フィリピンへの追想・3 | サウス・マーシャル・アーツ・クラブ(エイシャ身体文化アカデミー)のブログ

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気持ちよく生きるためのライフスタイルとしての南派拳法(カンフー)蔡李佛拳とエスクリマ(フィリピン武術)ラプンティ・アルニス・デ・アバニコを横浜、湘南、都内で練習しています。オンライン・レッスン一か月@10000で行っております。
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 現代エスクリマと、バハド・エスクリマと、伝統エスクリマの違いに関して技術面から私論をしますと、ペンキ・ペンキとディスアーミングとブロックに切り口で分かれるのではないかと言う気がします。

 ペンキ・ペンキというのがどの程度普遍性のある言葉なのかはわからないのですが、私のこの場合の使いかたとしては、棒と棒を打ち合わせる対人練習だと思って下さい。

 お互いにタイで振って打ち合わせる。シナワリなどをこの類に入れます。

 いわゆる「カリ」は、私の経験ではこれが非常に多い。というかメイン。

 この様な打ち合わせをしてフィリピン武術だと感じる方は非常に多いかと思われますが、実はこれはフィリピンではそれほどやりません。

 景気よくカンカン打ち合わせるのはアメリカ式の特徴のようです。

 フィリピンではこの打ち合わせ練習は、あくまで動きの練習の基本として行うわけで、決して実用動作ではないのです。

 棒だとしても受けたまま打ち込まれてしまう可能性があるし、刃物同士だと刃が悪くなってしまう。

 決して思い切り棒同士を打ち合わせて悦に入るようなことはしません。気持ちはいいので安全な国で暮らしている現代人にはいい練習です。

 代わりにどうするかというと、フィリピンではブロックをします。

 バハド・エスクリマの練習の母体となっているソンブラというのはこのブロックの各種の応用を身に着ける練習となります。

 ブロックをしたらブロック&カウンタル。このブロックと打ち返しを完全に分化して遣いこなす練習は、バハド・エスクリマの中心練習であると言ってもいいようです。

 伝統エスクリマではブロックは学ぶのですが、なるべくならブロックしないで済むといいなあという要素が入ります。

 

https://www.youtube.com/watch?v=fpoK2qrShWk

 こういう感じです。

 相手の攻撃が延びてきたときのために軌道の延長にブロックは置いておくのですが、実際にそれで受ける前に左手で相手の手を払う。

 これをチェック・ハンド、あるいはタピと言います。

 保険のブロックなしでいきなり左手で相手の刃物を掴みにいってしまうとそのまま手をやられる。ブロックとタピの融合に技術があります。

 バハドのエスクリマだとさらにここに、ディスアーミングという相手の兵器を奪う要素が重視されてきます。

 左手で相手を捕まえておいてもぎ取るのです。

 これ、伝統流派でも現在では盛んにおこなわれていますが、あくまで練習として行っているだけで、バハドや「カリ」のようにやたらにやりはしません。

 ついひょいと癖でやりたくなるのですが、そうすると怒られます。

 練習では棒をつかっていますが、実際には刃物かもしれないので、無意識につかむ癖をつけない方がいい。

 同じ癖なら、もぎ取る前にコテンパンに打ちのめして相手を動かなくするまで切りつける癖をつけた方がいいとされています。

 これは私の流派だけでなくて他の伝統系剣術エスクリマでもそうであるようらしく「ディスアームとは相手の腕を切ることだ」と言う言葉があるくらいで。

 確かに、いろんな工夫で相手の武器をもぎ取るよりも、相手の手を叩いた方が安全確実に武器から手を離させることが可能でしょう。

 つまり、剣士の戦いやゲリラ戦の戦法で言うなら、タピしただけで充分。

 ではなぜ「カリ」ではないスタイルでもやるのかというと、それによって力の方向を感じて操作する感覚の練習になるからです。

 なので行うのですが、どうも日本の素人練習者の間では、練習の趣旨と関係なく自分から手を放して相手に兵器を渡してしまったり、無関係にいやいやをするように力を変えて抵抗したりする傾向が多いように感じます。

 練習ででも、勝敗に囚われると言うエゴの凝りかたまり、執着のなせる技でしょう。

 練習においては相手の身体をお借りしてきちんと使わせていただいてきちんと返す、その当たり前が出来ない人は相手に怪我をさせるし自分も怪我をするのですが、甘やかされて幼児性が取れないまま年だけ取ってしまった人たちの中には、この辺りの機微が分からない人は非常に多い。

 もっとリラックスしてかつ自覚的にやらないとこの武術を体得するのは難しい。

 硬直する癖が強く何も物事を考えないで生きるのが習性の現代日本人には自覚が必要な部分です。

 と、言ったところで「カリ」、バハド系、伝統系の技術的な違いを解析してみましたが、おおむね比率の違いで現代での多くの練習グループではこれらの要素を幾分配合して行う傾向が強いようです。

 どこにより重心が置かれているかを知ることが、自分の行っているスタイルを掴むきっかけになることと思います。

 

                                                                                                                                                             つづく