日本の文芸映画 泉鏡花 「婦系図(1942)」 長谷川一夫・山田五十鈴の主演! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「婦系図(1942)」

 

婦系図 (おんなけいず) 1942年版 | ビデオ・ ネットレンタルのKプラス

 

1942年6月11日公開。

 

原作:泉鏡花「婦系図」 
脚本:小国英雄 
監督:マキノ正博 
出演:長谷川一夫、山田五十鈴、古川緑波、高峰秀子、山根寿子、三益愛子、山本礼三郎
 
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あらすじ:
お増(沢村貞子)は髪結い床を切り盛りしている。
そこに芸者衆が髪を結ってもらいにやってくる。
芸者の小芳(三益愛子)、まだ半玉であるお蔦(山田五十鈴)などが、たわいのないおしゃべりをする。
その横からは、お増の亭主である魚屋のめの惣(山本礼二郎)が、おしゃべりを混ぜっ返したり、やり込められたり。
そのお蔦は、チンピラのリキ(長谷川一夫)と幼なじみなのだ。
水も滴るいい男振りのリキに、お蔦はぞっこんである。
あるときリキは、お寺の境内で酒井俊蔵(古川緑波)の懐財布を狙った。
しかし、リキは酒井にその腕をたちまちにひねり上げられてしまう。
酒井の家では、据え膳付きの晩飯が振舞われる。
恐縮するリキ。
リキの素性を何も知らない酒井の妻は、夫の連れてきた知人だろうということで、とても懇ろな扱いである。
自分の正体を明かせば呆れ果てるにちがいないと、正直に告白するリキ。
しかし、それを聞いても酒井の妻は動じなかった。
酒井からは、晩飯だけではなく、明日の朝飯も食べてゆけと言われる。
その意味するところは、性根を入れ替えてうちの書生として勉学に励めというものだった。
その数年後、酒井の温情で学校を出させてもらったリキは立派に成長し、名前も変えて早瀬主税と名乗っている。
酒井には一人娘の妙子(高峰秀子)がおり、どうやら早瀬に気のある様子。
早瀬も、まんざらではなさそう。
そんな早瀬は、酒井の家から独立。
あるとき早瀬は、偶然お茶屋でお蔦と再会する。
お蔦は芸者として一本立ちしていて、すっかりいい女っぷりだ。
むかしもいまも早瀬のことを惚れ抜いているお蔦にとって、その再会はうれしいかぎり。
早瀬と夫婦になりたい一念を貫いたお蔦は芸者を辞め、早瀬と所帯を持つ。
ただし、恩人である酒井に結婚のことを言い出せない早瀬の手前、お蔦は自分の存在を隠すしかない。
だが、隠れ妻であるという立場にも不満を言わず、けなげに懸命に夫に尽くすお蔦。
しかし、お蔦の存在は酒井に知られる事となり、早瀬の将来を思う酒井は早瀬に夫婦別れを厳命する。
苦しみ抜いた早瀬だったが、恩人の言いつけに背くことはできない。
月夜のある晩、お蔦を湯島天神の境内に連れ出す。
天神様の名物であり梅の枝の下、ついに別れを切り出す早瀬・・・・・・。
 


早瀬の苦しい胸の内を察したお蔦は、別れに同意する。
 
その帰り道、蕎麦屋に寄って、しみじみと語る二人。
 

 

地方に赴任することになった早瀬。

その見送りが新橋駅で行われている。
そこにも表立っては出ていけないお蔦は、人の肩ごしに見送る。
デッキに立つ早瀬。
動き出す客車。
早瀬の遠ざかる姿を、ホームを走って懸命に追ってゆくお蔦。
 
赴任先で仕事に励む早瀬。
東京のお蔦の身体は、徐々に病いに蝕まれてゆく。
ある日、妙子が髪結床にお蔦を尋ねてやってきた。
自分の髪を結ってくれとお蔦に頼む妙子。
襖の影から妙子の姿を見つめているのは小芳。
なんと、妙子は小芳が生んだのだった。
妙子の髪を結わしてくれということで、お蔦は小芳と代わってやる。
結いつつ、思わず泣きそうになる小芳。
それを懸命にこらえさせるお増とお蔦。
 
あるとき、酔っ払った魚屋のめの惣が、酒井の宴席に気が付く。
お得意様である酒井に向かって、酔った勢いで懸命にお蔦と早瀬のことを訴えるめの惣。
酒井は一向に聞く耳をもたない。
それもかまわず、まくし立てるめの惣。
だがやはり、酒井は耳をかそうとはしなかった。
 
ある晩、小芳とお蔦は蕎麦屋で語り合っている。
いまでも早瀬のことだけを思っている心情を小芳に訴えるお蔦。
衝立を挟んだ隣の席には、なにやら人影が一人。
たまたま居合わせたお客だろうか。
小芳とお蔦が帰ってゆくと、そのお客も立ち上がる。
それはなんと、酒井であった。
 
その後、お蔦の病いが進み、危篤状態に。
酒井は早瀬に電報で知らせるも、居合わせることができない早瀬。
いよいよ臨終が迫ってきても、早瀬は間に合わない。
その早瀬に代わって、「今度はかならず一緒になれ、いまはオレを早瀬だと思え」 というのは酒井であった。
酒井は、蕎麦屋での会話でお蔦の早瀬への真心を得心したのだった。
息を引き取るお蔦。
 
早瀬とお蔦が別れ話をした湯島天神の境内、そこにはあのときと同じ梅の枝があるのだった。
 
婦系図(1942) : 作品情報 - 映画.com

コメント: 
 
原作とは大分翻案されているストーリー。
早瀬主税を長谷川一夫、お蔦を山田五十鈴が演じており、本格的な演劇風作品になっている。
なんといっても、湯島天神の場面は天下一品。
マキノ節の真骨頂である。
 
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(当時のポスター)

酒井の自宅で早瀬を自分の書生とする場面、酒井の大らかさや誠実さ、それを信じきっている妻が一言も口出ししないで受け入れてゆくという、これまた現代では考えられないやりとりで、かつて日本にあった美風が伺えることができる名作だ。

お蔦を演じ切った山田五十鈴の姿は、とにかく可憐でいじらしい。
赴任する早瀬を追いかけて、新橋駅のホームを駆けるシーンがとくにすばらしい。
 
髪結い床の小さな部屋にそろった山田五十鈴、沢村貞子、高峰秀子、三益愛子の面々の姿はまさにお芝居の世界だ。
 
 
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