「旅情」
(原題: Summertime)
1955年5月29日公開。
独身のアメリカ女性のヴェネチアでの恋を描く。
やはり、恋の国イタリアは素晴らしい!
キャサリン・ヘプバーンの代表作の一つ。
脚本:H・E・ベイツ、デヴィッド・リーン
監督:デヴィッド・リーン
主題歌:ロッサノ・ブラッツィ『Summertime In Venice』
キャスト:
キャサリン・ヘプバーン:ジェーン・ハドソン
ロッサノ・ブラッツィ:レナード・デ・ロッシ
あらすじ:
ジェーン・ハドソン(キャサリン・ヘプバーン)は、オハイオ州アクロン在住の独身中年の自称「おしゃれな秘書」で、夏の休暇に、何年もかけて貯めたお金で長年の夢だったヴェネチア旅行に来た。宿に向かう水上バスで、彼女は同じアメリカ人のロイドとイーディスのマキルヘニー夫妻と乗り合わせる。
宿では、自宅をペンションに改装した未亡人のフィオリーニ夫人が出迎える。
同じ宿には、若いアメリカ人画家のエディ・イエーガーとその妻フィルも逗留している。
ヴェネチア滞在中、ジェーンは、人懐っこいイタリア人の浮浪児マウロに何度も出会うことになる。
最初の夜、ジェーンはサンマルコ広場に行くが、多くの恋人たちを見て寂しさをつのらせる。
屋外のカフェで座っていると、1人のイタリア人男性(ロッサノ・ブラッツィ)が自分を見つめていることに気づき、慌てて席を立つ。
翌日、ジェーンは買い物に出かけ、或る骨董品店のショーウインドーに赤いガラスのゴブレットを見つける。
店に入ると、店主のレナート・デ・ロッシが前夜、自分を見ていた男であることに気づく。
彼は、ゴブレットは本物の18世紀の工芸品だと言い、ジェーンはレナートからイタリアでの値切り交渉の仕方を教えて貰った後、それを購入する。
レナートはジェーンにもう一度会いたいと思ったことから、同じゴブレットをもう1つ探すことを申し出る。
翌朝、ジェーンはマウロと一緒に店に行くが、レナートは不在でがっかりする。
ジェーンは、レナートの店を8ミリカメラで撮影中に誤って運河に転落してしまい、恥ずかしい思いをし、マウロに宿まで連れて行って欲しいと頼む。
その夜、レナートがジェーンの宿に来て、ジェーンに惹かれていることを告白する。彼の気持ちを受け入れないジェーンに対して、彼は幸せのチャンスを無駄にしないようにと言う。
ジェーンが彼と夕食を共にすることを了承しようとした時、マキルヘニー夫妻がムラーノ島での買い物から戻り、ジェーンが買ったものとほぼ同じ新しい赤いゴブレットのセットをジェーンに見せる。
レナートはジェーンが自分に騙されたと思っていることに気付き、同じデザインが何世紀にもわたってヴェネツィアで使用されてきたのだと言い、彼女が買ったものは本物の骨董品だと保証する。
ジェーンの怒りは収まり、サンマルコ広場でロッシーニが演奏されるということから、彼の招待を受け入れる。
2人は広場で月明かりに照らされたコンサートに出席し、オーケストラが「泥棒かささぎ」の序曲を演奏する。
花売りが近づいてくると、レナートはジェーンが蘭ではなくシンプルなクチナシを選んだことに驚く。
その後、2人が街を散策している最中、ジェーンはクチナシを運河に落としてしまい、レナートは奮闘したがそれを拾うことが出来なかった。
宿に戻ると、レナートはジェーンにキスをし、ジェーンは情熱的に応えて「愛している」とつぶやき、急いで部屋に駆け込む。
翌日、ジェーンはその夜のデートに備えて、サロンでトリートメントを受け、新しい服を買う。
広場で彼を待っていると、レナートの「甥」ヴィトがやって来て、彼がレナートの息子であることが分かる。
レナートが結婚していて子供が何人かいることを知って驚いたジェーンは、近くのバーに入り、そこでフィルと出会う。
フィルは、エディとの結婚生活が危ういと打ち明ける。
宿に戻ると、ジェーンはエディがフィオリーニ夫人と浮気をしていて、マウロが仲介役になっていることを知る。
ジェーンは愕然とし、「この街では夜になると何かが起こる」と言う。
レナートがやって来て、イタリアでは事情が違う、エディとフィオリーニ夫人の関係はジェーンには関係ないことだと言う。
彼は結婚していることを認めるが、妻とは別居していると言う。
そして、ジェーンが離れて行ってしまうことを恐れて、そのことは言わないでいたのだと言う。
彼は、ジェーンはナイーブ過ぎて、手に入らないものを望むだけで、手に入れられるものを受け入れようとしないでいると言う。
ジェーンは理解し、デートは野外の中庭のナイトクラブで続き、そこで2人は夜通し踊る。
その後、遠くで花火が上がる中、ジェーンとレナートはレナートの家に行く。
ジェインはその夜、レナートと夢のような夜を過ごした。
その後、2人はブラーノ島で数日間、のんびりと過ごす。
ジェーンは、不幸な結果に終わることが分かっている関係を続ける気にはなれず、早めに帰国することを決める。
レナートはジェーンに残るよう懇願するが、ジェーンはパーティーは終わる前に去るのが良いのだと言い、決心を変えない。
ジェーンはレナートに駅に見送りに来ないように言うものの、その申し入れが無視されることを期待している。
駅のプラットホームでは、マウロがさよならを言うために走って来て、ジェーンに小物をプレゼントする。
列車が発車すると、ジェーンはプラットホームを走ってくるレナートを見て歓喜する。
彼は窓から彼女に荷物を渡そうとするが、列車に追い着けない。
彼は走るのを止め、箱を開けてプレゼントを掲げる。それはクチナシの花であった。
コメント:
キャサリン・ヘプバーンの女らしさが最も感じられるロマンチックな名作がこれだ。
イタリア人の男と親しくなり、一夜を共にするまでがいろいろ変化もあって楽しい。
テーマ曲も、これぞイタリアのカンツオーネといえる名曲だ:
だが、何といってもグッとくるのがエンディングシーンだ。
レナードの持つプレゼントがジェーンに手渡されないまま終わるラスト。
最後に白い箱からレナードが取り出したのは「白いクチナシ」の花だった。
ここで手をふるキャサリンが演じるジェーンの姿も美しい。
その手のふり方が流れるようで、それはまるでベニスの穏やかな川の流れのようだ。
何度もそして柔らかく穏やかに手をふるジェーンに悲壮感はない。
遠く離れた二人を結ぶ手段はこの最後の白いクチナシで終わりを告げるのだ。
その別れのシーンに至るまでの伏線の数々を美しいい風景と細かい演出で繋いだこの映画は、単に恋愛映画という枠を超え、いつの時代にも通じる映画の教科書のようにも感じられる。
洋画の「恋愛映画」の枠の中で、おそらくトップ10に入るだろう、最高の作品である。
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