「危険がいっぱい」
(原題:Les félins)
1964年6月12日公開。
ジェーン・フォンダとの共演。
原作:デイ・キーン『喜びの家』
脚本:ルネ・クレマン、パスカル・ジャルダン、チャールズ・ウィリアムズ
監督:ルネ・クレマン
キャスト:
- マルク:アラン・ドロン
- メリンダ:ジェーン・フォンダ
- バーバラ:ローラ・オルブライト
- ヴィンセント:オリビエ・デスパ
- ロフタス:カール・ステューダー
- ハリー:ソレル・ブルック
- ミック:ニック・デル・ネグロ
あらすじ:
マーク(アラン・ドロン)はいかさまカード師。
あるホテルで休暇を過ごしていたが、ある日、四人のアメリカのギャングに連れ去られた。
マークがボスの妻君に親切過ぎたためだ。
だがマークは上手く逃げのび、救世軍施設に逃げ込んだ。
ギャングはそこも嗅ぎつけた。
マークはその追求を逃れるため、たまたまここを訪れ、食物を施すアメリカ未亡人バーバラ(ローラ・アルブライト)の運転手として雇われ、別荘に住むようになった。
ところがこの家には彼女のいとこのメリンダ(ジェーン・フォンダ)の他に、秘密の部屋に住むバーバラの愛人ビンセント(オリビエ・デスパ)がいた。
彼女がマークを雇ったのも、実は殺人犯のビンセントと逃げるためのパスポートが目的だったのだ。
メリンダはマークを深く愛した。
だが、彼はバーバラに想いを寄せている。
彼がバーバラとこの家を逃げ出そうとしていることを知ったメリンダは二人の仲をさこうとした。
彼女の打った一通の偽電報は、バーバラの裏切りを示すものだった。
マークは激怒して、密室からのビンセントの看視も忘れて難詰した。
彼女は彼を逃れるため、秘密の廊下に入った。
だが、二人の激しい話を盗み聞きしたビンセントが、バーバラを殺してしまった。
そして運転手の姿をしたビンセントがマークに迫った。
だが、銃声と共に倒れたのはビンセントであった。
マークを追うギャングが間違えたのだ。
マークとメリンダは二つの死体を処理しなければならない。
車に死体を積み、二人は捨て場所を探しに出た。
途中、メリンダは警官にその死体のことを告げた。
彼はうまく脱出し、別荘に逃げ帰った。
しかし、お尋ね者になったマークはこの家を出ることは出来ない。
メリンダの、愛する男を止めておく唯一の方法に、まんまとひっかかったのだ。
マークはビンセントになり代わり、秘密室の住人になったのであった。
コメント:
『太陽がいっぱい』のルネ・クレマン監督の1964年作品。
原作はシカゴが舞台の犯罪小説だが、映画ではフランスに移され、オープニングの賭博師のマルクがアメリカのギャングに捕まえられ、命からがら脱出する一幕はスピーディ。
しかし、見せ場は富豪の未亡人バーバラの屋敷に転がり込んでからで、バーバラの従妹のメリンダ、さらにもうひとり屋敷にいる人物とのそれぞれの思惑が入りまじり、フランス映画らしい芳醇かつ濃密なサスペンスが展開される。
「太陽がいっぱい」における殺人のスリルの香りは無い。
好きな男を自分の家に閉じ込めようとするジェーン・フォンダの計略に引っかかったドロンの行く末が気になる、けっこうエロい作品である。
原作のタイトルが『喜びの家』となっているのは意味深。
アラン・ドロンは本作の後、ハリウッド進出を試み、逆にフランスで活動を始めていたジェーン・フォンダは翌年、フランス人監督ロジェ・ヴァディムと結婚。
洋画界の米国と欧州との交流が盛んになる起点ともなっている作品だ。
ルネ・クレマンは「パリは燃えているか」をはさんで「雨の訪問者」以降、サスペンス映画を撮り続けることになる。ヌーヴェル・ヴァーグの代表格であるトリュフォーとシャブロルのヒッチコックへの傾倒ぶりは有名だが、その対極と言われたルネ・クレマンがシャブロルと同様の着地点に降り立ったことは興味深い。
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