「崖」
(原題:Il bidone)
1955年9月9日公開。
二流のペテン師たちの人生を描いた傑作。
脚本:フェデリコ・フェリーニ、エンニオ・フライアーノ、トゥリオ・ピネッリ
監督:フェデリコ・フェリーニ
キャスト:
アウグスト:ブローデリック・クロウフォード
ピカソ:リチャード・ベイスハート
ロベルト:フランコ・ファブリッツィ
イリス:ジュリエッタ・マシーナ
あらすじ:
アウグスト(ブローデリック・クロウフォード)、ピカソ(リチャード・ベイスハート)、ロベルト(フランコ・ファブリッツィ)はペテン師の三人組。
無智で信仰心の強い百姓達をあざむき、僧侶にばけて金銭をまきあげるのをこととしていた。
アウグストが司祭、ピカソが副司祭、ロベルトが運転手となって、あらかじめ埋めた偽の財宝を掘り出しこれと引替えに百姓から多額な喜捨を受けるという手口である。
次に彼等はバラック小屋の貧民を役人であるとだまし、新しいアパートの申込金として少なからぬ金を手に入れた。
だがピカソは妻イリス(ジュリエッタ・マシーナ)に対して良き夫であり、彼女は夫がペテン師だとは知らない。
たまたま昔の仲間で今は成功した男の新年パーティに呼ばれ、妻をともなって行ったところ、ロベルトが客の持物を奪おうとしたところから、イリスは夫の生活に疑いを持ち始め、ピカソも真面目な生き方を考えるようになった。
一方アウグストは長い間別れていた娘に会い、ふと父性愛にめざめて映画にさそったところ、かつて彼にだまされた男に発見されて、六カ月の刑に処せられた。
六カ月後、監獄を出たアウグストは、ピカソもロベルトも去っていることを知り、他の仲間と再び僧侶に化ける仕事をはじめた。
一軒の百姓家を訪ねるとそこに自分の娘と同じ年頃の半身不随の娘がおり、彼を本当の司祭と信じて祝福を願った。
ペテン師の胸にもふと後悔の念が浮んだが、その帰路、彼はもうけた金を一人占めしようとし、仲間から崖の下につき落された。ようやく這い上った彼は、空しく助けを呼びながら息絶えたのであった。
コメント:
フェデリコ・フェリーニ、エンニオ・フライアーノ、トゥリオ・ピネリの三人の脚本によりフェリーニが監督した傑作。
原題の「Il bidone」は、「ペテン」を意味している。
老ペテン師を通じて物欲と自我に凝りかたまった人間の内部を衝き、背徳的人間のたどる悲劇を描いている。
せっかくペテン師の生き甲斐とその後のみじめな不幸を描いているのだから、原題の「Il bidone」に沿って日本語タイトルも「悲しきペテン師」とかにしたらよかったのでは。
「崖」は全くつまらないネーミングだ。
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