「哀しみのスパイ」
(原題:LES PATRIOTES)
1994年6月1日公開。
イスラエルの諜報組織のスパイになった男の物語。
監督・脚本:エリック・ロシャン
キャスト:
アリエル:イヴァン・アタル
マリー=クロード:サンドリーヌ・キベルラン
ヨシ:ヨシ・バナイ
ペルマン:リチャード・メイサー
ローレンス:クリスティーヌ・パスカル
ダニエル:イポリット・ジラルド
あらすじ:
アリエル(イヴァン・アタル)は18歳の誕生日を迎えた直後、パリを離れテルアビブに来た。
祖国イスラエルの諜報組織モサドのスパイになるためだ。
4年後、アリエルはヨシ(ヨシ・バナイ)による訓練を終え、準備期間を無事クリアー。
いよいよ初めての任務。
それは核の脅威からイスラエルを守る為に、フランスの原子力科学者から情報を入手するという厄介なものだった。
任務のさなか、アリエルはパートナーとして組んだ高級娼婦マリー=クロード(サンドリーヌ・キベルラン)に一目惚れ。
だが、工作は失敗、マリー=クロードは消息を絶ってしまう。
失意も癒えないうちに、次の仕事として情報提供者であるアメリカ人のペルマン(リチャード・メイサー)と接触を持つが、利用価値がなくなるとモサドは彼を捨てた。
アリエルはモサドでのスパイ生活に虚しさを覚え、久しぶりに姉ローレンス(クリスティーヌ・パスカル)をたずねる。
彼はモサドでの仕事を克明に綴った日記を彼女にひそかに渡そうとするが、姉が交際しているというダニエル(イポリット・ジラルド)が制止した。
彼もモサドの一員だったのだ。
上司のヨシは「物事を悪くとらえすぎてはいかん」とアリエルを諭す。
その直後。アリエルは空港で死んだはずのマリー=クロードに再会する。
二人は空港の一室で愛を交わすのだった。
コメント:
イスラエルの諜報組織モサドに身を投じながら、何かと思い悩む青年の姿を描いたハードボイルドのスパイ映画。
世界の情報機関として最も有名なのはCIAとKGBだが、イスラエルにも“モサド”という組織があって、この作品ではその活動内容が生々しく描かれている。
ただ主軸となるテーマは主人公のアリエルと情婦との関係。
あるミッションで関わった女性の影を追いつつも、任務に没入していく主人公を演じるイヴァン・アタルが素晴らしい。
レオス・カラックスの次の世代として注目されている名監督・エリック・ロシャンの傑作である。
アリエルは、パリ在住の独身の男。
どこにでもいる都市を浮遊する若者だ。
その彼が、祖国イスラエルの諜報組織〝モサド〞のスパイ・エージェントを志願する。
初めての人生の選択だった。
パリでの盗聴作戦、ワシントンでのCIAとの接触、テルアビブでの潜伏…華やかな諜報作戦の表舞台にたちながら、アリエルの心は空虚だった。
そんな時、高級コールガールのマリー=クロードに出会い、一瞬で恋におちた。
身分を偽っている彼には禁じられた恋。
しかし、アリエルは工作に失敗、殺人事件に巻き込まれ、彼女は行方不明に――。
愛するものを失い、はじめて理想と現実のギャップに悩む。
祖国を、そして人間の運命を動かしている見えない力に対し、ささやかな抵抗を試みる。
愛と、人間の尊厳をかけてアリエルは孤独な戦いを続ける。
「モサド」は、実在の組織で、日本語の正式名称は「イスラエル諜報特務庁」
「モサド」という言葉はヘブライ語で組織・施設・機関を意味する「モサッド」(Mossad)からきたもので、イスラエルでも「ハ-モサッド」と呼ぶことが一般的であるという。
ちなみに、英語では「ISIS」(Israel secret intelligence service)と称される。