日本の文芸映画 石坂洋次郎 「何処へ(1964)」 高橋英樹主演の熱血教師作品! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「何処へ(1964)」

 

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1964年6月18日公開。

石坂洋次郎の熱血教師もの。

 

原作:石坂洋次郎「何処へ」

脚本:野上龍雄

監督:西河克己

 

キャスト:

伊能琢磨:高橋英樹
玉田艶子:十朱幸代
玉田金助:菅野直行
新太郎(芸者):松原智恵子
才太郎(芸者):関千恵子
清水校長:浜村純
田島教頭:金子信雄
石黒事務官:土方弘
野口先生:井上昭文
坂本先生:木島一郎
田口先生:桂小かん
矢吹先生:相原巨典
脇本先生:井東柳晴
須貝先生:相馬幸子
久保のり子:西原泰江
井上伊保子:石井トミコ
井上つね:田中筆子
井上吉蔵:山田禅二
木山東一郎(校医):十朱久雄
木山茂代:武智豊子
木山安子:桜京美
花山大造:伊藤雄之助
高山すえ:清川玉枝

 

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あらすじ:

東北の片田舎にあるA町の中学校へ、英語教師・伊能琢磨(高橋英樹)は、教育に対する大望を抱いて赴任して来た。

新任早々、彼のまわりには、彼を口説こうと町の芸者・才太郎(関千恵子)を始めとして新太郎(松原智恵子)、それに下宿の娘・伊保子(石井トミコ)も加わってお色気攻勢が続いていた。

又、奥羽中学でも数学の矢吹(相原巨典)、国語の坂本(木島一郎)、社会科の田口(桂小かん)らが伊能の噂に時を過していた。

担任の二年B組の教室では、いたずらざかりの金助(菅野直行)らのいたずら坊主たちが、手ぐすねひいて待っていた。

ある日、金助のことで伊能は体育教師の野口(井上昭文)と衝突した。

そして生徒に暴力を振るうべきか否かで職員室は大論争となった。

結局、校長の折中案でケリがついたものの、事務官の石黒(土方弘)のずるそうな目つきは、伊能の印象に残った。

そして数日にして伊能が知ったことは、子供達の粗野でどこか妙に大人びた態度が町全体の雰囲気が原因していることだった。

野口派と伊能派はますます対立した。

だが、実は校長の椅子を狙う田島教頭が石黒を使って裏で煽っていたのだった。

折も折、PTA参観の時、野口先生が合宿でフリチンで風呂に行ったという事件を金助が暴露して、野口は一躍フリチン先生のアダ名を頂載した。

一方、伊能は金助の姉・艶子(十朱幸代)に想いを寄せていた。

そんな伊能に新太郎が好意を持っていた。

ある夜、鳥海楼の一室に職員間の派閥がすっかりもちこまれ、伊能の出現を待ちわびていたが、丁度宴会に呼ばれた新太郎は、石黒の背広からメモ用紙を抜き取った。

翌日、金助が野口先生に捕まったという知らせで、駈けつけた伊能は、木の上に逃げた金助を下で辛抱強く待っている野口の姿を見て、伊能の心から、野口に対する誤解が薄らいでいった。

新太郎から受け取ったメモをもとに、伊能と野口は、教頭の田島を糾弾した。

平和を取り戻した学校で、伊能と野口ははりきって教鞭を取るのだった。

 

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コメント:

 

原作は、学園ものの巨匠(?)である石坂洋次郎の長編小説。

 

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東京から田舎の中学校に赴任した教師が町に新しい風を吹き込むという「坊っちゃん」の流れをくんでいるような物語。

日和見な校長に野心家の教頭といった登場人物はこのジャンルによくあるパターン。

体罰の是非等の議論が交わされるところなどは60年前という年月を感じる。

 

青森県出身で、秋田県で教師を勤めていた石坂洋次郎の小説ということで、これは映画化するにはうってつけと日活が取らぬ狸の皮算用をした結果、大コケになった作品だ。

 

石坂洋次郎の学園ものは、女子大生の性のめざめというのが主題になっており、熱血男性教師の活躍などというジャンルで売れるものが書けるわけがない。

そこが見抜けなかった日活のプロデューサーのおバカぶりがこういう結果を生んだのだ。

 

一見すると正義派の新任教師のカッコイイ姿が映えるすばらしい作品のように見えるが、夏目漱石の「坊っちゃん」とストーリーが酷似しているだけで、全然新鮮味がない。

しかも、漱石のような潔い江戸っ子気質のさっぱりした展開にはなっていないので、もう映画化など絶対にすべきではなかったのだ。

出演者も、高橋英樹、十朱幸代、松原智恵子の3人以外はほとんど無名の役者ばかりでつまらない。

 

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高橋英樹は、前年の1963年に「伊豆の踊子」で吉永小百合の相手役として出演して知名度をアップさせていたが、ほかは「男の紋章」シリーズなどのやくざ映画の主役をつとめるものの、パッとした作品には出会えずにいた。

そんな中で、本作での教師役はやくざ者の暗い印象を完全に払拭する明るいキャラクターで、これまでの英樹の印象を大きく変えることになった。

そこだけは高橋英樹の役者人生の1ページにしっかり記録されるべきであろう。

 

どういうわけか、この作品はその後2回もリメイクされたが、ヒット作とはならなかった。

やはり、石坂洋次郎には熱血教師ものは無理だったということだ。

 

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