「オールウェイズ」
(原題: Always)
1989年12月22日公開。
スティーヴン・スピルバーグがオードリー・ヘプバーンを撮った作品。
オードリー・ヘプバーンの遺作。
キャッチコピー:
「いつまでも–あなたの心に。スピルバーグ監督が10年もの間、暖めてきた 愛の名作が ついに誕生しました。」
脚本:ジェリー・ベルソン
監督:スティーヴン・スピルバーグ
キャスト:
ピート:リチャード・ドレイファス
ドリンダ:ポリー・ハンター
アル:ジョン・グッドマン
ハップ:オードリー・ヘップバーン
あらすじ:
無茶な飛行でいつも周囲をはらはらさせている森林火災の消火隊員ピート(リチャード・ドレイファス)を恋人に持つドリンダ(ポリー・ハンター)は、誕生日にピートからドレスとハイヒールをプレゼントされた夜、消火飛行のパイロットになりたい、と言い出した。
許さないピートに彼女は、友人のアル(ジョン・グッドマン)から聞かされていたパイロット養成学校の教官になるよう頼む。
死と背中合わせの仕事を続けるピートを心配したドリンダの心を察した彼は、それを約束する。
ところが非番の日に起きた山火事の出勤を命じられたピートは、ドリンダの制止も聞かず飛行機に乗り込み、エンジンに火のついたアルの飛行機を鎮火させようとして逆に爆死してしまうのだった。
天国でピートはハップ(オードリー・ヘップバーン)という天使と出会い、パイロットに彼の霊感を与えるように言われる。
こうしてピートは、アルが所長をすることになった養成学校の生徒テッド・ベイカー(ブラッド・ジョンソン)にアドバイスを与えることになるのだった。
一方、ピートと死別した悲しみから立ち直れないドリンダの姿を見かねたアルは、現実から逃げてはいけないと、養成学校に連れてゆく。
ところがテッドは、昔ピートが送ったドレスを着たドリンダの姿を見て、彼女に一目惚れしていたことがあり、一方のドリンダも次第に彼に好意を寄せてゆく。
苦しむピートにハップは愛する人に別れを告げた時、自由になれるのだと諭すのだった。
やがてテッドも一人前のパイロットになった頃、山火事発生の知らせが届く。
出勤しようとするテッドの姿を見たドリンダは、アルたちが止めるのも振り切って飛行機に乗り込む。
そしてピートに見守られたドリンダは、無事使命を遂行するのだった。
こうしてピートは、ドリンダから別れることができ、彼女はテッドとの愛を実らせるのだった。
コメント:
仕事中に死んだ森林火災消火隊員が、なおも恋人を見守り続ける姿を描くファンタジー・ドラマ。
本当に大切なのは言葉ではなく心だと思うが、言葉にしなければ伝わらないこともたくさんある。
死んでからではもっと言葉にして気持ちを伝えるべきだったと後悔しても遅い。
もちろん死者の想いがこの世に残っていればの話だが。
ひょっとすると死は後に残された生者だけでなく、死者にとっても悲しい出来事なのかもしれない。
生者は前に進むことが出来るが、死者の時間は止まったままだ。
そしてもし死者がこの世に留まり続けるならば、大切な人が新しい相手に巡り合う瞬間を目撃して切ない思いをするのかもしれない。
森林火災消火隊の凄腕パイロットのピートは、ある日燃料の計算不足で間一髪のところで墜落を免れる。
あまりにも危険な任務の連続に耐えきれず、恋人のドリンダはピートにパイロットを引退し、訓練学校の講師になるように説得する。
ピートはその願いを聞き入れるが、その直後に彼は窮地に陥った同僚のアルを救うために命を落としてしまう。
そして彼は天使ハップにテッドという若いパイロットの守護霊になることを依頼され、再びこの世に送還される。
ピートはパイロットとしてはまだ半人前のテッドの側に寄り添い、霊感によって彼をサポートする。
しかしテッドは以前にドリンダの姿を見て一目惚れしており、やがてドリンダも彼の誠実な姿勢に惹かれていく。
ドリンダをまだ自分の恋人だと思っているピートは、複雑な想いで二人の新しい展開に向き合うことになる。
この手の物語だとどうしても一人は悪者が出てきそうだが、この作品に登場するのは善人ばかりだ。
ピートのおかげで助かったアルは本気でドリンダを心配してお節介を焼くし、テッドも決してドリンダの心に土足で入るような真似はしない。
ピート自身もピンチの時に口笛を吹くようなどこか飄々としたキャラクターなので、あまり悲壮感を抱かせない。
なので、観ていて純粋にドリンダの新しい出会いを応援してしまいたい気持ちになる。
となると、何かドラマとしてはあまりにも張り合いがないようにも感じた。
ピートがこの世に送還された理由は、未だにピートの死に縛り付けられているドリンダの心を解き放って自由にしてあげるためだった。
パップは「自由は与えることで手に入れられるものなのだ」とピートを諭す。
同時にピートも彼女への想いを手放さなくてはならない。
てっきりテッドを一人前のパイロットにすることでドリンダの心を解き放つものだと思っていたので、最後の山火事を消すためにドリンダが無断でテッドの飛行機で出撃する展開には驚いた。
ピートは彼女をサポートし、彼女を窮地から救うことで彼女への未練を断つ。
そしてピートと別れを告げたドリンダも、新たな人生を歩き出す。
スピルバーグ監督らしい見せ方の上手さに感心させられる場面が多かった。
山火事の臨場感もそうだが、冒頭ののんびりと小舟で釣りを楽しむ男二人の眼前に、給水のために着水するセスナがアップで映し出される場面もインパクトが強い。
そしてピートの死を予感させる青い光。
最後のピートがドリンダに言葉に出来なかった想いを告げる場面と、満天の星空が感動的だ。
この映画が、オードリー・ヘプバーンが出演した作品の最後ということになる。
当時60歳だった。
それが、なんと天国にいる天使の役というのが、なんとも象徴的だ。
永遠に皆さんを天国から見守っていますよというメッセージなのかも。
オードリーが1993年1月20日に63歳で亡くなった後、以下のような映画が公開されているが、ドラマ映画としてはこれが遺作となった。
・「オードリー・ヘプバーンの庭園紀行」(1993年公開)
(Gardens of the World with Audrey Hepburn)
・「Audrey Hepburn: In Her Own Words」(1993年公開)
(ユニセフのドキュメンタリー映画)
この映画は、以下のサイトで動画配信中: