前回の話の続き。




私が勤める薬局にD山くんという「薬学生」がいる。



カギカッコの中に薬学生と収めているのは理由がある。


ここで前回の記事をサラッとおさらいすると、彼は薬学生という事でうちの薬局に入って来たわけだけど、なんかどうもちょっと毛色が違う。



薬剤師や薬学生は子供の頃からそれなりに勉強が得意で、優秀な成績をおさめそこにそうして存在してるわけだし、そりゃそうだよなぁと納得出来る人達が多い。



で、うちのD山くんはなんかそうじゃない。


前回の記事ではかなり遠回しに書いたけど「薬学生D山くん」はズバリ、アホである。



アホが故に謎のイキリ散らしをしている。


自分は全知全能の神かなんかだとでも思っているようだ。



まぁ、若さゆえだろう。



とりあえずしゃべりやら振る舞いだけは一丁前。 

わからないのに知ったかでやり過ごし、誰にも教えを請わない。

だからずっと何も覚えない。




でも、彼はとても感じがいい。

挨拶をすればニコニコしながらHow are you? なんていう感じで、当たり前だけどコレができない人って割といるもんなんだよね。



とにかく、常にニコニコしているのはいいところだなと思う。



ちょっとした事で不機嫌をばら撒くうちのお局より数倍いい、そこだけは。





彼の年齢は18-19ぐらいのもんだろうと思ってた私。


ある日、そんな彼に

「日本人にも年齢って聞いたら失礼なのかな?」と、こんな感じで年齢を訊かれた。



はあ!?ムキー



「日本人にもそれは失礼だよ。まぁ私は46歳だけど、D山くんは?」と聞いたら、


「19歳」と答えた。



まぁ思った通りだったし、別に驚かなかった。




しかしある日、彼が30間近で、アンチエイジングの薬飲んでるから若く見えるんだとかなんとか言ってると、他の薬学生が話していた。



意味がわからん。真顔


彼がいつまでもハミ鼻状態でマスクをしているのと同じくらい意味がわからん。




立ち居振る舞いから見てどうしても19歳くらいだろうと思っていたので、


「いや、そりゃないでしょ。彼自分で19歳って言ってたし。」と、苦笑いで跳ね除けた。




が、しかし。


後日、彼がうちの薬局で痩せ薬であるザクセンダを受け取った。



この時、彼のデータをパッと見たら、なんと27歳だった。



え?マジか?!

っていうかハッキリ19歳って言ってたよな?!


あの嘘はどういうこと?

そんな意味わかんない嘘ついてどうする?




っていうか、ザクセンダってめっちゃ高い。

300ドル以上するものだ。


日本でも一部で話題になってると思う。

かなり効果も高いけど、副作用もそれなりにきついらしい。



彼にザクセンダの副作用で休まれた時、年末のめっちゃ大変な時期で、マジで迷惑だった。



痩せたいなら運動しやがれ。


って、私がいうなって話か。キョロキョロ



しかし、あれで27とは…

しっかりしてないというか、そうではなく、まずどう見ても童t…にしか見えない。



まず女性に対する距離感とかがなんか27歳的ではない。

というか、全てにおいて19歳くらいだろうとしか思えないんだよなぁ。



ーーーーーー






去年の年末から年明けにかけて店でちょろっと動きがあってカオス化した。



この時「また転職か…?」ともうっすら思ってた。



まず年末に薬剤師のマネージャーが辞めた。


薬剤師のマネージャーというのは薬局において店舗の最高責任者になる。


私を面接して、採用してくれたマネージャーだった。




彼は32-3くらいの韓国人。

一緒に仕事してて思ったけど、彼、箱入りなのか?社会や世間を見ないで生きて来ちゃったのか?


とにかくなんかナイーブだった。


だからマネージャーやってみたけど思ったよりしんどくて3カ月で辞めちゃったんだろうな…。



挨拶してもしないとか、社会人として最悪だよね。


こんなやつのいる店に来ちゃったか…と自分に絶望したけど、私が入ってまもなく辞めることになりホッとしてしまった。



そして、彼が面接して雇ったスタッフは私の他にD山くんと、Gちゃんという子がいる。



このGちゃんのこともいつかまた書こうと思うけど、ホントにこの子もなんだかなって感じの子。





マネージャーがいなくなってからというもの、店の体制が一気にめちゃくちゃになった。


大してマネージメントなんかしてないようだけど、マネージャーの存在っていうのは結構大切なんだなーと、しみじみ感じた次第。



勤続50年以上の「おばあちゃん店長」もいるけど、店長って言ってるのはブログ上語感がいいからだけで、実際はなんの権限もない。



一応リテールマネージャーではあるので、名ばかり店長みたいな感じかな。



そんなわけで誰も店をマネージメントしないから、社会性のない人間はますますやりたいことしかやらなくなる。




それから薬剤師のマネージャーが辞めたことによって、薬剤師の人数が足りないし、薬学生が卒業で抜けた事によって、処方箋カウンターで補助できる人間が誰もいなくなってしまった。


薬剤師の不足を補うため、派遣の薬剤師がしばらく店に出入りするようになった。


そしたらあっという間に店がカオスになった。


薬剤師は自動的にスーパーバイザーにもなるけど、でも派遣だから責任ないし、カンケーねーって感じが態度に現れていた。


だから色々「んー」って感じでも、誰も注意しない。




私は年末コロナにかかり、しばらく仕事に来れなかった。


と言っても10日くらいのもんだったけど、なんか店の様子がだいぶ変わっていた。



なんとD山くん、処方箋カウンターの中で薬剤師の補助として入ってた。



え?!

私はちょっと目を疑った。



D山くんに理由を訊くと、S2S3という登録販売員のような資格を取っている所で、一定の期間、処方箋カウンターで薬剤師の補助をしなきゃいけないとかなんとか言っていた。



…そんな事書いてあったかなぁ??



薬剤師に確認すると、

「んー、まぁなくはない」と、なんだかものすごく曖昧な答え。


っつーか、彼らS2S3のコースやった事ないわけだし、そりゃはっきり答えられないよね。


なら、わかんないっていやぁいいのに、プライドが許さんのか?



まぁいっか。

私はS2S3終わったけど、別に処方箋カウンターで何かやらされることなんかないし、いつも通りだった。


でも処方箋カウンターで薬剤師の補助するなら、また別の資格がいる。


持ってるのか?

これから薬学生になるからカンケーないのか?

だったらS2S3取りたいなんて言わないか。


つーか同じ時給でやらされてるのかな?

私だったら断るけどね、同じ時給なら。


っていうか薬剤師もよく許すよなぁ、D山くんまだ薬学生じゃないのに。



先にも書いたように、この時はいつも違う派遣の薬剤師が店の面倒を見てたから、D山くんが「まだ」薬学生じゃない事も知らないし、自分の仕事が楽になるからそういう事実はどうでもいい。



この事態に一番納得いってなかったのはお局さん達と、この薬局で2年ほど勤めてるQUTの薬学生だった。



「何でアイツ処方箋カウンターの中で補助やってんのよ?!ふざけんじゃないわよ!!」



ぐらいの感じで怒ってた。



まぁ…そこまで怒るほどの事でもないけど、長年勤めてる人からしたら「通常あるべき状態」がめちゃくちゃにされた気分で納得いかないんだろうね。



まぁでも私も困ってた。


こいつがフロントショップの仕事一切やらないから、私が一人で接客してレジもやって補充もして…みたいなことがしょっちゅうあった。


暇な店ではあるけど、処方箋カウンターで薬剤師とヘラヘラ話してる場合じゃねーぞ?!と、私は店頭からそんな彼らを見ててガルガルしてた。ムキーッ





そういう日々が続いてたある日。


またいつものように派遣の薬剤師さんが来た。

この方は自分でも漢方の薬局を経営していて、たまにこうやって派遣の仕事で普通の薬局で働いてるらしい。


アジア人のベテランのおばちゃん薬剤師。


落ち着いてるし、知識もすごく豊富だし、とにかくすごくいい人だった。



おばあちゃん店長も彼女のことすごく気に入って、


「今、うちの店マネージャー募集してるんだけど、あなたに来て欲しいわ!!」と言っていた。


私もこの人だったらいいなって思ってた。


でも、先に書いたように自分のビジネスあるんでって振られちゃった。えーん




この薬剤師さんが

「この薬局では誰がディスペンサリー(処方箋カウンター)手伝ってくれるの?」と言ったら、D山くんが


「あーはいはい、僕です。」と、マスクからツンと突き出てる鼻を一旦マスクに収めながら、ワントーン高いカッコつけた声でチャラっと処方箋カウンターにやって来た。


薬剤師さんが「あら、そうなの?よろしくー。今何年生?」との質問に彼は、


「次2年生です。」と、サラッと言っていた。





えええ?!

ちょ、ちょっと?!滝汗




私は今、確かに彼が「次2年生」だと言ったのを聞いた。



こないだ彼は私に「まだ入学してない」と言っていたのに。




おいおい…

もしかしてこれはひょっとしてやっぱり私の読み当たってないか?



すごいもん目にした気がして心臓が若干バクついた。




そしてこの日、D山くんはその派遣の薬剤師さんを手伝ったんだけど、勝手にラベル貼って処方しちゃったりして、薬剤師さん若干発狂。



「あの…すごく言いづらいんですけど、あの子は本当にいつも薬剤師の補助入ってる子なんですか?」と、おばあちゃん店長に訊ねてた。



「まぁ、あの子はちょっと知ってるふりが多い子なのよ。」


とおばあちゃんは言っていた。



結局この薬剤師さんには「D山くん、私一人で出来るからこっち来なくていいよー」って言われてたわ。





おばあちゃん店長、D山くんのこと本当に嫌いで、日曜のシフトはいつも押し黙って不機嫌丸出しで仕事してた。



ハッキリ言ってコレもまた迷惑だった。


こんな暇で小さな店なのに、そんな事して空気悪くしたら仕事しづらくなるじゃんね。




長年居すぎて他を一切知らないから、もう完全に我が物のようになっちゃってんだよね、この職場が。



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二月になろうとしてたある日、D山くんが引っ越しをするとか何とかで、しばらく休みを取っていた。


シティーからニューファームに引っ越すとか。


彼が周りに言ってるようにホントにUQに通ってるとして、ニューファームってちょっと変だなって思った。



UQの子って、普通大体セントルシア近辺に住むけどなぁ…と。


ニューファームってシティーからは近いけど、セントルシアからは正反対。



だからD山くんに「え?D山くん学校どこ?」と敢えて訊いてみた。



そしたら、


「QUTだよ。」と。



しかも


「サウスバンクにキャンパスあって、あそこに行くんだよ。」



と、言っていた。




あわわわわ。


こ、コレは…?!



「王手!!」っていう声と、将棋の駒が甲高い音でパチーンと将棋盤を鳴らしてるシーンが頭の中で出てきた。




もうこれ詰みじゃないか?


彼の投了は秒読みか?





しかし、まだ彼はうちの薬局でしぶとく働いている。




そんなわけでまた長くなったので続きます。。。