フィリピン再訪・2 | サウス・マーシャル・アーツ・クラブ(エイシャ身体文化アカデミー)のブログ

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気持ちよく生きるためのライフスタイルとしての南派拳法(カンフー)蔡李佛拳とエスクリマ(フィリピン武術)ラプンティ・アルニス・デ・アバニコを横浜、湘南、都内で練習しています。オンライン・レッスン一か月@10000で行っております。
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 台風が去った日曜日、いつもの日曜日のクラスに向かいました。

 早朝からだと聞いていたので七時前に練習場所の公園に行ったのですが、誰もいない。

 練習場所変わったのかな? と思って公園の中であちこち探したのですが結局誰もおらず、しばらく待つことに。

 八時くらいになってようやく、昨日も稽古をつけてくれたマスタル・ロドンハが来てくれました。

 二年前には十人ほどが居たのですが、今回の練習は二人だけ。どうもマニラはこの短い間にすごく街の雰囲気が変わっているのですが、その影響もあるのでしょうか。

 前は街で何人かアルニスダーを観たのですが、今回はほとんど居ない。

 二人で練習をしている中、マスタルが言うには本日は午後からグランド・マスタルが別の街に構えたジムで練習をするとのこと。

 そこに二人で行こうと言ってくれたので、練習後は二人でそちらに。

 うーん。

 どうもフィリピンのヒトの気風として、あまり先の計画を立てたりするのが一般的ではないという話を聞くのですが、グランド・マスタルのもそれなのかなあ。

 となると直接会って話をつけるのが一番早い。これは願ってもないことです。

 もうマスタル・ロドンハにはお世話になりっぱなしで、バスに乗ってグランド・マスタルに会いに行きました。

 このバスがまぁものすごく揺れる。

 運転が恐ろしく乱暴で、急ブレーキ、急加速を繰り返しながらクラクションを鳴らしまくっている。

 ちょっと気持ち悪くなりながらどうにかジムのある建物に到着。

 これが実にインパクトのある建物で、巨大な講堂のような中にキオスクくらいのサイズのジャンク屋さんがひしめいている。

 その薄暗くてどこかイリーガルな感じの空間に足を踏み入れると、即座に大音量で響いてくるムスリムの礼拝のアナウンス。

 偏見を持ってはいけないのですが……スリにあったりしそうなとこだ……。

 まぁ、ワークマンさんのチェーン付き財布で武装しているので狙ってくるスリも少ないとは思いますけど、いろいろ治安がヤバそうなところ。

 そんなところの壁の中のブースに、サンドバッグをつるしているのがグランド・マスタルのジムでした。

 足元も壁ももろに打ちっぱなし。

 そんな迫力のあるジムで出会ったのが、今回の二人目のキーパーソン、ブラジル人のイヴァン。

「日本人? 珍しいじゃん」と日本語で話しかけてきてくれたのでびっくり。

 群馬県に住んでたという彼とこのタイミングで友達になれたのがまた奇跡でした。

 彼が間に入って通訳をしてくれたので、ようやく会えたグランド・マスタルとの間でスムースに話が付きました。

 グランド・マスタルは初め、私の滞在予定などもどうもまったく覚えてなかったようなのですが、改めて日程を話し、どうにか平日に練習をつけてくれるようにまとまりました。

 前に書いたように、アルニスにはいくつかのカテゴリーがあるのですが、その中でどの分野がやりたいのか、との質問を受けたので、もちろんそこでモンゴシをやりたいと言いました。

 すると、グランド・マスタルは「あれはとてもシークレットな部分なので簡単には教えられないんだ」と渋る様子。

 そこで食い下がって「それは教えられないという意味なのかな?」とイヴァンに確認してもらったところから交渉となり、なんとか教えてもらえるようになりました。

 なにせ初めから今回はこれを持って帰るのが目的で出てきたので、やっぱり出来るまでの努力はしたかったのです。

 紆余曲折した道のりだったけど、ようやくそれがここまで来たと一安心していたところ、アイヴァンが隅っこの方で私にささやきました。

「シークレットのヤツ、習うんじゃん? みんなに教えてない奴。それ、俺も見てみたいじゃん」

「あ、じゃあ明日スケジュール大丈夫だったら通訳としていてくれる?」

 と持ち掛けた結果、グランド・マスタルからのお許しも出てみんな幸せに。

 こういうことだよなあ。

 やっぱり、ちゃんと力の流れを感じてそのタオに乗ってく感性ってのは大事。

 エゴが引っかかって何をやってもダメにしてしまうこともあれば、こうやって自然に流れに乗って上手く目的にたどり着けることもある訳で。

 日々のライフスタイルの結果と言うのは意外にこう重要な時に出ますねえ。

 話がまとまったところで練習。

 私は前の積み残しだった、基本の12の軌道の打撃に対してそれに対するカウンターをしてゆく日本武術で言う裏の型を最初にならいました。

 そのあとは、なんとラルゴ・マノ。

 これは驚き。

 ラルゴ・マノとは遠めの間合いの古い時代の剣術で、我々のアバニコ・アルニスからすると割に離れたタイプのスタイルのように思っていました。

 その練習がひと段落付くと、グランド・マスタルが練習用の刀を渡してくれました。

 さっきまでの伏線だった!

 そこから始まったのがパリス・スタイルという剣術の練習。

 これが接近戦での刀の術なのですけど、ものすごく不思議な物。

 身体を小さくたたんで行うクールな物で、軽薄な言い方をするとなんかその異様さがかっこいい。

 パレスというのが、ドセ・パレスのことなのかバハド・ズブの宮廷剣術のことなのかはわからないのですが、大変に興味深い物でした。

 もちろんこれも、それまでにやってきた基本があっての応用編のカテゴリーの物なのです。

 基本の動作がそのスタイルになるというアルニスの面白さが感じられます。

 と、同時に、これまではうちのアルニス班では割にあっさり根幹を掴んでもらえばそれでいいやと思っていたのですが、ここまで詳細を色々習うとそれらをみんな引き渡すということも出来るようになってしまったなあと思っていました。

 これまでは練習に来てる皆さんには根本を理解して二年か三年くらいで卒業してもらおうと思っていたのですが、アルニスに専心してやりたいと言う人がいれば、その気になれば何年もかけて学ぶことが出来ることも出来るなあ。