日本の文芸映画 太宰治「女性操縦法”グッドバイより”(1949)」 高峰秀子の熱演が笑える! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「女性操縦法・グッドバイ(1949)」

 

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「女性操縦法・グッドバイ(1949)」 映像+解説

 

1949年6月28日公開。

太宰治の未完の遺作を映画化。

何度も映画化された作品の第1作。

 

原作:太宰治「グッドバイ」

脚本:小国英雄 

監督:島耕二 

 

キャスト:

若原雅夫: 多田敬太

高峰秀子:船越絹代 

森雅之:田島周二

江川宇礼雄:関根 

高田稔: 船越恭平

霧立のぼる: 青木蘭子

三村秀子: 水原ケイ子

藤間紫: 鈴龍

一の宮あつ子 

清川虹子:北村たま子

 

女性操縦法 “グッドバイ"より : 拝啓活動写真様

 

あらすじ:

雑誌「オベリスク」の社長・関根(江川宇礼雄)は金主・船越恭平(高田稔)から「お前のとこの田島という男にうちの娘がぞっこんなんだ」と聞かされ、おどろいた。

何としても田島(森雅之)と船越の令嬢を結びつけなければならない。

ところで田島は編集長で希代の美男、そしてドンファンである。

関根から頼みこまれて田島は大弱り、田島には今四人の女がいるのだ。

どれも美人でかんたんにはグッドバイということにならぬ。

よほどスバラシイ美人でもつれて「実はこれがワイフです」とでもやらなければならない。

そんなスゴイ美人は仲々いない田島は思案にくれて街を歩いていると「田島さんでねえか」と背中をたたかれふりかえると目のさめるようなすばらしい服装をした美人。

田島が目をみはっていると「おらを忘れたかニイ」と異様なことば。

ハッと気のつく田島。

この女は前々から田島の社へ紙を売りこみにくるカツギヤだった。

「オラだってたまにはいいかっこしたっていいだろ」。

そういう女きぬ子(高峰秀子)の顏はものさえいわなければ大家の令嬢とまがうばかり。

田島はハタと手をうった。

そしてここで二人の契約が出来、きぬ子は物をいわぬことにして田島の仮のワイフとなり、田島の四人の女を田島とともに訪れ、美容院のマダム蘭子(霧立のぼる)、芸者の鈴龍(鈴龍)、カストリヤの女将・たま(清川虹子)とそれぞれグットバイ宣言にのりだす。

だれもみんなきぬ子の美ぼうに圧倒され、声をのんで田島のいう「グッドバイ」に泣きくずれる。

最後に女給のケイ子(三村秀子)を訪れるが、彼女は二人の姿をみただけで姿をくらます。

まず計画は成功。

いよいよ関根と共に船越邸にのりこむが、さて現れた令嬢はきぬ子にそっくり。

田島はぎょう天する。

しかし他人の空似と思ってこの美しい令嬢絹代に求愛する田島を絹代は(--実はきぬ子だった--)軽くおさえて外出してしまう。

あとで絹代の実態を知って田島は、全く放心、最後の女ケイ子のところへたどりつく。

裏切られ、しかもなお田島を愛するケイ子に田島の傷ついた心がいやされるかに思った日、絹代が現われ、こんな男でも「愛によって許す」ケイ子の姿を見て、絹代はかつて信じ愛したがちょっとしたあやまちのために「グッドバイ」をいった青年、敬太(若原雅夫)を許すためにとび出した。

 

女性操縦法 “グッドバイ"より : 拝啓活動写真様

 

コメント:

 

原作は、太宰治の、未完のまま絶筆になった作品である。

青空文庫に載っている作品を読んでみたが、全然面白くない。

映画のあらすじの最初の部分しか出てこない。


おそらくこの未完の小説をヒントにして、その後の面白おかしいストーリーを映画会社・新東宝が思いつき、脚本化したのであろう。

 

それにしても、死ぬ間際の作品がこの程度というのは、情けない限りだ。

興味があったらご覧あれ:

 

 

 

太宰本人の紹介文も残っている:

「唐詩選の五言絶句の中に、人生足別離の一句があり、私の或る先輩はこれを「サヨナラ」ダケガ人生ダ、と訳した。まことに、相逢った時のよろこびは、つかのまに消えるものだけれども、別離の傷心は深く、私たちは常に惜別の情の中に生きているといっても過言ではあるまい。
題して「グッド・バイ」現代の紳士淑女の、別離百態と言っては大袈裟おおげさだけれども、さまざまの別離の様相を写し得たら、さいわい。」

 

かっこつけてこんなことをのたまわっているが、中身はひどいものだ。

死ぬ寸前までろくな人間ではなかったと感じざるを得ない。

 

しかし、映画の方は面白い。

実際にこんなことがあったら楽しいだろう。

太宰治原作であるが、なかなかコミカルな物語をテンポ良く見せてくれる娯楽作品で、暗さが無い。
高峰秀子、森雅之が主演。(あの『浮雲』とは全く異なる雰囲気だ。)

この映画タイトルは『女性操縦法 ”グッドバイ”より』というのが正しい。
(映画の冒頭でも、そのように表記されている。)

雑誌編集長の田島という男(森雅之)が女たらしであり、資産家の娘(この時点では不明)から結婚申込みがあったため、田島が結婚約束をした女性4人と次々と別れていく様が描かれる。
その4人の女性と別れるために、永井きぬ子(高峰秀子)という方言丸出しの「かつぎ屋」に田島の妻を演じてもらって、4人の女に次々と「妻をもらったから“グッドバイ”」と別れていく。
このあたりがテンポ良い。

高峰秀子演じるきぬ子は喋ると方言丸出しなので、可能な限り無口で通しているあたりが面白い。
更に面白いのは、終盤で、資産家の娘は実は「永井きぬ子という田舎娘を演じていた船越絹代(高峰秀子が二役)」と驚かせてくれるあたり、「方言丸出しだが美人という女性」と「優雅な口調で資産家の娘」の二役を演じた高峰秀子が素晴らしい。

 

高峰秀子の隠れた名作である。

この映画が作られた1949年頃の銀座の風景も、見どころではないだろうか。

 

この映画は、レンタルも動画配信も見当たらないが、DVDが販売されている:

https://www.amazon.co.jp/%E5%A5%B3%E6%80%A7%E6%93%8D%E7%B8%A6%E6%B3%95-%E3%82%B0%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%88%E3%82%8A-DVD-%E9%AB%98%E5%B3%B0%E7%A7%80%E5%AD%90/dp/B09CWKQVHG

 

 

その後、何度も「グッドバイ」はリメイクされている。

 

たとえば、2020年公開の、大泉洋と小池栄子が主演の「グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇」: