自民党総裁選(12日告示、27日投開票)をめぐり、候補者の政策アピールが過熱してきた。
小泉進次郎元環境相(43)がスタートアップ(新興企業)支援で税制優遇の検討を語った一方、石破茂元幹事長(67)は「増税路線」である金融所得課税の強化を、茂木敏充幹事長(68)は防衛増税の停止などを打ち出して、対立候補から批判を浴びている。
次期衆院選も見据えて、総裁選の争点は今後絞られそうだ。
こうしたなか、産経新聞特別記者の有元隆志氏が「自民党員を対象にした調査結果」を入手した。
国会議員票に影響する党員の意識傾向に迫った。
以下は、有元隆志氏のコメント:
自民党総裁選を前に、ある調査機関が実施した党員を対象にした意識調査の結果を入手した。
候補者が出そろっていない段階での調査ではあるが、一般向けの世論調査ではなく「党員のみ」を対象にしているので紹介したい。
調査は全国の党員1500人を対象に、8月10日と22日に実施された。
22日の調査で投票先として最も高いのは石破氏で36・4%だった。
小泉氏23・6%、高市早苗経済安保障相(63)13・1%、小林鷹之前経済安保相(49)10・4%と続いた。
今回の総裁選は候補者の乱立で、これまで以上に党員・党友票の重みが増している。
国会議員票で主要候補の差がつかず、党員票の結果で決まるとしたら、この数字だけをみると石破氏と小泉氏の決選投票ということになる。
10日の調査では、石破氏が34・8%、高市氏が15・6%、小泉氏が14%で、小林氏はわずか1・9%だった。
8月19日の出馬表明を受けて小林氏支持は8・5ポイント上昇した。
出馬の意向を固めた小泉氏も9・6ポイント伸ばした。
自民党内では、主要閣僚や党幹部を経験していない小泉、小林両氏の「経験不足」への懸念は根強い。
懐疑的な見方に対し、小林氏は出馬会見で「鷹は古い羽根を新しい羽根に換える習性を持っている。自民党も新しい羽根が必要な時期を迎えている」と強調した。
石破氏には過去4回総裁選に出馬し、地方遊説も小まめに行っているので底堅い支持がある。
ただ、22日のクロス集計を見ると、自民党員でありながら次期衆院選で「立憲民主党など野党に入れる」と答えた人の中で、他候補を大きく引き離して支持を集めているのが石破氏だった。
「立憲民主党に入れる」と答えたのが8・5%いたが、その中で石破氏支持が68・3%で、2位が小泉氏の10・6%だった。「政治とカネ」をめぐり「自民党は反省をどこかで忘れてしまったのではないか」と述べるなど、党への批判を厭(いと)わない石破氏の姿勢が支持を集めているようだ。
河野はは「低迷」顕著。
上位4人以外では、林芳正官房長官(63)5・8%、河野太郎デジタル相(61)4%、茂木氏3・3%となっているが、「河野氏の低迷ぶり」が顕著だ。
出馬会見で、河野氏は
「かつては『河野太郎さん1位』ということもあった。
残念ながら少し数字が悪くなっておりますが、デジタル化を進めていく上であったり、いろんなことが影響しているのかな」と語った。
X(旧ツイッター)上で一般ユーザーをブロックし、国会答弁で「所管外」を繰り返すなど、河野氏の資質を疑問視する見方が広がっていることも要因としてあるだろう。
各候補は「差別化」を打ち出そうとしているが、石破氏は2日のBS日テレ番組で「金融所得課税の強化」について「実行したい」と述べた。
総裁選の後にはすぐに衆院の解散・総選挙があるとの観測が強まるなか、課税強化を打ち出した石破氏への反発は広まるのかどうか。
告示を経て、党員の動向がどのように変化するか注視していきたい。
高市早苗経済安保相も9日に自民党総裁選に出馬表明する方針だ。
報道各社の世論調査では小泉進次郎元環境相や石破茂元幹事長に続く3位というものが多いが、1回目の投票で2位以内に残り、決選投票で勝利するシナリオは考えられるのか。
総裁選では12日の告示日時点で6~8人程度が立候補するとみられる。
国会議員票は367票であるが、各立候補者に推薦人20人がいるので、国会議員票は分散化し、第1回の投票では国会議員票で大きな差が付きにくい。
となると、党員票がカギを分ける。
今のところ、各種世論調査では、自民党支持層で1位は小泉氏、2位が石破氏、3位が高市氏というところだ。
この世論調査が党員票の動向にも近いとすると、小泉氏と石破氏が上位2人となり、高市氏は決選投票に出られない可能性がある。
ただし、総裁選はまだ始まっていない。
12日に告示の後、各候補者間での討論会も開かれるだろう。
世論調査をみると、小泉氏には勢いがあり、石破氏はやや停滞気味だ。
小泉氏に現段階で勢いがあるということは、正式に出馬表明するとさらに支持率が上がる可能性がある。
高市氏も出馬表明は9日とされ、まだ伸びしろがあるだろう。
また、この三者を比較すると、「新鮮味」があるのは小泉氏と高市氏だが、「経験値」があるのは石破氏と高市氏だ。
高市氏は新鮮味と経験値の両方で高いポテンシャルを持っている。
しかも、討論会などで政策論争をすると、高市氏が他者を圧倒する可能性が高い。
今回の総裁選は、菅義偉前首相と麻生太郎党副総裁のキングメーカー争いとも言われているが、小泉氏と石破氏が1位、2位になると、事実上、菅氏の勝利なので、麻生氏は指をくわえて見ているわけにはいかないだろう。
麻生氏は、自派閥の河野太郎デジタル相を推すというが、裏で高市氏も推す可能性もある。
となると、1回目の投票で、小泉氏と高市氏が上位2人となる可能性が高い。
決選投票はどうなるか。石破氏のほか、加藤勝信元官房長官らは小泉氏に回るだろう。
今の世論調査の数字通りなら、それだけで小泉氏は過半数を取ってもおかしくない。
しかし、告示後の討論会などで高市氏の支持が高まり、小泉氏と石破氏の支持を食えば分からなくなる。
石破氏には勢いがなくなっているほか、小泉氏には経験値が少ないので、論戦でボロが出る可能性もある。
その上で、麻生氏も菅氏との対抗上、土壇場で高市氏のサポートに回るかもしれない。
小泉氏の経験値のなさは大きな弱点だ。
父の純一郎元首相は厚労相や郵政相の経験があり、総裁選も3度目の挑戦だった。
もし小泉氏は首相になれば43歳で、52歳で就任した安倍晋三氏の戦後最年少のみならず、44歳の伊藤博文を抜き「憲政史上最年少」となる。
一方、高市氏ならいうまでもなく「女性初」だ。
その上で、経験のなさを選ぶか、国難があるときに経験を選ぶかになる。
高市氏は、新鮮味かつ経験を兼ね備えているので、そこに勝機がある。
というような、声があるようだが、はたしてどう動くかは、まだ全然分からない。