「ナイル殺人事件 (1978)」
(原題:Death on the Nile)
1978年9月29日公開。
アガサ・クリスティのミステリーを映画化。
興行収入:$14,560,084。
原作:アガサ・クリスティ『ナイルに死す』
脚本:アンソニー・シェーファー
監督:ジョン・ギラーミン
キャスト:
役名 | 俳優 | |
---|---|---|
エルキュール・ポワロ (私立探偵) |
ピーター・ユスティノフ | |
リネット・リッジウェイ・ドイル (敵の多い女相続人) |
ロイス・チャイルズ | |
ジャクリーン・ド・ベルフォール (リネットの古い友人でサイモンの元婚約者) |
ミア・ファロー | |
ジョニー・レイス大佐 (ポワロの友人) |
デヴィッド・ニーヴン | |
マリー・ヴァン・スカイラー (富豪の老婦人) |
ベティ・デイヴィス | |
アンドリュー・ペニントン (リネットの弁護士) |
ジョージ・ケネディ | |
サロメ・オッタボーン (作家) |
アンジェラ・ランズベリー | |
ロザリー・オッタボーン (サロメの娘) |
オリヴィア・ハッセー | |
サイモン・ドイル (リネットの夫) |
サイモン・マッコーキンデール | |
ジェームズ・ファーガスン (社会主義者) |
ジョン・フィンチ | |
ベスナー医師 (スイスの医師) |
ジャック・ウォーデン | |
ルイーズ・ブルジェ (リネットのメイド) |
ジェーン・バーキン | |
バウァーズ (スカイラーの付き添い) |
マギー・スミス |
あらすじ:
つい最近莫大な遺産を相続した美貌と聡明さを兼ねそなえたアメリカ娘のリネット(ロイス・チャイルズ)は、親友ジャクリーン(ミア・ファロー)から失業中の婚約者サイモン(サイモン・マッコーキンデール)を助けで欲しいという相談をうけ、早速サイモンと会った。
リネットがこのサイモンと突然婚約を発表したのはそれから間もなくだった。
しかし、この2人の結婚は思わぬ波紋をまきちらすことになる。
エジプトヘハネムーンに旅立った2人の行く先々にジャクリーンが現れ、妨害行為を繰り返す。
ジャクリーンの裏をかいて豪華客船カルナーク号でナイルの河下りに出かけた2人だったが、船にはなんとジャクリーンが乗っていた。
悩んだリネットは、この船に偶然乗り合わせていた私立探偵ポアロ(ピーター・ユスチノフ)に、ジャクリーンを遠ざけてほしいと頼むが、断わられてしまう。
ある朝、リネットが死体となって発見された。
凶器はジャクリーンが持っていたピストルで、壁にはJの血文字が残されていた。
しかし真っ先に疑われるべきジャクリーンには確固たるアリバイがあった。
実はこの船にはその他にも、リネットに恨みを持つ者が多数乗っていたのだ。
リネットの叔父で財産管理を委ねていたアンドリュー(ジョージ・ケネディ)、リネットを自作の小説のモデルにしてからかっている作家のサロメ(アンジェラ・ランズベリー)、サロメの娘でリネットに劣等感をもつロザリー(オリヴィア・ハッセー)、リネットの真珠のネックレスに目をつけているバン・スカイラー(ベティ・デイヴィス)、リネットにいかさま師呼ばわりされた医師ベスナー(ジャック・ウォーデン)、リネットに結婚を破談されたと思い込んでいるメイドのルイーズ(ジェーン・バーキン)、父親がリネットの祖父に破産させられた過去を持つ看護師のミス・バウアーズ(マギー・スミス)、ブルジョア階級を軽蔑している学生ファーガスン(ジョン・フィンチ)。
多くの人間が動機をもつており、それぞれがピストルを手に入れリネットを撃ち殺すことができる状況だった。
ポアロは旧友レイス大佐(デイヴィッド・ニーヴン)の協力を得て捜査を開始する。
しかし真犯人を恐喝していたルイーズと、真犯人を目撃したと豪語していたサロメが次々と殺害される。
そうして、ポアロの推理が真相に迫り、彼はこの殺人事件の意外な真犯人を突き止めるのだった。
コメント:
ナイル河をさかのぼる豪華遊覧船で起きた連続殺人事件を描くミステリー。
原作はアガサ・クリスティの『エルキュール・ポアロ』シリーズの一作。
「オリエント急行殺人事件」('74)のヒットをうけて製作された“名探偵エルキュール・ポワロ”シリーズの第2弾。
ただし、ポワロは1作目のアルバート・フィニーから、ピーター・ユスチノフに変わっている。
このシリーズは「地中海殺人事件」('82)「死海殺人事件」('88)と続く。
とてつもない豪華キャストでしっかり作られたミステリ映画だ。
最近の映画ファンには馴染みがない俳優たちではあるが。
・ミア・ファロー:『ローズマリーの赤ちゃん』『華麗なるギャツビー』
・デヴィッド・ニーヴン:『80日間世界一周』『ピンクの豹』『ナバロンの要塞』
・ベティ・デイヴィス:『イブのす総て』『何がジェーンに起こったか』
・ジョージ・ケネディ:『暴力脱獄』『大空港』『人間の証明』
・ロイス・チャイルズ:『追憶』『007ムーンレイカー』
・アンジェラ・ランズベリー:『影なき狙撃者』『ジェシカおばさんの事件簿』
・オリヴィア・ハッセー:『ロミオとジュリエット』『復活の日』
・ジョン・フィンチ:『マクベス』『フレンジー』
・ジャック・ウォーデン:『十二人の怒れる男』『大統領の陰謀』『評決』
・ジェーン・バーキン:『ナック』『欲望』
・マギー・スミス:『素晴らしき戦争』『ハリーポッターシリーズ』『ダウントン・アビー』
エジプトのピラミッドの周囲を馬で駆ける二人、ピラミッドの影から飛び出してきて、ツアーガイドばりに名跡の解説を始めるミア・ファロー。
ツアーでそこそこ簡単に行ける日が来るとは思ってもみない頃の作品だ。
兼高かおるの時代だ。
巨大な石柱の並ぶルクソールのカルナック神殿で、さまざまな方向から人々が行きかう場面、スリリングでカッコよくて素晴らしい。
本物の神殿で撮影したとしか思えないけど、誰かが昇って本当に石のようなものを落としたんだろうか。
世界遺産損壊…?と思ったら認定されたのはこの映画の公開の翌年1979年だった。
滑り込みセーフ!
観光客であふれるようになったのは、それ以降なのかもしれない。
世界遺産認定前の名所旧跡が見られるのも、昔の映画のだいご味のひとつ。
登場者全員、それぞれ動機を持っていて誰でもが犯人になり得る。
発端はリネット(ロイス・チャイルズ)が、婚約者の就職を頼みに来たジャクリーン(ミア・ファロー)の婚約者を奪ったことから事件が起こる。ジャクリーンは新婚旅行の先々に現れては嫌がらせをする。
殺されたのはリネットだが、乗客にはそれぞれの動機がある。
いちばん怪しいのはジャクリーン=婚約者を奪われる。
ベニントン=ジャッキーの管財人の叔父で結婚後も財産を管理しようと企む。
作家のサロメとその娘=リネットを自作の小説のモデルにしたため名誉毀損で訴えられようとしている。
スカイラー夫人=リネットの真珠の首輪を自分のものにしたい。
スカイラー夫人の秘書=リネットの親に父親が破産させられた。
医師ベスナー=リネットにイカサマ師呼ばわりされている。
メイドのルイーズ=リネットが報酬の約束を守らないので結婚できない。
学生ファーガスン=ブルジョア階級を軽蔑。
もちろんポアロ(ピーター・ユスティノフ)とレイス大佐(デイヴィッド・ニーヴン)は容疑者ではない。
リネットの真珠の首輪を自分のものにしたい富豪の老婦人・スカイラー夫人を、デイヴィスが演じている。
単なる顔見世ではない。
さすがの貫禄だ。
この事件の謎解きは金田一耕助と同様何人かの犠牲者が出てから明らかにされる。
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