホサートは多くの国で「禁止薬物」に指定されているからです。

この薬剤で一番有名な商品は、グローバルアグリビジネスで名を馳せるモンサント社が作る

「ラウンドアップ」(現在はバイエル製造)です。

世界中で大変売れた商品ながら、その後発がん性が指摘されました。

そして関連性を疑うガン患者たちから多額の賠償請求がなされ、

裁判で薬害を認定され敗訴したバイエルはそのお金を支払い続けています。

そのお金の原資と言えば、いまだ禁止されていない国々からの売り上げから、とも言えます。

日本はグリホサート天国です。ラウンドアップも普通に売られています。

健康リスクがありながら嬉々として除草に励んでいるとしたら、

一体何のための、誰のための除草なのでしょう。

 

 

田んぼに除草剤はかかせない。

逆に畔(あぜ)には除草剤は使わない。

根っこを張らせて畔の強度を強める必要があるため。

 

 

もちろん米国などは土地が広大なため、扱う除草剤の量も桁が違います。

ビッグモーター社員が使っていた除草剤は原液を希釈するのではなくそのまま使うタイプですし、

およそ日本国内で健康被害が顕著に出るかと言えば、その確率はかなり低いかもしれません。

国際がん研究機構(WHO下部組織)が指摘した発がん性にしても、それはハム・アルコール飲料以下のランクです。

 

しかし、土に染み込まずに河川などに達したグリホサート、

さらにはネオニコチノイド系薬剤が与える影響は計り知れません。

それらは水生植物を枯らし、水生昆虫を抹殺し、それらをエサにしていたシジミなど底生生物は激減、

魚類も減り、湖沼はもはや瀕死の状態です。

ここまでしても農水省や環境省が動く気配はありません。

何故に動かないかと言えば、国連のFAOなんかもそうですが、

「食べるものに影響を及ぼす範囲としては安心・無害です。」

ということにして、レトリックを都合のいいほうに書き換えてしまっているのです。

環境を主体として有害であると言い張る国と、人間のみを評価して無害であると主張する国。

まっぷたつに分かれた評価を与えている珍しい農薬、それがグリホサートなのです。

が、しかし、口に入れて安全な物はすべて安全だ、と考えるのは、

それはひとりよがりの貧しい思想ではないでしょうか。

 

農薬が最も深刻な被害を与えるのが湖沼です。

 

 

日本が低農薬で健康な農業生産物を作っていると思っていたら大間違いで、

今や日・中・韓の三か国だけが図抜けた農薬使用量を誇っています。

近い将来においては中国よりもヘクタール当たり農薬使用量が多くなるのが避けられそうもないくらい、ひどいのです。

日本がなぜ30年も産業のイノベーションを起せず、停滞してしまったのか?

それがよくわかるでしょう、

利権に甘え、時の移り変わりも無視して

規制すべきところを規制せず、

緩和すべき規制を緩和しなかったためです。

グリホサートのせいだか何かわかりませんが、ビッグモーターは心根まで枯れてしまったようです。

日本という国もどこまで枯れてしまうのか。

除草剤ひとつ取ってみても、私は暗澹たる思いがしてきます。