「怖がる人々」
1994年4月23日公開。
和田誠の恐怖体験5話のオムニバス映画。
筒井康隆の原作は、第3話「乗越駅の刑罰」と第5話「五郎八航空」の2作。
原作:
第1話:椎名誠「箱の中」
第2話:日影丈吉「吉備津の釜」
第3話:筒井康隆「乗越駅の刑罰」
第4話:平山蘆花「火焔つつじ」
第5話:筒井康隆「五郎八航空」
監督・脚本:和田誠
キャスト:
真田広之 | 男 |
原田美枝子 | 女 |
佐野史郎 | 別の男 |
熊谷真実 | 悦子 |
杉本哲太 | 元 |
清水ミチコ | 初江 |
筒井康隆 | 会社の男 |
でんでん | 会社の男 |
逗子とんぼ | 会社の男 |
島田歌穂 | 電話ボックスの女 |
大河内浩 | 電話ボックスの男 |
奥村公延 | 悦子の父 |
平田満 | サラリーマン |
上田耕一 | 酒場の親爺 |
麿赤児 | 河原の男 |
マルセ太郎 | 薮の男 |
佐々木すみ江 | 水上バスの女性 |
高品格 | 造り酒屋の主人 |
内田朝雄 | 老僧 |
フランキー堺 | 釜のおじさん、水上バスの男 |
斎藤晴彦 | 入江又造 |
萩原流行 | 駅員A |
花王おさむ | 駅員B |
杉山とく子 | 母親 |
小林のり一 | 弟 |
浅香光代 | 旅芸人姿の女 |
渡辺哲 | 猫 |
小林薫 | 重助 |
黒木瞳 | すみ |
三谷昇 | 番頭 |
石黒賢 | 佐々木 |
嶋田久作 | 旗山 |
レオナルド熊 | 農夫A |
桜金造 | 農夫B |
山谷初男 | 甚平 |
不破万作 | トラック運転手 |
阪田マサノブ | 編集=部員 |
すまけい | 編集長 |
あらすじ:
第一話「箱の中」
深夜、マンションに帰ってきた男はエレベーターで美女と乗り合わせる。
エレベーターは動き出した途端、停止してしまう。
閉じ込められた二人。
すると、女は「たじまに頼まれたのだろう。早く動かして」と男に喰ってかかる。
さらに女は、カミソリをふりまわし始め、狭い空間を訳も分からず逃げまわる男。
やがて、エレベーターは動き出すと、女はケロリと出て行ってしまう。
男が呆気にとられているとエレベーターの中にまた、危険な男が入ってきた。
第二話「吉備津の釜」
無職の悦子は職探しているが、なかなか上手くいかない。
そんな時、ふとしたきっかけで知り合った初江に職を世話してもらう。
翌日、紹介状をもって約束の場所へ向かう悦子は子供のときに聞いた吉備津の釜のおじさんの話を思い出す。
掟を破って船を出した船頭・元の話で、元は荷揚げをすませ、法話を聞くため寺に向かう途中、見ず知らずの男から手紙を届けるように頼まれる。
その中身は元を殺してくれとあった。
老僧の機転で、元は危うく命拾いするというものだった。
悦子は初江からもらった紹介状が気になり開けてみると何も書いていない。
不気味に思い引き返してしまう悦子。
後日、新聞に詐欺の疑いがある初江が自殺したとあった。
第三話「乗越駅の刑罰」:
小説家の入江又造は七年ぶりに里帰り、乗越駅にやってくる。
無人と思い、切符を出さずに改札口を抜けようとしたところに、駅員に呼び止められる。
又造の弁解を一向に認めない駅員は、言葉尻をとらえてイビリだす。
そこに、もう一人の駅員が来て子猫でスープを作り始める。
怖くなった又造は金をつかませて逃げようとする。
だが、余計怒りにふれて、無理やり猫スープを飲まされてしまう。
そんなところへ子猫の親と名乗る猫男が子猫を捜しにくるのだった。
第四話「火焔つつじ」
呉服の行商をしている重助は土砂降りの雨の駅で出会った女・すみと宿に空き部屋がないため、一夜を過ごすことに。
寝つけない重助は雨戸を開けようとするが、すみは怖がって開けさせない。
理由は夜が明けたら話すと言う。
翌日、すみは語り出す。元芸者で妾になっていたすみは男の子をもうけた。
本妻もその子をかわいがってくれたが、つつじの季節のある日、つつじが燃える庭の中に子供が転がっているの見たと言う。
重助はそんなすみを愛しく思い、所帯を持とうともちかける。
すみは喜ぶが、窓の外には燃えるつつじがあった。
第五話「五郎八航空」
無人島に取材に出かけた記者・佐々木とカメラマン旗山は、突然の豪雨に遭い、堀立小屋に逃げ込む。
そこにいた農夫に不定期の航空便があると聞いた2人はそれに乗ることに。
ところが、やって来たのは不安な飛行機で、しかも操縦士の五郎八が事故で、代理の妻が操縦する。
恐る恐る、乗る2人。
飛行機は途中雲に覆われ、道に迷い、燃料が切れかかるが、なんとか陸のガソリンスタンドに到着する。
燃料を補給して再び飛び立とうとするが、旗山は危険を感じて降りてしまう。
翌日、東京に帰ってきた佐々木は、ニュースで旗山が土砂崩れで生き埋めになったことを知った。
コメント:
″恐怖″をテーマに、奇妙でユーモラスな怖い世界を映画化した5話。
恐怖体験5話のオムニバスだ。
やはり一番怖いのは、筒井康隆原作の2作品だろう。
第三話の「乗越駅の刑罰」
出演:斎藤晴彦、萩原流行、花王おさむ、杉山とく子、小林のり一、浅香光代、渡辺哲
ローカル線の小さな駅「野里越」。
久しぶりの里帰りで中年の小説家・入江又造(斎藤晴彦)がたった一人降り立つ。
ポケットをあちこち探るが、切符が出てこない。
改札口には誰もいない。
駅員が来る気配もなく、又造は切符を出さずにそのまま改札口を通り過ぎる。
そのとき若い駅員(萩原流行)が又造を背後から呼び止める。
駅員は又造をにらみつけ威圧的な態度。
又造が途中の駅から電車に飛び乗って、車内で切符を買おうと思って忘れてしまい、切符を持っていないとあやまると、駅員は、初めから無賃乗車しようとしたと決めてかかり、又造に悪口雑言を浴びせる。
又造が罰金も含めてお金を払うと言えば「金持ちだということを見せつけようとする」と言い、急いでいると言えば、「ただの里帰りでなんでそんなに急ぐ」と、徹底的に反撃される。
駅務室に連れ込まれ、名を名乗れば「いやらしい雑誌におかしな小説を書いている」とあざけられ、七年ぶりで里帰り、と言えば「母親をほったらかして七年も帰ってこなかった」と説教。
又造の椅子を蹴り倒して、刑事ドラマさながらの「取り調べ」をやめようとしない。
そこへもう一人の年配の駅員(花王おさむ)が紙袋を抱えてやってくる。「いい物拾った。子猫が4匹入ってる」と、紙袋からミーミー、子猫の鳴き声がする。
年配の駅員は、駅務室の奥で煮立った鍋の中に子猫をドボドボ落としてしまう。
又造が驚いて、金を渡して去ろうとすると、年配の駅員は
「3枚か、じゃ当駅自慢の猫スープ、3杯食わしてやるよ」。
又造が食べたくない、と逃げ出そうとしても、駅員二人は「食べたくないならなぜこの金を出したんだ」「俺たちを買収するつもりか!」「それを小説に書くつもりなんだ!」と容赦なし。実家の母と弟が駆け付けるが、二人とも駅員に味方する。
猫のスープが出来上がった。
又造はみんなに押さえつけられ、鍋一杯のスープを口の中に流し込まれてしまう・・・。
実はこの映画、猫の姿は出てこない。
紙袋の中にも、鍋に子猫を落とすところにも、フェイクのぬいぐるみすら出てきていない。
もっぱら音声のみだ。
ぶっ飛んでいる駅員の態度と、その後の「子猫のスープ」が笑える。
大体、猫をスープにするという発想は普通の日本人には絶対にあり得ないだろう。
いや、地球人で猫を食うとか、スープにして飲むという人種はいないだろう。
やっぱり、筒井ワールドは怖い!
第五話の「五郎八航空」も恐ろしい。
出演:石黒賢、嶋田久作、レオナルド熊、桜金造、山谷初男、不破万作、阪田マサノブ、後藤草太、後藤咲太、伊藤佳子、すまけい、唐沢寿明、渡辺えり子
突然の豪雨の中、やって来た飛行機に乗るという。
まず普通はそんな時飛行機が飛ぶはずがないし、しかも操縦士が事故で、代理の妻が操縦するという。
素人の女性が飛行機を操縦するとは。
あり得ない展開だ。
そして、その飛行機は無事に東京に着いたが、途中で飛行機から降りた男は土砂崩れで死んだという。
もうどっちにしてもあり得ない。
筒井ワールドの恐ろしさは、やはり半端ない。
恐れ入りました!
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