旧松岡医院【かわかみ建築設計室】 | Souvenirs de la saison

旧松岡医院【かわかみ建築設計室】

 

 
信州松本は、フラッと路地を行けばすぐ近代建築遺産に当たる!
そんな街です。
古い建物ファンからすると、しばらく住みたいくらいですね。
 
さて、この勇姿を見せつけるような建物もそういった遺産の一つです。
カゴ細工屋さんに行く途中に偶然発見しました。
目立たないはず、結構な「路地裏」です。
大正年間の1924年に竣工したという
旧松岡医院。
 
これでも木造というので驚きです!
礎石こそ石ですが、そこから上の外装はモルタルを塗っているのだとか。
目地ゴテなどを巧みに操り、石積みっぽく見せているのです。
今でこそモルタルアートと称して石造、レンガ造、色々なものを再現していますが、
とにかく100年前のこのクォリティーはすごい!
パリに持って行っても、すんなり溶け込んでしまいそう。
極めて巧みな棟梁、そして超人的な左官屋さんがいたのでしょう、見れば見るほどタメ息モノです!
 
 
このエントランス回りのなんと威厳と優美さを湛えていることか。
またアールデコに通ずる意匠も感じます。
 
 
こんなに素晴らしい建物でも、解体寸前まで追い詰められていたそうです。
継ぐべき医院の当主が東京の大学を離職できず、やむを得ず実家の処分を検討したとか。
それを救ったのが、今ここを使用している建築コンサルタント会社、【かわかみ建築設計室】。
この建築物の価値の大きさを思って譲り受け、なんとか難を逃れたそう。美談ですね。
メンテナンスもしっかりしてそうだし、これからもずっと残っていて欲しい。
 

 

 
旧松岡医院。
ここまで竣工時のデフォルトの外観を保っているのも奇跡です。
松本、いや日本の近代建築遺産の中でも、知名度こそ低いけれど重要度はかなり高い、
希少な建築物ではないかと思っています。