イギリス映画ベスト100 第98作 「素晴らしき戦争」第一次世界大戦を描いたミュージカル! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「素晴らしき戦争」

(原題:OH! WHAT A LOVELY WAR)

 

WAR ON FILM - Oh! What a Lovely War | Military History Matters

 

「素晴らしき戦争」 プレビュー

 

1970年10月24日公開。 

替え歌でつづられた反戦ミュージカル風映画。

 

脚本:アン・スキナー 

監督:リチャード・アッテンボロー 

 

キャスト:

フレンチ元帥:ローレンス・オリヴィエ

グレイ外相:ラルフ・リチャードソン

ベルトルート:ジョン・ギールグッド

ヘイグ将軍:ジョン・ミルズ

カイゼル:ケネス・モア

ジャック:ポール・シェリー

フロー:ウェンデル・アルナット

 

Original Cast Recording - Oh What A Lovely War (A Musical Entertainment) |  Releases | Discogs

 

あらすじ:

1914年初頭の欧州。

ドイツと同盟したオーストリアと、フランス、ロシアの後楯をもつ小国セルビアとの間は一触即発の状態にあった。

そして、オーストリア皇太子暗殺を契機として、同国外相のベルトルート(ジョン・ギールグッド)はフランツ・ヨセフ皇帝(ジャック・ホーキンス)の署名した宣戦布告書を、セルビアにつきつけ、ついでドイツのカイゼル(ケネス・モア)はベルギーに侵入し、イタリアと同盟を結んだ。

そこで、グレイ外相(ラルフ・リチャードソン)の外交手腕で中立を守っていたイギリスも、連合国側として参戦をよぎなくされた。

ここに1919年4年7月、第一次大戦の幕はおとされた。

志願兵制度だったイギリスは、ヘイグ将軍(ジョン・ミルズ)の指揮のもと徴兵運動が展開された。

その熱狂の渦にまかれ、スミス家の若者ハリー(コリン・ファレル)が募兵に応じ、ベルギー戦線に出兵していった。

しかし、現実の戦況は、国民の祭り気分とうらはらに連合国側に不利で、英国派遣軍総司令官フレンチ元帥(ローレンス・オリヴィエ)は、積極的態勢をとろうとしなかった。

こうした中で、スミス家から2人目の兵隊としてジャック(ポール・シェリー)が、妻フロー(ウェンデル・アルナット)と娘を残し,戦場へ消えて行った。

そして、ハリーが負傷して前線から送り返されてきた。

こうした空気は、イギリスの上流社会にも影響し、豪奢ゃな雰囲気はしだいになくなってきたが、この機にひと儲けを企むスティーブン(ダーク・ボガード)のような実業家もいた。

一方スミス家では、戦局のエスカレートにともない、フレディ(マルカム・マックフィー)、ジョージ(モーリス・ローヴス)、バーティ(コリン・レッドグレーヴ)、傷の癒えたハリーらが、続々と戦場へかりたてられていった。

しかし、戦線の血みどろの戦いをよそに、英国軍上層部では、醜い勢力争いが展開され、最高司令官となったヘイグ将軍は、自らの栄光に目がくらみ、狂ったように突撃命令を下した。

このころ、ジョージ軍曹の分隊は、味方の砲弾をうけ、赤いケシの花とともに戦場に散ってしまっていた。

ようやく反戦の気運が芽生え始めた国内では、バンクハースト夫人(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)らが、街頭演説をしたり、反戦歌が歌われるようになった。

それにもかかわらず、その後も戦場での死傷者はつきることを知らず増大し、スミス家の男たちは、全員戦死してしまった。

一面の緑の中、赤いケシの花をつみながら、夫を、父を、息子を失ったスミス家の女たちが歩いている。

その周囲には無限の広がりをみせ、無名戦士の白い墓がつづき、どこからともなく男たちの歌声が聞こえ始めるのだった。

 

Oh Its A Lovely War! From The Film Oh What A Lovely War! - YouTube

 

 

ネタバレ(全ストーリー):

 

本作『Oh! What a Lovely War』は、当時の人気曲 (その多くは古い人気曲のパロディ) を使用して第一次世界大戦の出来事を要約しコメントし、ブライトンの西桟橋などの寓話的な設定を利用して、最終的な勝利の方法を批判している。

外交上の駆け引きや権力者が関与するイベントは、塹壕から遠く離れたピアヘッドパビリオン内の幻想的な場所で行われる。

 

冒頭のシーンでは、さまざまな外務大臣、将軍、国家元首がヨーロッパの巨大な地図の上を歩き、当時これらの人物が実際に話した言葉を暗唱する。

匿名の写真家がヨーロッパの支配者たちの写真を撮る - フェルディナント大公とその妻ホーエンベルク公爵夫人に2本の赤いケシを手渡した後、フラッシュが光ると同時に写真を撮り、彼らを「暗殺」する。

国家元首の多くは良好な個人的関係を享受しており、戦争には消極的である。

フランツ・ヨーゼフ皇帝は外務大臣に騙された後、涙ながらにセルビアに宣戦布告し、皇帝ニコライ二世と皇帝ヴィルヘルム二世はセルビアの政策を覆すことができないことが示されている。

各国の軍事動員スケジュール。

ドイツ軍のベルギー侵攻に、エドワード・グレイ卿は関与する以外に選択肢はほとんどない。

イタリアは中央同盟国との同盟を破棄(1915年に同盟に加盟)したが、代わりにトルコが同盟に加わった。 

1914 年の戦争の始まりは、楽観主義のパレードとして示されている。

 

映画の主人公は、当時の典型的なイギリス人家族であるスミス一家である。

ヘイグ将軍が切符を売る中、彼らがブライトンの西埠頭に入る場面が描かれている。

映画はその後、若いスミス一家が塹壕での体験をする様子を追っている。

軍楽隊がビーチから行楽客を呼び起こし、集まって追従し、文字通り時流に乗り込む人もいる。

最初のモンスの戦いも同様に明るく描かれているが、描写はより現実的だ。

どちらのシーンも心地よい日差しが降り注いでいる。 

死傷者が増え始めると、劇場の観客は「Are We Downheart? No!」を歌って結集する。

黄色いフリルのドレスを着たコーラスラインが「私たちはあなたを失いたくないが、あなたは行くべきだと思う」と義勇軍を募集する。

その後、ミュージック ホールのスター (マギー スミス) が孤独なスポットライトを浴び、彼女が毎日制服を着てさまざまな男たちと「出歩く」様子を歌うことで、聴衆のまだ半信半疑な若者たちを「キングス シリングを奪う」よう誘惑する。 

「土曜日に、1シリングだけいただければ、あなたたちの中の誰かを男にしてあげたいと思います。」

若者たちはステージに上がると、すぐにステージを離れて軍隊生活に移され、最初は魅力的だったミュージックホールの歌手が、粗野で化粧過剰なハリダンとしてクローズアップで描かれている。 

赤いケシは差し迫った死の象徴として再び現れ、死に送られようとしている兵士に手渡されることがよくある。

これらの風景は、現在軍のトップが収容されているパビリオンと並行して表示される。

スコアボード (オリジナルの劇場作品では主なモチーフ) があり、ライフの損失と「獲得ヤード」が表示される。 

外では、シルヴィア・パンクハースト(ヴァネッサ・レッドグレイブ)が敵対的な群衆に戦争の無益さを語り、新聞で読んだことをすべて信じている彼らを非難する姿が映されている。

彼女は罵声を浴びせられ、演壇から野次を飛ばされる。 

1915 年は暗い対照的なトーンで描かれている。

負傷者のパレードを映した多くのショットには、果てしなく続く悲惨で絶望的な顔が描かれている。

これらの兵士たちの間のブラックユーモアは、現在では初期の熱狂に取って代わられている。 

「There's a Long, Long Trail a-Winding」は、悲惨な状況で豪雨の中を隊列を組んで進む兵士たちの様子を描いた、新たな絶望の雰囲気を表現している。

赤いケシは、これらのシーンで唯一の明るい色を提供している。

イギリス兵がエスタミネットで酒を飲んでいるシーンでは、スーブレット(ピア・コロンボ)が彼らを「チャーリー・チャップリンの月は明るく輝く」の陽気なコーラスで導き、アメリカの歌をリメイクし、歌うことで雰囲気を暗い調子に戻す。 

「Adieu la vie」の柔らかくて陰気なバージョン。

年末、パビリオンでの演習が増える中、ダグラス・ヘイグ将軍(後に陸軍元帥)が陸軍元帥サー・ジョン・フレンチに代わってイギリス軍の最高司令官に就任する。

その後、ヘイグはイギリス兵を視察しているのを見たオーストラリア軍から嘲笑される。

彼らは「ジョン・ブラウンズ・ボディ」の曲に合わせて「彼らはリープフロッグを演奏していただけだ」と歌います。

 廃墟となった修道院で諸宗教の礼拝が行われている。

司祭は集まった兵士たちに、「各宗教がユダヤ教徒なら豚肉を、カトリック教徒なら金曜日に肉を食べ、すべての宗教の戦争に奉仕するなら安息日まで働くことを兵士に許可するという形で戦争を支持している」と告げる。

彼はまた、ダライ・ラマが戦争努力を祝福したとも述べた。 

1916年が過ぎ、映画のトーンは再び暗くなる。

 「The Bells of Hell Go Ting-a-ling-a-ling」、「If the Sergeant Steals Your Rum, Never Mind」、「Hanging on the Old Barbed Wire」などの曲には、物悲しさ、ストイシズム、諦めといった対照的なトーンが含まれている。 

負傷者は野戦基地に整列して並べられており、戦争に参加した健康な若者の列とはまったく対照的である。

カメラはしばしばハリー・スミスの静かに苦しむ顔に留まる。 

アメリカ軍が到着するが、パビリオンの「切り離された現実」の中でしか示されておらず、「そして我々は戻ってこない – 我々は戻ってくるだろう」という最後の行を変更して、「Over There」を歌うことでイギリス軍将軍の審議を中断する。

「あそこに埋もれてるんだよ!」

毅然とした表情のアメリカ人船長は、驚くヘイグから地図を奪い取る。 

ジャックは、3 年間の戦いを経て、文字通り出発点であるモンスに戻ってきたことに嫌悪感を抱く。

休戦協定が鳴り響く中、最後に死ぬのはジャックだ。

一見すると血のように見える赤いしぶきがあるが、それは前景にある焦点が合っていない別のケシであることがわかる。

ジャックの魂は戦場をさまよい、やがてヨーロッパの長老たちが来るべき平和の草案を作成している部屋にたどり着くが、彼らはジャックの存在に気づいていない。

ジャックはついに自分が静かな丘の中腹にいることに気づき、そこで兄弟たちと合流して草の上に横になり、そこで兄弟たちの姿は十字架に姿を変える。

映画は長くゆっくりとしたパンアウトで終わり、死者が「We'll Never Tell Them」(ジェローム・カーンの曲「They Didn't」のパロディ)を歌いながら、無数の兵士たちの墓を空撮して終わる。

 

エンディングシーンがこちら:

 

 

 

 

コメント:

 

替え歌でつづられた反戦ミュージカル。

俳優として知られたリチャード・アッテンボローの監督第1作。

 

反戦のテーマを歌っている部分の歌詞は以下の通り:

Up to your waist in water,
Up to your eyes in slush –
Using the kind of language,
That makes the sergeant blush;
Who wouldn't join the army?
That's what we all inquire,
Don't we pity the poor civilians sitting beside the fire.

Chorus:
Oh! Oh! Oh! it's a lovely war,
Who wouldn't be a soldier eh?
Oh! It's a shame to take the pay.
As soon as reveille is gone
We feel just as heavy as lead,
But we never get up till the sergeant brings
Our breakfast up to bed
Oh! Oh! Oh! it's a lovely war,
What do we want with eggs and ham
When we've got plum and apple jam?
Form fours! Right turn!
How shall we spend the money we earn?
Oh! Oh! Oh! it's a lovely war.

 

 

 

 

点描的描き方、当時の軍歌、流行歌をどんどんぶち込み、同じ歌が銃後と前線でどう歌われるかとか、絶対安全なとこにいる将軍、政治家、首脳が何を考えているのかを歌で表わす、その手法がまず卓越している。
戦争というものに距離をおき、皮肉、時にはユーモアさえも交えるこのスタイルは凡百戦争映画、反戦映画の数百キロ先を行っている。
塹壕の中で背嚢を掛けるフックになっているのは、爆死して掘り出せない兵士の脚である。死、死体は日常で感情、感傷なんかもう残っていない。

 

この映画は、日本人には理解が少し難しいかも。

とにかく、タイトルが「おう、何という素晴らしい戦争だ!」というあり得ない表現になっているのだから、生真面目な日本人には信じられない作品なのだ。

 

まず、日本は第一次大戦を直接経験していないし、実際にどんな国の誰がどんな言動を繰り広げたのかほとんど記憶していないからだ。

 

だが、戦争が家族を破壊したという現実はこの映画の中ではっきり観る者に迫ってくる。

イギリスの反戦派からは大きな賛同が得られたようだ。

 

この映画は、TSUTAYAでレンタル可能: