イタリア映画 「肉体の悪魔(1986)」 レイモン・ラディゲの名作を映画化! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「肉体の悪魔(1986)」

(原題:Diavolo in Corpo)

 

Devil in the Flesh (1986) - IMDb

 

「肉体の悪魔(1986)」全編

 

1986年4月22日公開。

'68年以後のポスト・テロリズムの時代を背景に、真の愛を知る女の姿を描く。

 

原作:レイモン・ラディゲ

脚本:マルコ・ベロッキオ、エンニオ・デ・コンチーニ 

監督:マルコ・ベロッキオ

 

キャスト:

マルーシュカ・デトマース:ジュリア 

フェデリコ・ピツァリス:アンドレア 

アニタ・ラウレンツィ:プルチーニ夫人 

アルベルト・ディ・スタシオ:教授ライモンディ 

リッカルド・デ・トレブルーナ:ジャコモ・プルチーニ 

カトリーヌ・ディアマント:ライモンディ夫人 

アンナ・オルソ:ドッツァ夫人 

リディア・ブロッコリーノ:テロリスト 

ステファノ・アバティ:テロリスト 

クラウディオ・ボトッソ:ドン・ピサカン 

アレッサンドロ・パルテキサーノ:教師

 

Devil in the Flesh (1986) - IMDb

 

あらすじ:

ローマの高校。

中庭に面した教室では家族の“狂気”に関するパスコリの詩について授業が行なわれていた。

すると突然、若い女の人の叫び声が聞こえクラス中が窓際に集まる。

向かいの屋根の上でナイトウェア姿の黒人の女性が今にも飛び降り自殺をしようとして何か叫んでいた。

その騒ぎで目覚めたジュリア(マルーシュカ・デートメルス)は、その黒人女性と眼を交わし、無言のうちに何か通じるものを感じ合った。

その情景を目にした学生のアンドレア(フェデリコ・ピッツァリス)は、ジュリアが忘れられなくなった。

翌日、アパートの外に出てジュリアを追ってアンドレアが教室を抜け出した。

テロリストに父を殺されたジュリアは、父の墓碑に花を供えた。

彼女は、その足でテロリストたちが審議を受けている法廷に向かった。

実は、彼女の婚約者のプルチーニ(リカルド・デ・トレブルーナ)は、テロリストで、長く投獄されているのだった。

檻の中に入れられたテロリストのカップルが公衆の前で抱き合い、それを見て興奮したジュリアは、となりに居合わせたアンドレアにしがみついた。

ジュリアの不思議な魅力にひかれて彼女のアパートを訪ねるアンドレア。

そこではプルチーニの母親(アニタ・ラウレンツィ)が将来の息子の嫁をまるで監視でもするかのように見はっていた。アンドレアを隠すジュリア。

彼女はプルチーニ夫人を見送ると、家に戻り、ジュリアと抱き合った。

アンドレアの父親は精神分析医だった。

ジュリアは彼の患者だ。

ヒステリックな彼女とは違って、アンドレアは若いのに落ちついていた。

やがて、二人は本当に愛し合うようになり、プルチーニ夫人がそのことに気づきはじめた。

夫人はアンドレアの父親にそのことを告げ、とがめられたアンドレアは、家を飛び出してジュリアのアパートに行く。

やがてプルチーニの釈放の日がやって来た。

ジュリアはプルチーニのもとを去った。

その日は、アンドレアの卒業試験の日でもあった。

口頭試験を受けているアンドレアの後で微笑むジュリア……。

 

Devil in the Flesh (1986) | MUBI

 

コメント:

 

原作は、フランスの小説家レイモン・ラディゲのデビュー作にして代表作でもある、同名の小説。

これまで何度も映画化されているが、その中で、イタリア映画として存在感を放っている映画である。

 

'68年以後のポスト・テロリズムの時代を背景に若い学生によって真の愛を知る女の姿を描く。

レイモン・ラディゲの同名の原作を大胆に改変した監督マルコ・ベロッキオの手腕が光るヒット作。

 

屋根の上の女性の場面から微かな狂気が全体を静かに支配していた。

審理中にセックスを始めるとか、父の妄想に突然全裸のジュリアが現れたりとか、アンドレアとジュリアの間は純愛以上の狂気がそこはかとなくついて回る。

優しい顔のジュリアと、何かに取りつかれたようなジュリアの表情の差も激しい。

テーマが、狂気の入ったラブストーリーであれば、映画の中の行動は、狂気ゆえの必然となり、不貞とか背徳とかいった情緒は逆に無くなる。

奔放過ぎて行動が極端なジュリア。

一方で愛してしまったら、とことん男を独占しようとするジュリアの様子など。

映像がどんどん先鋭化していって、観る者を夢中にさせる。

 

Un film di culto stasera in tv: DIAVOLO IN CORPO di Marco Bellocchio (ven.  8 maggio 2020) | Nuovo Cinema Locatelli

 

最後の涙は、狂気から醒め、普通に戻る瞬間か。

だとしたら、2人の関係に不透明感を残しながらのハッピーエンドというわけかも。

女性の怖さが前面に立ち、情緒的なところが今一つで、途中の話の展開が緩いので、ストーリー的なインパクトは弱い。

映画としての雰囲気は、前半導入部など、ちょっとアバンギャルドな雰囲気もあり、なかなか良い。

 

とにかく、マルーシュカ・デートメルスというすばらしい美人女優を堪能できる映画だ。

この人は、オランダの女優。

1962年12月16日、オランダの小さな村スコーネベークに生まれ、10代でパリに移る。

フランス国立高等演劇学校に入学しメイドをしながら女優を目指す。

1983年にジャン=リュック・ゴダール監督の『カルメンという名の女』の主演に抜擢され、この作品がヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞。

その後イタリアの巨匠・ベロッキオ監督の本作にも出演し、存在感を示した。

 

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