イタリア映画 「黒い瞳」 ロシア人の人妻に恋したイタリア男の悲喜劇! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「黒い瞳」

(原題:Oci Ciornie)

 

黒い瞳 [DVD]

 

「黒い瞳」 予告編

 

1987年9月9日公開。

ロシア人の人妻に恋したイタリア男の悲喜劇を描く。

 

受賞歴:

カンヌ国際映画祭主演男優賞(マルチェロ・マストロヤンニ)。

ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞主演女優賞(エレナ・サフォノヴァ)。

 

脚本:アレクサンドル・アダバシャン、 スーゾ・チェッキ・ダミーコ 

監督:ニキータ・ミハルコフ 

 

キャスト:

マルチェロ・マストロヤンニ:ロマーノ
シルヴァーナ・マンガーノ:エリザ
エレナ・サフォノヴァ:アンナ
フセヴォロド・ラリオーノフ:パヴェル

 

OCI ciornie Dark Eyes anno: 1987 Italia / Unione Sovietica Direttore:  Nikita Mikhalkov Elena Safonova, Marcello Mastroianni Foto stock - Alamy

 

あらすじ:

アテネからイタリアへ向かう船の中。初老の紳士パヴェル(フセヴォロド・ラリオーノフ)は、まだ準備中のレストランでイタリア男と知り合い意気投合する。

その男ロマーノ(マルチェロ・マストロヤンニ)は新婚旅行中だというパヴェルに自分の恋の話を始めた。

大学で建築学を学んでいたロマーノは、ローマ有数の大銀行家の一人娘エリザ(シルヴァーナ・マンガーノ)と結婚、25年の歳月を迎えた頃、彼女と大喧嘩し、家を出て湯治場へ行った。

そこで小犬を連れたロシア女姓アンナ(エレナ・サフォノヴァ)と知り合い、2人の仲は急速に進展した。

彼女は結婚していたが、夫を愛したことはないとロマーノに告白した。

だが、愛の一夜を過ごした翌日、アンナはロマーノに一通の手紙を残してロシアに帰ってしまった。

ロシア語で書かれたその手紙が愛の告白であったことをやっと解読したロマーノは、彼女を追ってロシアに向かった。

やっとの思いでアンナと再会し2人の生活を約束したロマーノは、身辺整理のためにローマに戻った。

だが、家に帰ってみると、エリザの家は破産し、「あなたしかいなくなった」と泣きながらロマーノを頼るエリザの姿を見て、ロマーノは、事実を告白できなくなってしまう。

彼は元のさやに戻ったのだ。

アンナとの約束は破って……。

ロマーノのその話を聞いてパヴェルは驚き、彼に対して薄情だと批難した。

彼は、今は落ちぶれてこの船でウェイターをしているのだった。

甲板にはパヴェルの妻の姿があった。

その顔は、光り輝くような笑みをうかべたアンナであった。

 

Oci ciornie (1987)

 

コメント:

 

本作は、ニキータ・ミハルコフ監督による1987年のイタリアとソ連のロマンティック・コメディ・ドラマ映画である。

 

第一次世界大戦前のイタリアとロシアを舞台に、既婚のイタリア人男性がロシアの既婚女性と恋に落ちる物語を描いている。

マルチェロ・マストロヤンニとエレーナ・サフォノワが主演し、批評家から好評を博した。

この映画のタイトルは、1843年にエヴヘン・フレビンカによって書かれた同名のロシアの人気曲を指している。 

 

主な撮影はトスカーナ州のモンテカティーニ テルメとヴォルガの町コストロマで行われた。

一部のシーンは、レニングラードのウラジーミル宮殿、ペトロパヴロフスク要塞で撮影された。

 

ニキータ・ミハルコフ監督とマルチェロ・マストロヤンニとの相性は抜群で、賑やかでロマンティック、かつ苦みのあるコメディを作り上げることに成功している。

マルチェロが演じる主人公・ロマーノは、あまりにも自分勝手で、嘘つきで女たらしである。

だが、これがイタリア男の典型なのだ。


ロマーノはローマのブルジョアの娘エリザと結婚して25年、ぶらぶら遊んで暮している。

ある時、湯治場にやってきた子犬を連れた貴婦人アンナに心を奪われ、2人は恋に落ちる。

深入りするのを恐れて逃げ帰った貞淑なアンナを、ロマーノはロシアまで追いかけていく。

再会した2人は、お互いに妻や夫と離婚して2人で暮らそうと約束するが、ロマーノがいったんイタリアに帰ってみると妻の家は破産していた。

そんな妻に離婚のことを言い出せず、結局ロマーノはアンナとの約束を果たせないままだった。

こんなプレイボーイの悲哀を演じたらマルチェロの右に出る者はいないだろう。

映画は、ロマーノの身の上話を、アテネからイタリア行きの客船で出会った紳士に話して聞かせるという形で展開する。一見ただの聞き役のように見えるこの紳士が、実は重要な人物であることは映画の最後にわかる。

それによって、心の赴くまま生きてきた自分の人生がいかに虚しいものであったのか、ロマーノは思い知らされることになるのだ。

あらすじだけを見ると、まるでシリアス・ドラマのようだが、この作品はコメディ・タッチで描かれている。むしろ、おふざけが過ぎると言ってもいいくらいである。

好きなシーンは:
1つ目は、ロマーノとアンナが出会う湯治場のシーン。

「81/2」によく似た雰囲気でとても楽しい。

巨漢の女性歌手がよく登場するのだが、インパクトがあり、やはりフェリーニの映画をほうふつとさせる。

「81/2」にオマージュを捧げているのかなと思う。

もう1つは、ロマーノがアンナを探してロシアの最果ての村に到着したシーン。

ポツンと畑に立つおばあさんに「あのぉ」とロマーノが声をかけたとき、背後でブラスバンドの大音量が鳴り響いた。

ロマーノはこの村に「初めて足を踏み入れた外国人」として村をあげての大歓迎を受けるのだ。

その歓迎会のすごいこと、ただでさえ派手な演出のニキータ・ミハルコフ監督が、総力を結集してさらなる過剰な演出に挑んだかのような、これでもか、これでもかと畳みかけてくるお祭り騒ぎ。

ここまでくるともう快感だ!

 

イタリア人監督が主役をイタリア随一の人気男優を使って。イタリア人男性の悲哀を交えた傑作コメディである。

 

イタリア映画特集210作も、これで184作目となった。

あと、26作。

 

この映画は、TSUTAYAでレンタル可能: