このブログを初期から読んでくれてる人の中には、私が最初にフィリピンに行った時のことを覚えている人も居らっしゃるかもしれません。
それは、マニラの中華街、トンドにあるという五祖拳を見たかったからです。
この五祖拳、東南アジアに広まった福建白鶴拳類で、インドネシアに至ってはクンタオ・シラットになり、フィリピンで最も盛んになり、そしてその中身に至っては行者拳(猴拳)、白鶴拳、羅漢拳、達尊(達磨)拳、太祖拳の五つを含んだ総合武術であり、最後には心意拳になるという、東南アジア武術から回族武術に至るというものすごく歴史的にもすごいし内容的にも備わってる超いけてる武術なのね。
結局、トンドの中華街は危険だと言うことで最初はいけなかったし、しかも私の本門の蔡李佛がエスクリマになったラプンティ・アルニスにも出会っちゃったので、そっちで忙しくなってしまった。
けど、こないだの最後の修行旅では絶対に探しに行こうとおもってた 。
でも、友達に案内頼んだら「いま中華街は春節後でコロナがいっぱいだよ」と言われて諦めました。
そうして会えなくなってしまったフィリピンの五祖拳。
けど、帰ってきて、こうして学問の日々に入ってね、ブラジルの和尚さんの導きに従ってインド方面に目を向けてインド武術の本なんて目を通してみたりした結果ね、五祖拳の新たな解釈が見えてきた訳ですよ。
それはね、まず行者拳、これ、ハヌマーンですよね。
それから白鶴、これはガルーダ。
そして、羅漢拳。
この羅漢ってのは、お釈迦様のことなんだけど、お釈迦様ってのはヒンズーではヴィシュヌ神の生まれ変わりの一つとされています。
ヴィシュヌ神と言えば生まれ変わっては英雄になることで有名な神様なんですけど、そのうちの一つの姿が、ラーマ王子。
そう、ガビー・ガボーンの開祖だというラーマ王子。
それでね、お釈迦さまものそのヴィシュヌ神の生まれ変わりの一つなんだよ。
つまり、この羅漢拳、インド武術と中国武術の繋がり上メチャメチャ大切な存在!!
しかも、続く達尊拳はと言えば、達磨大師の拳だというのだから、これはもう、南インド武術そのもののようではないですか。
ね、まさにインド武術、東南アジア、中国南北の拳を繋ぐ存在でしょう?
と、ここで、当然「じゃあ五つ目の太祖拳は?」となるのが人情でしょう。
この五つ目、太祖拳ですが、これ、一般的には宋太祖が編み出した物だと言う伝説があります。
これだけでも、宋の武術が南宋時代に南に広まったという話に繋がりそうですが、もう一つ解釈があります。
というのも、太祖拳には北派と南派があり、南派に関しては明太祖朱元璋だと言うのです。
この朱元璋、武侠小説に詳しい皆さんにはおなじみの「魔教」と呼ばれる宗教集団の力を借りて革命を起こした人です。
魔教とは一体なにか? またの名を喫菜事魔。
これ、マニ教なのです。
それが蔑称されて魔教と呼ばれるようになった。
それまでは明教と呼ばれていて、明の国号はここから来たといいます。
そのマニ教ってのは、ゾロアスター教、ミトラ教、さらにはキリスト教まで入った西方宗教です。
ほら。中華から見て西方の気配が来たではないですか。
さらに言いますと、このマニ教、一時期は広まった物の掌返しで弾圧されて寺院なども打ち壊されて行ったのですが、現在でも福建省は泉州に残存が確認できると言います。
そして、福建省泉州と言えば、白鶴拳の本場。
ほら。
こういうことなのですよ。武術の研究の面白さというのは。