カラオケ女王 | サウス・マーシャル・アーツ・クラブ(エイシャ身体文化アカデミー)のブログ

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 なんか、世の中にはカバーソングの女王みたいな人が居まして。

 たまたま代表作がカバーソングだった、というバナナラマみたいなことではなく、本当にとにかくカバーソングをメインに狙っていくという変わったスタイルの人達です。

 それって昔、縁日とかで打ってた知らない人が知ってる歌唄ってるタイプのカセットテープと変わらないんじゃ……などと思って、そういう人のことを私は「カラオケチャンピオン」と揶揄したリしていたのですが、実際、ある有名なカバーソング・クィーンはテレビの芸能人カラオケ大会みたいので優勝して注目を浴びたりしたのだそうです。

 その方が先日ラジオで話していたのですが、この方は海外とのハーフの方で元々はR&Bシンガーだったそうなんですね。

 それで自分で作品を作って唄っていたそうなのですが、これがまぁ売れないしライヴも盛り上がらないとのこと。

 まぁそういう歌手の方、ライヴハウスに行けば沢山いるのでしょう。

 ところがこの方が面白かったのは、二つのことに気が付くのです。

 まず一つ目は、もっと多くの人に聴いてもらうためにはR&Bとか英語が入ってるとかじゃないほうがいいんじゃないのか、と思ったことです。

 そこで彼女はR&Bをやめてポップスの曲を作り始めます。

 もう半ば転職と言っていいと言うか、中華料理屋さんがインドネパールカレー屋さんになったみたいな話です。

 二つ目の気づきは、ライヴでたまたま他の人の曲を歌った時にかつてなくお客さんが盛り上がったときに訪れたそうです。

 それから彼女は、他人の曲を唄うことを職業にしてゆくことになったといいます。

 インドネパールカレー屋さんが食品配送業者になったみたいな。

 もう自分で作るの辞めちゃった的な。

 てか、それまでのライヴのお客さん、なんで彼女のファンだったんだろ。

 面白いのは、彼女のこの自覚性です。

 これ、いかにも見てくれが良くて射幸心の強い女性のビジネス・センスだと受け取ると、心底ヤダみしか私は感じないのですが、それも彼女のルーツを聴くとまた感じ方が変わってきます。

 先に書いた通り、彼女はハーフの人なのですが、元々子供の頃から習い事として歌を習っていたというのですね。

 そのジャンルが、オペラ。

 いや、中々日本人で子供の頃からオペラやってる子はいない。

 そういう、伝統芸能を通して歌を唄うことが好きな自分を見出した人なんですね。

 で、オペラ、伝統芸能って全部カバーなんですよ。

 もちろんロッカペラや創作落語みたいな物もありますが、基礎構造は古典から入ります。

 軽音楽を聴いて育ってライヴハウスで価値観を作った子とは違うんですね。

 伝統芸の継承者の偏った見方かもしれないですけど、そういう人間は強いですよ。

 骨子の強さが違う。

 ジャズのスタンダードだってそうだし、ヒップホップだってヒストリーに強いと全然底力みたいなものが違う。

 カバーソングの女王なんていうといかにも軽薄で町のスナック一つに一人づつ居そうな気もしますけど、古典が根っこにあって、唄うことそのものが好きで曲自体は人の作った物、ないし人のために作られた物で良いという職業歌手的なスタンスは、ちょっとかっこよくも見えてくる気もします。

 特に、技術が進んで特別なスキルがなくても多くの人が他者への発信がしやすくなればなるほど、この土台の部分、基礎の強さが重要になる時代となっているように感じています。