東側の技だ 2 | サウス・マーシャル・アーツ・クラブ(エイシャ身体文化アカデミー)のブログ

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気持ちよく生きるためのライフスタイルとしての南派拳法(カンフー)蔡李佛拳とエスクリマ(フィリピン武術)ラプンティ・アルニス・デ・アバニコを横浜、湘南、都内で練習しています。オンライン・レッスン一か月@10000で行っております。
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 前回お話した、強い相手に安心して飛び込めるようになる、絶対に掛かる必殺技とは一体どのような物でしょうか。

 それは、すくい投げと言う物です。

 これは、他の格闘技での同じ名前の物ではありません。

 かつて、ペレストロイカの少し後に、ソ連圏から日本に来ていた兵隊さん達に教わった技の通称です。

 もし他の格闘技で近い技はというなら、恐らくはレスリングの片足タックルでしょう。

 相手の片足に食らいつくのです。ちびっこ相撲などで観たことがある人も多いかもしれません。

 しかし、実際に経験者ならわかるのですが、片足タックルやお相撲の足取りは全然相手を投げられません。

 相手が強いと簡単に残られて切られてしまうのですね。

 いわゆるレスリング、ギリシャ時代に盛んになってローマに伝承されて、イギリスで近代式に発展したいわゆるあのレスリングでぇあ、この片足タックルは下手くその技だとみなされている節があります。

 本当は両足タックル、レッグダイブに行きたいのですけれども、失敗してしまったから片足になってしまった、というような印象です。

 レスリングでは、相手の肩をマットに付けることが勝負のポイントであるために、片足よりも両足を取っていた方がコントロールがしやすい。

 しかし、私の教わったのは東側の技です。

 これはね、動物を捉まえる時の技なのです。

 羊や牛を転がして、毛を飼ったり乳を搾ったりするときの技だそうです。

 そのような牧畜の技術が、東側の組技の根底にはあると言います。

 その代表例が、俗にいうモンゴル相撲、ブフでしょう。

 私はブフについては全然知らないのですが、聞きかじった所によりますと、相手の足の裏以外を地面に着けると勝ちなのだと聴きます。

 そして、相手の足を掴むのはルール違反だとも言います。

 ではどうするのかと言うと、このすくい投げは実は相手の股間に片手を入れて、もう片手で別の部分を掴みます。

 それでどうやって倒すのかと言うと、相手を上に持ち上げるのです。

 もしも相手がサーカス団の女性だったら、まっすぐに身を起こしたまま持ち上がってくれるのでしょうが、そうではない場合は下半身が上に上がると、上半身は重心が逆転して地面に向かうことになります。

 ならない場合は足を横に薙ぎ払うと上半身から地面に着きます。

 とはいえ、後頭部や肺から地面に倒れてダメージが与えられるというような倒れ方ではありません。

 得てして手からうつぶせに軟着陸します。

 まさに、動物が毛を刈られるときのような姿勢になります。

 これ、ダメージが無いから怖くないと言うのは発想の違いです。

 ダメージを与える投げ技は、相手が受け身巧者だと無効化されてしまう場合があります。

 後ろ受け身で地面に背中を付けられた場合、まさにブラジリアン柔術が強い人にとっては完全に勝ちモードの体制になってしまいます。せっかく自分で倒したのに相手の方が有利になってしまう。

 しかし、いいですか、動物を傷めつけることなく毛を刈ったり乳を採る時の姿勢と言うのは、無抵抗な状態です。

 想像してください。

 片足を取られて、もう片足が宙に浮いていて、地面に両手を着いた体制を。

 これ、四肢が全部活用できない状態なんですね。

 かろうじて浮いている方の足でもがくことは出来ますが、有利だと言えるような状態ではありません。

 つまり、ダメージはないけど戦略的に極めて有利な無力化させた姿勢です。こういうことをスタンと言います。

 もしも相手がアルニスダーで武器を持っていても、その手を地面に着いて重心を支えている時には振るって戦うことは出来ません。

 そして上手く行けば、この時相手は背中を向けています。

 ここです。

 そこから背中に乗って打撃を見舞ったり、或いは制圧をしたりすることが可能となります。

 また、どうしてもそれでも怖いような相手だった場合には素早く走って逃げることも。

 このような技は、中国武術にも多く観られる物で、恐らくは騎馬民族支配時代の金の時代などに流れ込んできて盛んになった物ではないかと思われます。

 この、ダメージはないけど確実に相手をうつぶせに倒すことが出来る技、これがあれば恐れずに相手の間合い深くに入りやすくなります。

 また、文化的にも非常に面白いところがありますね。