日体大出身で博士号を持っている分泌物の専門家、フィンク・ジュリウス先生の生化学的な筋トレ理論について紹介してきました。
ジュリウス先生の理論ではウェイド先生の古いキャリステニクスと同じく、生理学的な機序が非常に重視されています。
両者に共通して言われているのが、睡眠が非常に大切だと言うことです。
ジュリウス先生に至っては、時間が無くて筋トレをするか睡眠をとるかを選ぶ必要があったら、睡眠を選べとさえ言っています。
できれば九時間以上の睡眠が望ましいと言うことで、これは私もとても大切にしていることです。
我々の考えでは、現代人は明らかに起床時間、労働時間が多すぎる。
ほとんどの哺乳生物は生命維持に必要な活動をしている時間以外は睡眠ないし休息を取っています。
しかし人間はエゴに駆られて行動をしすぎている。
そのために、活動をスローダウンさせるための方法が世界中で文化とされてきました。
ことに、我々の文化では気功と瞑想が中核となっています。
気功は身体活動を低下させ、瞑想は睡眠と覚醒の中間状態にバイオリズムを持っていくと言われています。
つまり、筋トレ後の長回復期間において、普通に活動をしているよりも再生効率が上がります。
脳波や神経の状態、分泌物の活動が適正化するのです。
分泌物については、ジュリウス先生の著述から紹介しました。
脳波と神経について言うなら、通常活動期間中は脳波がβ波にあると言われています。
これが瞑想や気功によって、安静状態の脳波に切り替わります。
そうなると、自律神経が切り替わるのですが、これが代謝に関わります。
一般に、活動期の自律神経は交感神経にあると言うのは良く知られたことでしょう。
では、副交感神経優位の時、人体は何をしているかご存じでしょうか。
代表的なのは、消化です。
体内に取り入れた栄養を吸収して身体に換えるという代謝の行程です。
つまり、瞑想状態の方が超回復の効率が良いのです。
こういうことが、私たちの練功理論の中核には存在しています。
中国武術ではそういうことが当たり前なんですね。
日本には固有の武術文化が存在していて、90年代以降、新古武術としてそれを模索すると言う創作武術活動が盛んになりました。
その過程で、古武術を名乗る解剖学系トレーナーによるインチキがまかり通って来たのですが、関節の動かし方云々というレベルの話と、体内の恒常性を土台とした中国武術の考え方と、どちらがウェイド先生やジュリウス先生の考えに近いかはよくお判りでしょう。
武術などではなく、ただのトレーニングの段階でさえ、すでにもうこのレベルが一般化し始めているのです。
もう、格闘技も何もしたこともないただのトレーニーにさえ、創作古武術のレベルは劣ってゆくことでしょう。
一例として、こちらの動画をご紹介しましょう。
いつも観ている筋トレユーチューバーのうちの一人なのですが、こちらの方はプロレスラーでもあり、セクシー女優でもあり、今後はボディ・コンテストに出てゆこうと言う方です。
つまり、機能性と美観の両方でトレーニングをしている方なんですね。
その方が、別のセクシー女優の方と合トレをしているのですが、こちらの方の指導がとてもレベルが高い。
等尺性を維持したまま角度を変える方法を教えてあげていたり「腱反射を使わない」なんていう言葉が出てきていたりします。
創作武術の皆さん、腱反射って言葉聞いたことありますか?
腱紡錘とか知ってます?
αーγ連環ですよ。それ意識して動いてます?
単収縮反射とか自元抑制とか屈曲反射とか分かってます?
単に、ダイエットをして人に見せる身体を作るって言うレベルでもう、こういう生理学的な方法を用いて身体を動かすってことが一般化してきてるんですね。
解剖学的なレベルしか眼中にない創作古武術の方法なんて言うのは、もう完全に周回遅れが始まっている訳ですよ。
良質なトレーニングをしている一般人以下のレベルの操体法ですよそれ。
この手の解剖学サギはバレエの世界でも発生して問題になっていることを以前に紹介しましたが、はっきり言って古典のバレエの中にはそんな表層的なレベルよりはるかに高い操体のメソッドがあります。
思い付きの創作メソッド詐欺にはどうかみなさんもう騙されないようにしてください。
そして、このレベルで省みてみたときに、やはり中国武術は非常に高いレベルにある。
これは世界的に観ても非常に凄い物ですよ。